この題名で書くのは、今回が最後となる。まず、現在の状況について書くことにする。



3頭いた雌のうち2頭は羽化後2週間以内に死亡したが、1頭は羽化後22日、昨日死亡した。


この1頭の雌は少数、約10卵程袋に産卵し、その卵は薄黄色に色づいた。しかし、産卵から10日程経った現在まで、孵化していない。多分今後も孵化しないだろう。

雌は死ぬ直前まで元気であったが、翅の損傷は激しく、脚もかなり取れてしまい、とても産卵可能な状態ではなかった。


累代飼育としては失敗であるが、今回の失敗は私にとって非常に多くの知見をもたらしてくれた。今まで何度かツマベニチョウの累代飼育は試みたが、それら全部よりも今回の経験で得たものは多い。


生きていた雌は、8月2日に羽化した雌のうち、同じ日の夕方に死亡した雄が入っていた方の雌である。

実は、全部は無理でも、この雌だけは交尾している可能性があると考えていた。それは、他の雌は羽化翌日までの雄としか同居していないが、この雌だけは曲がりなりにも羽化翌々日の雄と同居していたためである。


交尾はしたが、非常に不完全、正確に言えば、未熟で受精能力のない精子が送り込まれたのではないかと思う。


交尾はしたと考える理由は以下の通りである。


まず、雌の極端に長い寿命。他の2頭の雌は羽化後2週間を待たずに死亡しているが、この雌は3週間を過ぎてもまだ生きていた。雌の体内に寿命を伸ばす効果のある何らかの物質が与えられた可能性がある。


もう一つの理由は、産卵された卵が曲がりなりにも色づいたことである。卵の核と精子の核の合体は果たせなかったが、産卵の際に卵表面を活性化する何らかの物質が卵に作用した可能性がある。


それでは、完全な受精卵を得る方法はあっただろうか。

結果を踏まえて考えれば、一つあったと思う。


蛹の段階で雌雄を識別し、雌と判断された蛹を数日冷暗所に置く。そうして雌の蛹の羽化を雄よりも3日程度遅らせる。そうすれば、完全に成熟した雄と羽化直後の雌の組み合わせを作ることができ、同じ容器の中で交尾が成立した可能性があった。


しかし、蛹での雌雄の識別、これは私が最も苦手とすることの一つであり、全く自信はない。数少ない雄を誤って冷却し、交尾に使えなくしてしまう可能性もあったし、冷却のような人為的な操作によって雌に生理的な障害を引き起こす可能性も無視できなかったため、温度操作は避けた。雄は何日かは生きるだろうと思っていたので、当初は雄が未成熟であろうと、雌が生きている間に雄が成熟し、交尾が成立すれば良いと考えていた。だから、雄の成熟のタイミングを雌の羽化直後に合わすことはそれほど重視していなかった。1週間も雌雄を一緒にしておけば、そのうち交尾するのではあるまいか。そう考えていた。


そんな生半可な考えでは駄目だったのである。


それしか方法がなく、そうすればうまくいく可能性があると言うのなら、やるしかあるまい。うまくいく自信はないが、次回はきっちりタイミングを合わせる形でやってみようと思う。


次の機会にはなんとかうまくできるようにしたい。あっさり交尾、産卵を成功させ、鼻高々に余分な幼虫を高平に放す。そんなことができるようになるのはまだ早いと言うことだな。


次は何とかする。


【完】