#キム・ギドク監督作品  #悪い女  #悪い男 #メビウス | Gon のあれこれ

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12月中旬、ベルリン映画祭やヴェネツィア映画祭で監督賞を受賞した韓国のキム・ギドク監督が、ラトビアのリガでコロナ感染のために死亡した、というニュースに接した。

(ヴェネツィア映画祭で銀獅子賞受賞)

 

新型コロナの蔓延する欧州で、しかもラトビアというソ連の軛を離れてEU入りした小国で、、と この未知の監督の事に好奇心を刺激され早速調べてみる。

 

同監督は1960年の生まれ享年59歳。

17歳から工場で働き始め20歳で海兵隊に志願。5年の兵役の後、30歳の時絵画の勉強のためフランスに行き、「羊たちの沈黙」などを見て映画監督を志し、ヴェネツィア映画祭で2000年、2001年と作品が連続出品され注目された。

 

「悪い女ー青い門」は1998年の作品。

「悪い男」は2001年、「メビウス」は2013年の作品である。

 

2017年には、「メビウス」出演予定の女優から、暴力を振るった上に予定になかったベッドシーンを強行したとの事で訴えられ罰金を科され、2018年には2人の女優からセクハラや性的暴行を受けた、と告発されて恐らくは映画製作の道が閉ざされ、ラトビアに移住しようとしたのだろう、と言われている。(以上Wikipediaなどから)

こうした経緯のせいか、彼の死について追悼をすることが憚れるような雰囲気が韓国映画界にあるらしい。

参考

 

 

 

「悪い女」1998年。主演イ・ジウン

都市からほど近い河口の浜辺、かつての朝鮮戦争の砲台跡が今も残る観光地の民宿「Birdcage Inn」にエゴン・シーレの絵を抱えた若い女Aがやってくる。売春宿でもあるこの民宿には、かつては浜を取り仕切っていた男と水商売上がりらしい妻と大学生の長女B、高校生の長男Cがいる。

長女Bには許嫁がいるが、Bは実家の仕事を恥じ、知られる事を恐れて許嫁には家まで送ってもらうことを拒んでいる。

 

女Aはスリムで儚げで、肉好きのいい体をボーイッシュな服装で包んでいるBとは対照的な雰囲気を漂わせている。

儚げな女に魅せられて、民宿の親父も長男Cも性を求める。

長女Bの許嫁もBが「結婚まで待って」と拒まれてモヤモヤし、それとは知らず民宿に来てAを買う。

長女Bは確かめようと許嫁を詰問するが男は最後まで行っていないと言い張る。

もう許嫁に実家の事がばれてしまったBには、自分が変わるしかないという道を選ぶしかなくなる。

それは実家の商売や自分の性の受容、というしかないものだろう。

 

「悪い女」とは日本語題名なのであろうか?

残念ながらハングルを解しないものには分らないが、別に女Aが男を誘ったわけではない。何を以て「悪い」とするのか理解できない。

むしろこの映画の後味は「男の性の哀しさ」だ。

親父と息子は性病で同じ病院で鉢合わせする。

親父は帰ってAに「病院に行け」と言うがAを怒っているわけではない。皆その哀しさを共有しているのだ。

それゆえのユーモアもある。

 

主演のイ・ジウンは他にどのような映画に出演しているのだろう?

と検索して見たが、分からなかった。

参考:

 

 

「悪い男」

大学生とデートをしている女子大生に横恋慕、一目惚れした暴力団の男がいきなり抱きしめて唇を奪う。

そして罠ー財布の置き引きを仕組んで、それにはまってしまったその女を自分の縄張りの売春街に落とし込める。

彼女に客が付いた、と見るやベッドルームのマジックミラー越しに客との行為を盗み見る。

 

ある時がたって、彼女が男に「見られていること」に気づき、ミラーを割って二人の関係に変化が出てくる。

男の異常な執拗さに、恐らくは自分の運命、と諦めたのだろう。

最後は男の運転するトラックー荷台には幌がかけられベッドが置かれているーで売春する。男は念願の彼女のヒモになったのだ。

 

加えて男の異様な寡黙さの原因も明かされる。

頭のてっぺんから絞り出されてくるような声で、男もそれにコンプレックスを感じており、喧嘩っ早さもそれに因るのだろう。

しかし上のポスター上部にある「純愛」とはどうだろう。

「身勝手」を純愛とは言わない。

それに女子大生が「孤立無援」なのも気になった。

 

この映画は2001年の公開だが、ヒットしてソウルだけで30万人の観客を集めた、という。

この映画のどの部分にに反応したのだろうか?わからない。

 

もう一つ、韓国版売春防止法はどうなっているのか。

盧武鉉政権は2004年5月、大韓民国の性売買を根絶するために既存の淪落行為等防止法ko:윤락행위 등 방지법)を改善して「性売買斡旋等行為の処罰に関する法律」と「性売買防止及び被害者保護等に関する法律」(一名「性売買特別法」)を制定した。淪落防止法に比べて、性売買特別法は「淪落」という単語の代わりに「性売買」という単語を通じて、性売買行為を倫理的観点ではなく、性が金で取引されること自体に注目しようとした。また、既存の淪落防止法では淪落業に携わる女性たちにも責任を問うたが、性売買特別法ではそんな内容が大幅に消えた。性売買が不法という認識下に、性売買斡旋者と買受者(買春者)が皆処罰される。

性売買特別法が施行された以後、ミアリテキサス清凉里 588のような性売買密集地域に対する取り締まりが強化された。その結果、性売買集結地は減ったが、他の業所で偽装するとかインターネットを利用した変種性売買が流行するようになった。

また、性売買特別法により韓国での売春を禁じられた韓国人売春婦が台湾に大挙して進出し、台湾で売春に従事する外国人女性たちを追い出し、台湾人が仕切っていた売春業界も乗っ取る事態となり、「売春市場で韓流が流行」と報じられた。

 

 

韓国では「売春婦の出稼ぎ」が言われて国際的評判を気にして神経質になっている面もあるだろう。

かつての日本人男性団体客の買春ツアーが問題となったように。

売買春はフランスやドイツ、オランダ、あるいはオーストラリアなどで合法化されている。合法化されていれば、このコロナ禍で失業手当の様なものも支給される余地があろう。

実際に支給されたケースもあるようだ。

 

日本では本番行為以外は何でもありだから、法的保護の無い、いわば放任に等しく、このコロナ禍で主としてシングルマザーの性風俗従事者の救援が問題となっている。

 

人身売買や、児童買春などは厳罰に処すべきだが、売春は合法化すべきである、と思う。

違法、としながら黙認することは、いわば警察の匙加減ひとつ、ということになり、暴力団や政治権力者との癒着を生みやすい。

それは「法の支配」を事実上蝕むものだ。

売春は根絶しがたい。

売る方にも買う方にもそれなりの事情がある。

取り締まりを強化すればするほど、闇に潜り女性の人権は蹂躙されやすい。性病やエイズなど防疫的視点も重要だ。

 

この映画の主演女優も「他の映画の出演は」と検索しても出てこない。その事情は以下の記事にある。

 

 

「メビウス」(2013年)

夫の浮気に逆上した妻が、その陰部を切断しようとするが果たせず、息子の陰部を切断してしまう。

因果は巡り、男は自分の陰部を切断して息子に縫合手術しようとする。

実は画面に血が飛び散るような映画で、暴力的で汚らしく、途中で見るのを止めてしまった。

よって以下にこの映画のWikiを貼って済ませていただく。