タテハモドキはまず9頭一斉に羽化し、3日程で羽化はほとんど完了した。産卵期間が3日間のみであるから当然の結果であろう。羽化した個体の一部は、吹き流しの中にイワダレソウとペンタスの鉢の入った吹き流しに入れ、九州南部に出掛けたが、8月6日現在極めて元気であり、下の写真のように落ち着いてペンタスの蜜を吸っている。8月5日からは、イワダレソウに産卵された卵も確認できた。求愛行動は確認しているが、交尾は確認していない。いつか交尾したのだろう。



アオタテハモドキは初日に7頭羽化し、その後現在も羽化が続いている。旅行中の羽化を恐れ、3日間、最弱に設定した冷蔵庫の中に蛹を入れておいたところ、幸い冷蔵庫の中での羽化は起こらなかった。産卵期間が1ヶ月近くに及び、途中何度かの食料危機もあったが、もうすぐ飼育も完了。
蜜源となるペンタスで、手元でよく開花している株が1つしかないこともあり、アオタテハモドキの累代飼育セットはまだ作っていないが、そのうち作りたいと思う。大量飼育は懲りたが、できれば来春まで継続させたいものだ。

さて、最後までクロコノマチョウ?ウスイロコノマチョウ?と悩んだコノマチョウであるが、やはり最初の推理通り、クロコノマチョウであったようだ。頭部の角の裏側の色が違うとも言われるが、クロコノマチョウでも多少の個体差はあるようで、今回の飼育個体の中にはやや薄目のものもかなりあった。それに加え、成虫でも大半が夏型と秋型の中間的な斑紋の個体が多く、前翅突出がほとんどなく眼状紋が小さい夏型の雄が出てこなかった。しかし、『観察レポ』の羽化個体がそれだったのに加え、手元の蛹からも8月6日に典型的な夏型の雄の特徴を備えた個体が羽化した。このタイプはウスイロコノマチョウでは出ないため、確実にクロコノマチョウであると断定できると思う。

私にとって、クロコノマチョウは今まであまり関心のある種ではなく、その姿を見かけてもほとんど追うことはしなかったが、これだけよく似た2種の関係には少なからず関心を持つようになった。既にその準備をしつつあるが、近い将来、クロコノマチョウとウスイロコノマチョウを比較しながら飼育してみたいと思っている。

思えば、バイクを返却して赤尾木に向かった時点で、私の三角缶の中は、ほぼ空であった。その後、大きな期待もせずに短時間歩いた赤尾木で3頭の雌を採集したのだが、そのすべてが産卵し、1ヶ月以上、飼育を楽しむことができた。こういうやり方もあると言うことだろう。

私のスマホカメラでは全く再現不可能な綺麗な写真を残してくれた『観察レポ』のO氏に謝意を表しつつ、このテーマを終えたいと思う。

今回のタテハモドキ卵も無事孵化し、立派な写真を載せていただければ、3種の雌のすべてが産んだ個体の成長過程の写真がネット上に残ったことになる。これは、死んだ母蝶に対する多少の供養となろう。因みにアオタテハモドキ雌は3日前まで生きていた。弱々しい雰囲気でありながら、実にしぶとい個体だった。

アオタテハモドキとキツネノメマゴに関する問題とか、累代飼育に関係して出てきた問題などについて今後も触れることはあると思うが、「奄美大島産3種の…」の話題はこれにて完結。