「ロシア語」(ラテン文字転写) 「村山七郎訳」 『ごんざ訳』
A1 「дироватый」(dirovatyi) 「穴の多い」 『あなん うかと』
A2 「мозговатый」(mozgovatyi) 「脳みその多い」 『のりのうかと』
A3 「прыщиватыи」(pryshchivatyi) 「吹出物の多い」 『あざんうかと』
A4 「слиноватыи」(slinovatyi) 「唾液の多い」 『つづのうかと』
A5 「суковатыи」(sukovatyi) 「枝の多い」 『いぇだんうかと』
A6 「узловатыи」(uzlovatyi) 「結び目の多い」 『わさんうかと』
A7「щетиноватыи」(shchetinovatyi)「豚の背の毛の多い」 『けんうかと』
A8 「щелеватыи」(shchelevatyi)「割れ目の多い、裂け目の多い」『わいぇめんうかと』
B1 「виноватый」(vinovatyi) 「咎のある」 『とがんと』
B2「кореноватый」(korenovatyi) 「根の多い」 『きのねんと』
B3 「морщиватый」(morshchivatyi) 「皺よった」 『しわん よったと』
B4「ноздреватыи」(nozdrevatyi) 「多孔性の」 『すのふぉげたと』
B5 「свищеватыи」(svishchevatyi) 「穴・空隙だらけの」『あなん あると』
B6 「сиповатыи」(sipovatyi) 「しゃがれ声の」 『かなしこいぇんと』
B7 「хрящоватыи」(khryashchovatyi)「軟骨の」 『ほるほるのと』
B8 「шишковатыи」(shishkovatyi) 「こぶのある」 『こんごんと』
B9「шороховатыи」(shorokhovatyi) 「ガサガサいう音の」『ふぁだんわるかと』
B10「нешероховатый」(nesherokhovatyi)「ザラザラしていない」『ふぁだんわるねと』
B11 「грудоватый」(grudovatyi) 「大量な」 『ふぁだんわるかと』
B12 「клиноватый」(klinovatyi) 「楔に似た」 『しぇんににたと』
B13 「щековатыи」(shchekovatyi) 「頰の大きい」 『うふたぶら』
C1 「чиреватыи」(chirevatyi) 「腫瘍の多い」 『ねぷとんちゅこと』
根太のということ
cf. ネブト(根太) 癤瘍、または腫瘍。日葡
みだし語の形容詞の語尾の形は全部おなじで、意味もたぶん動物や植物の表面がでこぼこしているというような共通性がある。
Aグループは『~んうかと』(~がおおい)という訳語になっている。
Bグループは『~と』というふつうの形容詞の訳語になっている。
B13の『うふたぶら』だけは(大頰たぶら)という構造だけど、意味は(頰がおおきい)ということだ。
C1だけがちがっていて変だ。
どこが変かというと訳語が名詞になっていて、しかも『ねぷとんちゅこと』「根太のということ」という説明するような口調になっていることだ。日本語を日本語で説明するようなこんな訳語はほかにない。
何かのまちがいじゃないかとおもって、鹿児島県立図書館で原稿のコピーをよ~くみてきたら、原稿は
『нЕптон*укотъ』(nepton*kot')(ねぷとん*こと)
となっていて、*のところは『у』(u)とほかの文字をかさねてかいたようにみえる。
村山七郎説のように(ч)(ch)の筆記体の上の部分がつきでているようにもみえる。
以下は私の妄想だ。
1)ごんざは(ねぷとんうかと)(根太のおおい)とかこうとして(нЕптону)とかいた。
2)そこまでかいたところで、(н)(n)と(у)(u)をつづけてかくと(ну)(nu)(ぬ)になってしまうことに気づいた。
3)(у)(u)の上に(ъ)(')をかいて訂正した。
4)あらためて(у)(u)をかいてかきすすめた。
5)(укатъ)(ukat')(うかと)とかこうとしたのに(укотъ)(ukot')(うこと)とかいてしまった。
村山七郎説(нЕптончукотъ)(neptonchukot')(ねぷとんちゅこと)
いぬかい説(нЕптонъукатъ)(nepton'ukat') (ねぷとんうかと)
真相はわからない。