1つはごく個人的な理由である。オオムラサキについては、通常知られていない場所を中心に多くの多産地を知っていたし、非常に大食いなため、オオムラサキの幼虫を多数集めて飼育に苦労するようなことはやりたくなかった。アカボシゴマダラに関しては奄美大島産の個体について何度か交尾、産卵を成功させていたため、標本もかなり多数あり、今更食い指が動かない。
ところが、ゴマダラチョウは元々成虫を多数見かけることがない種であり、とはいえ過去にどこにでもいたため、積極的に採集することもしておらず、標本もあまり持っていない。多分アカボシゴマダラと同じようなやり方で交尾、産卵させることは可能であろうから、羽化したらそれをやって見ようと考えたためである。
第2の理由は「そう言えば、最近ゴマダラチョウをあまり見ていない。もしかしたら減っているのではないか?」という漠然とした感じである。
もちろん、どこぞの宗教団体の御経のような、「外来種のアカボシゴマダラが増えて、それにゴマダラチョウが圧迫されて減った」などという考え方は欠片も信じてはいない。アカボシゴマダラはゴマダラチョウとは産卵場所がかなり異なるし、ゴマダラチョウを圧迫するほど高密度に生息している様子は全く確認していないためである。そうであればこそ、減少の原因というか、生息状況をを調べて見たいと思ったのである。
この目的のために、以下の場所を調べた。調べた場所は決して網羅的ではなく、幼虫を確認したエノキはそれぞれの場所で1〜2本の場合が多い。そのため、非常に偏った、限られた情報であるが、以前とは、オオムラサキの多い場所とゴマダラチョウが多い場所の境界が変化しており、オオムラサキ以上にゴマダラチョウが減少しているという印象を受けた。その点も含め、次回以降具体的に触れて行きたい。今回の記述は忘備録の域を出ないが、何か参考になったら幸いである。
1.首都圏の市街地周辺
2.北総台地の雑木林
3.多摩川の中流から下流の河川敷や周辺の雑木林
4.茨城、千葉の県境周辺の利根川下流の河川敷ないしその周辺
5.桂川周辺
6.飯能周辺
7.甲府盆地周辺