ごんざの「おふくろ」 | ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

1728年、船が難破して半年後にカムチャツカに漂着した11歳の少年ゴンザは、ペテルブルグで21歳でしぬ前に露日辞書をつくりました。それを20世紀に発見した日本の言語学者が、訳注をつけて日本で出版した不思議な辞書の、ひとつずつの項目をよんだ感想をブログにしました。

「ロシア語」(ラテン文字転写)     「村山七郎訳」 『ごんざ訳』

1「князь」(knyazi)           「公爵」   『でみゅ』(大名)
2「княгиня」(knyaginya)        「侯爵夫人」 『おふくろ』
                      村山七郎注 cf. ヲフクロ 母。 日葡
3「княжня」(knyazhnya)         「侯爵の娘」 『おふくろんむすめじょ』
4「госпожа дому」(gospozha domu) 「家の女主人」『おぶくろ いぇの』

 1の「公爵」にごんざは『でみゅ』(大名)という訳語をつけているから、その妻である2と3の『おふくろ』は(地位のたかい家の夫人)という意味のようだ。
 4は1,2,3ほど地位がたかくなくても、やはり(ちゃんとした)「家の女主人」ということだろう。
 いずれにしても、親子・親族名称とは関係なさそうだ。

 薩摩にいた時、ごんざにとっての『おふくろ』とよぶべき人は、2と3に対応する上級武士の妻、4に対応する廻船問屋や網元のおかみさんだったんだろうか。