吹き出した
不覚にも吹き出しちまったんだ

見上げた夜に
結構厚い雲
辛うじて雲を透かして
君の気配がある
今夜は会えないな なんて
会えないのもたまにはいいさ
とか
無意識が呟いた

何もない夜
義務感に押し出された夜
何日分かの疲弊に埋もれたパワーが
終わりかけた夜中に
ようやく目覚めるなんてと
皮肉も少し
ため息に混ざってしまった

角を曲がった空に
思い掛けなく君を見つけた
僕に一目会いたくて
雲をかき分けた君が笑っていた
不埒を孕んだお腹が
イヤラシくて素敵だねなんて
言う前に吹き出してしまった

何度も頭をもたげる疑念が
また開花する音がしたんだ
僕にとっての特別が
僕を特別だと思っている
荒唐無稽のお気楽な物語さ
その続編を
今夜は夢の中で書けそうな気がしてきた

もう一度 角を曲がって
気になって振り向いたけど
もう君は隠れていた
有り得ない確信は
揺るぎない笑い話になった

僕は空に投げキッスしたんだ
秘密だけど
月は僕にぞっこんなんだぜ
だけど内緒にしておいてね