現在、日本において蝶の趣味を持つ人に圧倒的な人気を誇っているのは、ぶっちぎりでギフチョウである。分布は広いがどこでもいると言うほどではない。個体数は少ない場所もあるが、通常採集困難と言う程ではない。飛ぶ舞台もいい。スミレやカタクリの咲く春の野山に飛ぶ蝶は、ルリシジミ、ボロボロのヒオドシチョウ、ルリタテハなどの越冬タテハ、モンシロチョウなどのシロチョウ、ミヤマセセリなどの冴えない連中ばかりだ。この舞台に唯一の主役は颯爽と姿をあらわす。かく言う私も、それほど遠出はしないが、何だかんだで4月中の晴れて動ける日は、1日も休まずにギフチョウ関係に時間を費やしている。いるかいないか分からないような場所ばかり歩いているので、実際に姿を見る機会は滅多にないが。
地理的変異が大きいことも、人気の原因の一つだろう。大きく分けて明るい日本海側と黒の濃い太平洋側、更に産地ごとの細かい違いがある。イエローバンド、イエローテール、赤上がり、杣山型、その他、多様な変異が存在するのも、蒐集欲を駆り立てる。発生が始まる3月から6月まで、南から北へとギフチョウ前線を追ってギフチョウだけを採集している人達もいるほどだ。
現在、各地の村指定などの形で、昆虫の中で採集禁止になっている種としても、ぶっちぎりでギフチョウが多い。そのような場所では本当にギフチョウが絶滅寸前かと言うと、そうでもない。
熟達した採集者は、発生初期の新鮮な雄だけを狙う。ボロボロの雌など採集するのは初心者だけだ。そして、地域ごとの微妙な斑紋の違いは、飼育個体では失われてしまうため、卵等を採集することもない。熟練の人達ほど、発生に影響のないやり方をしている。
ただ、地域社会のことをもう少し考えた方がいいな。細い道に車を止め、地元の人の交通を妨げたり、畑に入ったり、やり放題。それに、ジュース1本でもいいから、地元で買ってお金を落とさなきゃ。ゴミを勝手に捨て、地元の人とすれ違っても挨拶もしないんじゃ、それは採集禁止になるわ。蝶を採るなと言われているんじゃない。お前ら来るなと言われてんだよ。

ギフチョウの話が長くなった。もう1回、蝶の趣味のスタイルの話を続ける。