クモマツマキチョウなど、人気の高い種はあるが、ギフチョウと比べられる程ではない。単独では無理でも、まとまりとしてギフチョウに次ぐ位の位置にいるのは、ゼフィルスと総称される、ミドリシジミのグループであろうか。
初夏の林を飛翔する雄の翅の輝きは、何度見ても胸をときめかされる。しかし、翅が擦れていない個体を得るのは大変難しいこともあり、冬期に卵採集をする人も多い。冬のブナ科植物の芽や枝に産卵されている1mmに満たない卵を探すのは大変楽しく、老眼の進んだ私でも、眼鏡を二重にすれば可能であることに気づき、最近再開したところである。
以上は主に採集する人達であるが、最近はカメラで撮影する人達も増えているようだ。
昆虫写真というと、東京農工大時代の日高敏隆氏に師事していたという海野和男さんの、行動に対する好奇心が溢れ出すような写真とか、一流の研究者そのものである渡辺康之さんの精緻な写真とかを思い浮かべるが、最近多い人達はそれらとは全く異なり、冷静にいって蝶に詳しくない人が多い印象が強い。毎年ギフチョウのいる石砂山に行き、今年こそ綺麗な開翅ポーズの写真を撮ってネットで公表しようとか、そういう趣味の人達だ。鳥の写真を撮るのが趣味だった兄の話では、デジカメの性能が上がったため、鳥から蝶に移った人がかなりいるという。
そうか。それでK戦略的な鳥で通用するロジックを振り回して採集者を批判したりしているのか。言われてみれば、撮影ポイントに集まっている鉄オタ君や、野鳥観察舎に集まっている人達と似ている。何年かしたら今度はハナカミキリにでも移るのかな?

これらメジャーなグループとは比べられるものではないが、アゲハチョウの中のカラスアゲハなどのアキリデスと呼ばれるグループに特に関心を持つ、アキリデスファンとでも言うべき小さなグループがある。カラスアゲハの島ごとの変異とか、特に北海道産ミヤマカラスアゲハの美しさとか、色々面白い問題がある。かく言う私は、このマイナーグループに属する。

アキリデスと呼ばれるアゲハチョウ科の一部に特に関心をもち、標本作りでなく飼育を主な手段として付き合う。それが私のポジションであると理解してもらえばそれでいい。ここまで理解してもらえば話は通じる。次回から本題に入ろう。