6月10日朝、ミヤマカラスアゲハの゙雌は袋の中で死亡していた。採集したのが5月17日なので、採集してからざっと24日、羽化してから1週間程度経た個体を゙採集したとすれば、ほぼ寿命だったと考えられる。下の写真が死亡前日の遺影。私が掴む位置だけ、少し翅が長くなっているのがいじらしい。
腹端に卵はなかったが、腹部にはザラッとした卵の゙手応えがあり、多分30卵程度はあった感じである。おそらく、卵巣の゙活動はまだ続いていたが、個体としての産卵行動などの機能は失われていたのだろう。雌は雄と同様、キハダの根元に埋めた。
さて、ここから蛹化までは、幼虫の゙管理のみが必要な作業となる。実は昨日までに小分け作業は少しずつ開始していた。以下、少し時間軸を戻して、ここまでに行った小分け作業について触れる。
すべての袋での産卵数が同じであれば、早い時期に産卵した分から食痕が目立ち始める筈だが、実際はそうはなっておらず、3袋目、22日産卵分で特に食痕が目立ってきた。
22日の゙前日、21日は午前中全く産卵せず、午後からハマセンダンでの産卵を試した。
室内での採卵では夜8時を゙過ぎてから産卵を始めるという話を聞いたことも゙あり、そもそも午前中の゙産卵数は少なく、夕方の産卵数は多いのだが、1卵も産まないと言うのは珍しいと思い、この際ハマセンダンで産卵するかどうか調べてみようと言う感じで午後にハマセンダンに移した。ところが全く産卵しなかったため、夕方再交尾させた。その翌日に大量に産卵したの゙である。
小分け作業の゙開始にあたり、以下の3つを原則にしようと決めた。
1.幼虫には直接触れない。幼虫を゙移動させる場合は幼虫の゙付いた葉片と共に移動させる。
2.袋に手を入れる場合は必ず医療用の゙使い捨て手袋を゙付け、袋から手を出した時点で手袋を゙捨てる。
3.1日で手を入れるのは1つの袋のみとし、ある袋に手を入れた時は別の袋には手を入れない。
原則1は最後まで守ろうと思う。厳守したいが、唯一守れない場合がある。幼虫が袋に付いていて幼虫に触れる以外の方法では移動させられない場合だ。この場合は、その個体を最後に触れることで代用せざるを得ない。滅多にないことだとは思うが。
原則2と3の゙両方を厳守することは、3齢幼虫の゙段階ではやや過剰ではある。原則3さえ守れれば原則2は守らなくても他の袋には病原体は拡がらない。しかし、袋の総数は今後かなりの数になると予想され、多分原則3は最後までは守れない。その場合、3は努力義務とし、2を厳守したい。
緊急を゙要するのは3番目の袋だけ。まず、6月2日から、次のように小分けした。
6月2日 カラスザンショウ5頭✕3袋
ハマセンダン3頭✕3袋
プラス4頭、5頭各1袋
合計33頭
6月3日 カラスザンショウ5頭✕2袋
ハマセンダン3頭1袋
合計13頭
6月7日 カラスザンショウ5頭✕2袋
ハマセンダン4頭1袋
3頭2袋
キハダ 3頭1袋
合計23頭
(袋合計69頭)
孵化しなかった卵とか、若齢で死んだ幼虫も1つや2つあったかも知れない。この日は約70卵産卵したのである。この袋に次いで多くの糞が出ているのは、2番目、5番目、6番目の゙袋。逆に糞の出る量が少ないのは、1番目と4番目。この2つは、終齢幼虫になるまで小分けを゙しないで済みそう。7番目以降はまだ幼虫が小さいこともあり、まだ不明。
その後、20日分、2番目の袋についても小分けした。
6月8日 カラスザンショウ 5頭2袋
ハマセンダン 3頭1袋、4頭1袋
合計17頭
6月9日 カラスザンショウ5頭1袋
ハマセンダン3頭2袋
キハダ 3頭1袋
合計14頭
(袋合計31頭)
5月20日と22日だけで合計100頭の゙幼虫が育っている。産卵数や孵化幼虫数はこれと同数、または若干多い筈であり、18日および19日産卵分も多くはないが糞は出ているから、17日に採集された後の4日間で100卵を゙かなり超える卵数で産卵したことになる。十分集中的な産卵である。普通と違うのは、これで終わらなかったことだけであろう。
毎日の゙産卵数は丁寧には見ておらず、ざっと見て5卵以上見えれば、全部で10卵はきっとある、はい次、と言う感じで、翌日は新しい袋で採卵していた。毎日の数の゙推定が、いかにいい加減であったかを思い知る。
3番目の袋の゙話に戻る。
22日に限って特に大量に産卵した理由は、2つ考えられる。
1つは、前日午後ハマセンダンでの産卵を゙試し、全く産卵しなかったため、前日産卵すべき卵が翌日にスライドしたこと。
あるいは、前日産卵しなかったことが、適度な休憩になったと言うことも考えられる。
産卵を1日休んだという意味では、これらは同じことである。採卵は毎日行わず、一日おきが最も快調と言う話も聞いたことがある。その正しさが証明された形である。
もう1つ考えられる理由は、ハマセンダンで産卵しないのを見て、21日夕方に再交尾を゙行わせたことである。
どちらが強く作用したかを調べる方法はない。2つの作用の゙相乗効果により、この日だけは産卵数が極端に多くなったと理解しておこう。
すべての袋から、量の多少はあっても細かい糞が出ている。未孵化の゙卵は見当たらない。受精率はほぼ100%だったらしい。
今の所、飼育は快調。まだ病気が出る気配はない。本格的に注意しなくてはならないのは、6月下旬近くにはなってからだろう。あまりしたくはないが、袋の中の1頭が病気にかかった場合など、「苦渋の決断」を゙迫られるケースが出てくることも、覚悟しておこう。有名なカルネアデスの゙舟板の゙ような場合だろうか。