「人には無限の可能性がある!」
これを生涯を通じて実践的に証明すべく、あなたの執筆と魂が悦ぶ®出版を応援する、夢実現応援家®の藤由達藏です。
前回は、ブーバーの名言とされている言葉の誤解について書きました。今回はその続きです。
■ブーバーの言う「出合い」
ブーバーの言う「出合い」は、私たちが日常的に使う「出会い」ではないのです。実際、ブーバーの著作を読むと、ブーバー独特の「出合い」の概念がわかります。確かに違うのです。
ブーバーの出合いとは、
人が、人のみならず、動植物や物であっても、真摯に向き合い、相手の人格と交流しようとする態度を持ち、相互に影響を及ぼし合う関係に入ること
なのです。ブーバーが理想とするのは、そのような関係に入るとき、人でも動植物でも、物でも、その関係を通じて、神と交流してしまうのだということを言っているのです。
私たちが、成功者との出会いが人生を決めるとか、誰と付き合うかで人生は変わる、という意味での「出会う」とはまるで違った概念なのです。
ブーバーに言わせれば、誰と会うかではなく、どのように関係を結ぶかが大事なのです。あの人と会うと得だとか、あの人は避けた方が良いというような考えではないのです。誰とであっても、真に向き合い関係を結べば、そこに真実がかいま見えるのだといっているのです。
文脈をよく理解せずに、言葉だけを見ると、即座に自分の中の概念が現れます。それをつかめば、
「お、いいこと言うわ。そりゃそうだよ。この表現、まさに私の気持ちを表してくれている。書き留めておこう」
そんなふうに思えるでしょう。
ひとつの誤読です。
■本の中の表現が己のもやもやに形を与えてくれる
こういった誤読は、意味が無いのでしょうか。
私は意味があると思います。
ブーバーを理解するという意味では、ブーバーの真意を考慮していないので、残念な理解ではあります。
しかし、私たちが生きている中で、さまざまな経験を積んで行く中で、様々な感情や思考を蓄積していきます。その中には、なかなか言語化できないものも多数あるのです。
体の中に蓄積された、感情や思考。
それらは、表現の形を得て、外に出たがっているのです。
それは人によっては、ビジネスによって表現したり、音楽や絵画などのアート表現によって外に出すかも知れません。勿論、言語表現によってその感情や思考を表現する人もいるでしょう。
まだ形を得ずに体の中で渦巻いている感情や思考。
本を読んでいると、それらに形を与えてくれる言葉を見つけてしまうことがあるのです。
それは本文の文脈を無視したものかもしれません。そうであっても、読み手にとっては価値のある言葉なのです。その言葉をみつけたことで、自分の中のそれまで形をとらなかった感情や思考に形を与えることが出来ると感じられたからです。
先に述べたブーバーの言葉も、一人歩きして、
「人生は出会いで決まる、とブーバーも言っているように」
などと引用されることがあります。よほど、多くの方の琴線に触れたのでしょう。己の中にある概念を言い表す言葉だ、と感じたから引用が伝播していったに違いないのです。
だから、その言葉によって己の感情や思考に形を与えられたならば、誤読にも大いに意味があるということです。
(つづく)
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