千葉、茨城の県境付近については、守谷市と水海道市の周辺を歩いた。いずれも行政的には茨城県に属し、守谷市は利根川下流の河川敷の林、水海道市はそれよりもやや内陸に入った、小さな河川沿いの林である。


私の本来の両種のイメージとしては、これらの地域はいずれもゴマダラチョウしかいない場所である。前回触れた五日市周辺でのイメージ、すなわち「オオムラサキの方の勢力が強くなっている」ということが、ゴマダラチョウの勢力圏にオオムラサキが進出しつつあるということだったとすると、これらの場所にもオオムラサキが進出しているかも知れない。と考えた。言い換えると、今までの場所は「ゴマダラチョウはいるかな?」という感じで歩いたところ、ゴマダラチョウはあまり見つからず、オオムラサキが多かったのだが、この地域では「オオムラサキはいるだろうか?」と考えて歩いたのである。


結果としては、どちらの場所でもオオムラサキは見つからず、ゴマダラチョウしかいなかった。オオムラサキが勢力を広げ、その分ゴマダラチョウの勢力が弱まっているという関係は見いだせない。


一点気になったこととしては、これらの地域では、アカボシゴマダラの幼虫が全く見られなかったことである。

アカボシゴマダラは樹上での越冬が基本であるから、河川敷の大きなエノキの根元を見てアカボシゴマダラの幼虫がいなかったことは、決してこれらの地域にアカボシゴマダラが分布していないことを意味しない。しかし、中国産アカボシゴマダラは当初埼玉の秋ヶ瀬公園付近に放され、一時的に大発生したが、短期間で消滅している。アカボシゴマダラは河川敷の巨大なエノキが立ち並ぶような環境は得意ではないと考えて良さそうだ。


現在の秋ヶ瀬公園、浦和市道場周辺には50年以上前は少ないながらオオムラサキが生息していたが、あれは貴重な例外だったのだろう。河川敷の雑木林は、アカボシゴマダラもあまり侵入できない、ゴマダラチョウの勢力圏である。