「ブータン 神秘の王国」  西岡京冶・里子 | Gon のあれこれ

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読後感、好きな太極拳、映画や展覧会の鑑賞、それに政治、ジャーナリズムについて、思いついた時に綴ります。

先に被災した福島を慰問されたブータン国王夫妻、その暖かい人柄と若さ、親日ぶりでも際立っておりました。 以後、パッケージツアーが人気だとか。 肯けます。


その親日の理由がわかるのが、この本。


西岡京冶氏は、1933年の生まれ。2度のネパール学術調査隊に参加した後、64年、コロンボ計画専門家として、ブータン政府開発省農業局に勤務。

現地の農業発展、稲作や野菜の栽培技術などを、移転ではなく、国情に融合するように指導した功績で、80年に国王からダショー(優れた人)の位を受けた。

92年、28年間赴任したブータンにて逝去。現地で葬儀が執り行われた。


こうした背景が、ブータンの「親日」にあることも忘れないでおきたい、と思う。


この本は、64年から75年の11年間、夫に伴って現地に赴任した妻里子の滞在記である。

普通では「不便な生活」ともいえる中で、闊達に人々と交わり、溶け込んでいたお二人の人柄もよくわかる本である。

現在は、道路網やホテルなども整備されて、余程観光インフラが整ってきているようである。


ブータンは、北を中国に接し、南はインドに接している。

歴史的にインドとの交流が深く、英語が正課(ブータン語が必修)で、留学先もインド、あるいは旧宗主国のイギリスである。


ブータン、といえば「国民総幸福量」。 Wikipedia のコピペで、


1.心理 的幸福、2.健康 、3.教育 、4.文化 、5.環境 、6.コミュニティー 、7.良い統治 、8.生活 水準、9.自分の時間の使い方の9つの構成要素がある。、心理的幸福が挙げられる。この場合は正・負の感情(正の感情が 1.寛容 、2.満足、3.慈愛、負の感情が 1.怒り 、2.不満、3.嫉妬 )を心に抱いた頻度を地域別に聞き、国民の感情 を示す地図を作るという。


心理的幸福を見ると、仏陀の教えがよく反映されていると思う。


かつてビッグプロジェクトに血を沸せた者として、西岡京冶が、稲作や野菜を指導する中で、生産や流通などのシステムがどのような変化を生み出したのか、 そのプロセスを著して欲しかった、と思う。


最後に長くなるが、彼の援助哲学を引用しよう。


「僕がいつも技術援助で考えていることは、中央集中の排除です、常に地方に重きを置くこと、普通の技術援助でいきますと、都市の商業資本がもうかって、それに合わせて人口が都市に集まってくる。そうすると、クッキング用の薪が足りなくなる(即ち森林破壊が起こる、私の注)、LPガスを使うためのポンプが欲しくなる、、、、地方の人々に生活に最低必要なものを満たすような援助をやった方が、長い目で見て国のためになると思います」


今後もブータンが国民総幸福量が増すことを祈る。