一時的に連載していたフタオチョウの話題に区切りが着いたので、徐々にミヤマカラスアゲハの話題を再開する。その際、ちょっと表記を変更したい。


今まで、雄親については全く表記せず、雌親のみを表記して「A系統」などと書いてきた。もちろん手元のメモでは何と何を交配し、そこに…と言う形で書いてあるのだが、それも繁雑になり始め、他方、ブログの表記が雌親だけでは、備忘録的な役割を果たせない。


そこで、以後は表記を以下のように変更する。

最初の記号AまたはBは、その個体の母系を指す。昨年9月3日に採集したAの雌の系統か、翌日に採集したBの雌の系統かである。W染色体とミトコンドリアDNAは雌親から雌の子にのみ受け継がれるため、この区別が重要なのは本来は雌の個体だけであり、雄についてはどっちでも同じなのだが、一応表記する。

今まで「A系統」などと書いていたのはこの部分だけである。


その後の数字は遺伝的にどの程度A系統に偏っているかを0~4の段階で示す。Aは1~4、Bは0~3である。


例えばA2であれば、A系統(A4)の雌とB系統(B0)の雄を交配した個体などが含まれる。他の交配でA2になることもある。例えば、A2雌にA2雄またはB2雄を交配したものもA2であるが、そこはもう気にしない。


何だかよく分からなくても一向に構わない。交配させている本人にとっては大事だが、ただの個体の記号であり、読み飛ばしてもらって一向に構わない。同じくどうでも良いことだが、この数字を8で割った値が、A雌から見たその個体の血縁度である。最大で0.5なのは、雄由来の遺伝子があるためである。


さて、この記号を用いた現況説明。

7月に入ったあたりから気温が低く雨の多い日が続いたので、特に蒸れが効いているのか、途中から予想よりも成長がかなり遅れている。病気で全滅と言う形ではないが、多少は落ちてしまった個体もいる。ほとんど雨が降らずに温度も上がった昨日からは、かなり糞が出ているので、元気な個体も残っている。


B0雌×A4雄によるB2はかなり蛹が多く、6月20日前後に蛹化した。そのほとんどを冷蔵庫に保存している。

全部でなくほとんどなのは、取り込みが数日遅れたため、冷蔵庫に入れなかった個体が1ついるためである。

その個体はすでに羽化しており、下の写真の個体である。

翅の斑紋がどの程度遺伝するのか分からないが、やはり雌雄を選び抜いた結果だろうか。屋久島の野外では、ここまで派手な夏型はほとんど見かけない。このような個体を現地で一度振り逃がしたことがあり、目に焼き付いている。その個体を思い出させるものがある。




後翅のラインよりも前翅のラインが太い所が屋久島らしい。後翅裏面の白帯も細い。気のせいか、前翅が大きく感じるのも屋久島的である。
累代に使用しようと思う。

雄の羽化までもうしばらく待機してもらう必要があるが、8月まで健康を保てるかどうかは大問題。当初の予定とは異なるが、7月下旬から産卵させようと思う。そのため、昨日は雄になりそうな蛹を10個程冷蔵庫から出した。

7月25日産卵、31日孵化であれば、猛暑期間はほぼ4齢の途中まで。厳しいが、ぎりぎり何とかなるような気がする。どの程度年内羽化の「秋型」になるだろうか?最低でも半分以上と見ている。

B2の順調な蛹化の後、急に雨が多く温度も低くなり、他の幼虫はほとんど蛹化していない。やはり、関東平地で袋がけ飼育を行う場合、6月半ば位に蛹化が始まるよう、5月半ばまでに産卵させるのが安全なようだ。

例えば6月1日頃から産卵させた信州産はまだほとんどが終齢幼虫(こちらは3組程度を交配させる予定)、6月6日頃から産卵させた屋久島A4雌×B0雄によるA2と、6月13日頃から産卵させた屋久島A4雌×A4雄によるA4は、更に若い幼虫が多い。いずれも全滅はなさそうだが、全員健康で蛹化も難しそうだ。

そういう訳で、現在蛹として冷蔵庫に保存しているのは、主に6月13日頃に蛹化した紀伊半島産と6月20日頃に蛹化した屋久島B2である。冷蔵庫内の蛹は頻繁にチェックしているが、冷蔵庫の温度はあまり低くないせいか、紀伊半島の蛹の一部に羽化兆候が出たため、これも常温に移した。マイルドな低温に置くと、約1ヶ月で羽化兆候があらわれ始めると言うことのようだ。

次回更新はこの雌と交配させる予定の屋久島産ミヤマカラスアゲハの紹介だろうか。20日あたりのつもりだが、その前にどこかのフィールドに出て、更新するかも知れない。しかし、あまり天気の良い日はなさそうなので、余程の成果がない限り更新はしないかも知れない。