関東平野の端の方として、飯能市周辺を2箇所歩いた。この付近を流れている河川は荒川の支流の入間川であり、一箇所は飯能の近く、もう一箇所は飯能よりも少し上流の入間川沿いを歩いた。


飯能市で歩いた場所は、市街地から少し外れた谷地田的な環境である。小さな谷の入り口付近には畑や民家があり、少し離れた場所には工業団地や新興住宅地がある。

この地域は古くから林業が盛んな場所であるが、以前は植林地もかなり荒れていた。近年の林業への新規労働力の誘導がある程度成功したのか、枝打ちや間伐も行われているようで、植林地は昔よりも明るい林になっている。そのせいか、カントウカンアオイも少ないながら目につく。


ついでであるが、この植林地がある程度綺麗になっているという傾向は、丹沢周辺でも見られる。飯能周辺にはギフチョウは生息していないが、丹沢のギフチョウにとっては、これは明るい材料ではある。とは言え、丹沢はシカ害が酷く、カンアオイが復活している気配はないし、丹沢でも飯能周辺でも雑木林はほとんど利用されておらず、林内は暗い。


このような場所の、沢沿いの林道脇のエノキの根元を見たところ、ゴマダラチョウはいなかったが、多数のオオムラサキと共にアカボシゴマダラの幼虫を少数ながら確認した。


根元の葉に付いているアカボシゴマダラの幼虫は千葉でも茨城でも、東京都でも、山梨県東部でも確認出来なかったが、この地域で初めて確認できた。


もう一箇所は、飯能の少し先、高麗から横手の間の入間川に近い雑木林である。

たまたまであろうが、見た範囲にエノキは非常に少なく、やや暗い植林地の中、林道脇で少数確認できたのみであった。


周囲には多少とも雑木林がある環境だったので、オオムラサキだけであろうと予想しながら見たところ、意外なことに、オオムラサキやゴマダラチョウは全くおらず、少数のアカボシゴマダラの幼虫のみが見つかった。


飯能、つまり、東京近県よりも山地に近い場所のみでアカボシゴマダラの越冬幼虫が見つかったことにはかなり驚いた。この原因はなんだろうか。


今回はエノキの根元の枯葉のみを調べており、アカボシゴマダラは積極的には探していない。千葉、茨城などの関東平野の内部では根元の枯葉でなく、枝の分岐部などで越冬しているという可能性はある。飯能周辺は東京周辺よりもやや寒いため、寒風を避けて根元の葉で越冬しているのかも知れない。ただの偶然、飯能でも大半の幼虫は樹上越冬であり、たまたま根元での越冬個体が見つかっただけだという可能性もある。

いずれにせよ、アカボシゴマダラは都市部周辺に多いと考えていただけに、このような場所でアカボシゴマダラの幼虫がいたことはやや意外であった。


以前、高尾山の山頂直下のハイキング道の脇のエノキにアカボシゴマダラの幼虫が、複数ついているのを見たことがあるし、渋沢丘陵でおびただしい数の幼虫を見たこともある。アカボシゴマダラは意外と山中に生息場所を広げているのかも知れない。