人生の目的は何なのか
自分の魂を昇華させること。
私にとって映画とは芸術だ、ビジネスである前に。
絵画、小説、詩と同じく、人間の魂を深く追及する。
それが映画だ。
というホドロフスキー監督のマニフェストで始まる、
「ホドロフスキーのデューン」
魂、とは何だろうか?
それは究極のところ人間の生命力、と言い換えていいだろう。
インドならそれは「ブラフマン」。 宇宙の根源的原理。
中国ならそれは「気」。 生きとし生けるものの生命力。
フロイトはそれを、「エロス」 生の本能 と名付けた。
魂に導かれて我々は 行為の中にその都度新しい意識や情動を経験し、そのプロセスの中で新しい自己を統合しつつ 変成し成長を遂げていく。
1929年南米のチリに生まれ、サンチアゴ大学で心理学と哲学を学んでパントマイムにのめりこんでドロップアウト。 パリへ。
1970年「エル・トポ」でブレーク。
ジョン・レノン、ミック・ジャガーなどに絶賛され、続く73年の「ホーリー・マウンテン」もヒットし、75年勇躍ハリウッドに進出してSF映画「デューン」の製作に取り掛かる。
この映画の基本コンセプトや製作のために動員したスタッフや製作のための絵コンテ、配役などのプロジェクトファイルをハリウッドに持ち込むも、配給元が決まらず結局製作中止となった顛末のドキュメンタリーである。
スタッフの中には建築物デザインのH・R・ギーガー、宇宙船デザインのクリス・フォス(エイリアン)、音楽ではピンク・フロイドやミックジャガー、出演者ではサルヴァドール・ダリやその愛人アマンダ・リアにオーソン・ウェルズ、ミックジャガーなど目の眩むような顔ぶれである。(但しSF映画に疎いのでクリス・フォスは不案内である。)
ギーガーはダリの紹介で起用した。
製作中止の理由は、SFの標準的な一時間半をはるかに超えるという長編が観客に受け入れられるかという不安、豪華なメンバーで製作期間の見通しも、コストも不確実であることやカルト的という評判のホドロスキー監督に対する不安感もその理由に挙げられるだろう。
基本コンセプトや絵コンテを盛り込んだプロジェクトファイルを、売り込みのためにハリウッドの各映画会社に持ち込んだために、そのアイデアは以後のSF映画に盗用されることになった。
スターウオーズ、ターミネーターなどがこの映画の中で言及されている。
この挫折によってホドロフスキーは屈辱を味わい、しばらく映画製作から遠ざかっていたが、1989年の「サンタサングレー聖なる血」以後、2013年のリアリティのダンス」、2016年の「エンドレス・ポエトリー」などの自伝的作品によって再び評価される。
2013年のこの映画は彼がおそらくは自己の挫折の体験を「再定義」することで乗り越えた痕跡のドキュメンタリーでもあるだろう。
砂漠の惑星アキラス、通称「デューン」で香料「メランジ」が見つかる。
意識を拡張する薬物で宇宙でもっとも価値の高い交易品となったためにデューンは戦略的に重要な星となり、ハルコンネンなどに征服されるが、その戦火で生き延びたポールはアキラスの先住民フレーメンの革命を率いて奪還する。
勝利ののち、ポールは頸動脈を切られて死ぬが、死ぬことで救世主になる。
そしてデューンは緑で覆われるようになる。
目覚めた惑星デューンは救世主の惑星だ。
他の惑星を目覚めさせるために宇宙を進みやがて銀河を去る。
この結末は原作とは違う。
映画を作る時は原作から自由にならなければならない。
結婚と同じだ。
花嫁は純白のドレスを着ている。
純白のドレスのままでは子供は作れない。
こうして脱がさなければダメだ。
花嫁を犯すために。
そうすれば自分の映画を作れる。
(ホドロフスキー)
この映画のストーリーは断片的に語られるだけだが、直感的に創世記や
イエスキリスト(ポール)を連想させる。
「エル・トポ」は、
創世記
予言者たち
詩編
啓示
と旧約の物語を連想させつつ、ホドロススキー自身の物語を創造した。
その中で、ユダヤの民からすればイエスキリストも予言者の一人に過ぎないことが明確にわかる。
選ばれた民ユダヤの旧約。
そういう「血」の意識が彼の中にあるのだろうか。
ホロコースト否定論者を否定した映画 Denial の主人公もユダヤ人女性で子供のころから「選ばれた」意識を持っていた、と語る。
選ばれたものの苦難とそれを乗り越える強烈な使命感。
自我と知性を解き放つ映画を作りたい。
84歳になっても創作を続け、体も弱っていない。
一生創造を続ける。
人間の精神は宇宙のように無限に広がり続ける。
志を持たずに生きるなんて無理だ。
挑戦するんだ。
こう語るホドロススキーはカルト的な魅力がある。
この映画も「エル・トポ」も「リアリティのダンス」もレンタルで鑑賞。
もう既に彼の魅力に取りつかれつつあるのかもしれない。
その魅力が、異能の人たちが彼に協力する所以だろう。
参考:ギーガーについては以下のZELDAさんのブログをどうぞ。
『DARK STAR H・R・ギーガーの世界』エイリアンは胎児の悪夢だったのか?





