本日は好天であり、産卵日和に見えたが、産卵数はそれほど多くなかった。新たな交尾も成立しなかった。雄は元気そうなのだが、雌は2頭共に最初の雌よりも腹部が小さく、活発さにも欠ける。そのことが新たな交尾が成立しないことと関係しているような気もする。新しいことは何もないため、ここでは卵の写真をお見せする。



まず、5月8日産卵分




次に5月9日産卵分
下の写真は1卵のみ

これは右側の葉に1+2+1卵、左の葉に9卵。

天候条件は9日の方が良かったのに8日の方が産卵数が多かったのは、交尾から産卵まで日が開いたことと、8日と9日は連続産卵だったことが関係しているのだろう。
ここまでの所は葉表にしか産卵していない。しかし、卵を葉裏から見出した記録もあるようなので、今回はたまたま袋の中で葉表の方が産卵しやすかっただけかも知れない。必ずしもまとめて産卵する訳ではなく、1卵ずつ産卵する場合もある。要は表裏を問わず、葉を中心に1〜15卵程度産卵するということだろう。この辺の習性については、もう少し多くの個体での様子を見ない限り、確定的なことは言えない。

アゲハ類と比較すると、1日での産卵数は少ない。産卵位置などに違いはあるが、多分アカボシゴマダラと同様、毎日20〜30卵程度ずつ長期間産卵するタイプのようだ。

その他に気づいた点としては、成虫の餌はカルピスウォーターを少し薄めたものを使ったが、やはりアルコールは好むようで、そこに少量の焼酎を垂らした所、非常に飲みが良くなった。それから雄にとって交尾は非常に重労働であり、交尾した雄だけは羽化後1週間で死亡してしまったため、このやり方で雄の2回使用は難しいと思う。これらの2点は、アカボシゴマダラとも共通する点である。

幼虫の成長経過や新しい知見が得られ場合などで、またこの話題に戻る可能性はあるが、特筆すべきことがない限り、この話題はこれまでとする。実際、羽化済みの2頭の雌のコンディションが良くなく、これらの雌に無理に交尾させても産卵せずに死ぬのでは、という印象が強い。残る蛹から大きく立派な雌が羽化するのを期待して、雄を温存しようと思う。今回は、1頭交尾、産卵に成功したことを僥倖と考えるべきだろう。


オオムラサキはしばしば観光資源として利用されているほど人気があるが、地味なゴマダラチョウはあまり人気がなく、情報が少ない。スミナガシなどと同様、夏の雑木林の渋い名脇役という感じである。累代飼育をしたい方は多くないとは思うが、何かの参考になれば幸いである。

これまでの結果としては、羽化後3日以上経過した雄と羽化当日の、腹部が良く膨れた雌の組み合わせであれば容易に交尾し、エノキに雌を袋掛けすれば産卵も容易ということである。

アカボシゴマダラでは、雌1頭採集すれば容易に1箱以上のアカボシゴマダラに変わることはよく知られており、奄美大島でアカボシゴマダラの雌を採集して胸を押してしまう人は少ないのではないかと思う。幼虫の越冬に難しさはあるが、累代飼育も難しくない。ゴマダラチョウでもアカボシゴマダラと同様に比較的容易に吹き流しでの交尾が成立するということは、オオムラサキでもできるのだろうか?手元の幼虫で適当な組み合わせができるようであれば試してみたい。さすがにあの大きさでは、小型の吹き流しでは無理そうだ。大型の方で試すことになるかも知れない。