言うまでもなく、ミヤマカラスアゲハは農業上重要な害虫でも何でもない。キハダとかカラスザンショウ、ハマセンダンなどの雑木を食べており、経済的にはどうでもいい昆虫に過ぎず、農業関係者は見向きもしないため、誰もミヤマカラスアゲハの発育零点を調べたりはしていない。

しかし、似たような環境で生活する昆虫などに調べられているものは多くあり、暖地産の種でも概ね10〜12℃付近のようだ。本州の山地に生息するミヤマカラスアゲハの発育零点は多分10℃よりも低いだろう。

あまり厳密な議論をしても意味はない。計算のしやすさも考慮し、ミヤマカラスアゲハの発育零点を、えいやっという感じで10℃と置くことにする。


この温度よりも低い温度や、あまり近い温度に置くと、障害が出る可能性が高くなる。おそらく15℃から25℃付近が、この式が成立する範囲であろう。


気象庁のデータによると、6月から真夏にかけての主な産地での平均気温は、20℃から25℃程度のようだ。関東の平野部ではもう少し高い。


15−10=5


20−10=10
25−10=15

これらの数値は、蛹になってからの温度を15℃に維持すれば、蛹の形態形成、成虫の成熟などに要する期間を現地のものより2倍から3倍に引き伸ばせることを示している。関東平野部での経過と比較すれば、2.5倍から3.5倍など、もっと倍率は高いかも知れない。


現在飼育中の個体は、GW中に産卵させ、6月10日頃に蛹になった、この蛹が羽化し、成熟して産卵可能になるまでの期間、蛹期間と成虫の成熟期間の合計は、野外では20日程度であろうか。7月初めには産卵させられる。15℃の低温に置いた場合、産卵開始が可能になるのは、


この期間を2倍に引き伸ばせるとすると

6月10日+40日→7月20日


3倍に引き伸ばせるとすると、

6月10日+60日→8月10日


上の値は、現地の平均気温を基にした。小さく見積もった値である。8月に産卵させることは、十分可能なようだ。


さで、目論見通り行くであろうか?それはやってみなくては分からない。

この話題の続きは、成虫の羽化前後、6月末から7月初め頃になると思う。

その時点では、観察レポで飼育されている幼虫から得られた蛹の羽化状況の情報も入っている筈であり、この数値も参考になるだろう。観察レポの蛹は、この時期だと2週間まではかからず、10日程度で羽化するのではないかと考えている。手元の蛹の羽化がその何倍の日数を要するか、両方の数値との比較を踏まえ、交尾、産卵の時期を決定したい。

幸い先方とうちので一番早く蛹になったものは共に6月4日、両方の羽化日を比較すれば、上の推計値のどれが適当な値であるかが分かるという寸法である。まあ、何よりも健全な個体が羽化してくれるといいのだが…。




続報はしばしお待ちを。