今回の戦、正成にはある予感があった。

己の最期の戦いになるだろうと。

そこで、連れていた11歳になる息子、正行を桜井から河内に帰すとき家訓ともいえる教えを伝えた。

 

「獅子は子供を産んでから3日も経てば、高い崖の上からその子供を放り投げるんだ。もしその子供に素質や才能があったら死ぬことはないというぞ。

 

ましてお前はもう10歳を超えている、父の言葉が一言でも耳に残っていれば、私の教えを守り立派に生きるように。

今回の合戦は、天下の安定を選ぶか、それとも騒乱を続けるのかを決める大切な合戦になる。

生きてお前の顔をみるのも、今日が最後となるだろう。

 

父が討ち死にしたと聞いたら、天下は必ず尊氏のものになるだろう。とは言っても、自分の命が大切なあまりに長年の忠節を裏切ってまで降伏してはならない。

 

一族や若武者らが1人でも生き残っていたら、金剛山付近に引きこもり、敵が攻めてきたら養由の矢先におく気持ちで戦い、自分の性根を紀元信の忠と比べてみるべきだ。

 

それを守ることが、お前のやるべきことだぞ。わかったか。」

 

11歳の正行は理解しかもしれないけれど、私には無理。