Hさんからの連絡には驚いたけど事情が複雑で気分も重いし

何やら忙しくて1ヶ月ほどしてからようやく弔問に伺った

 自殺という事で内輪だけの葬儀だったので返礼品の用意もないとの

事で香典は頑なに受け取ってもらえず

 失意のお嫁さんは留守で隣接してる家にも入れず焼香もできなかった 

  仕方なく誰もいない工場でHさんから話を伺う

 

 工場は従業員も誰もいなくてがらんとしていて異様な雰囲気

       

 ドイツ製の1台1千万はする最新鋭の編み機が10台以上

 特殊機種も含め各種ミシンも20数台以上に

 セット機やボイラー等関連機器も揃っていて

 稼働していない事がもったいない状態

 

 ニット生産は生地を買って裁断縫製するのでなく 原料を入手して

編み地から作るので工程数も多く外注依存度の高い業種で

 殆ど外注に頼る業者も多く場内で全ての工程が完結する工場は珍しい

 Hメリヤスでは生産する製品が特殊で殆ど1種類の原料だけを使うので

ロスは驚くほど少ない

 無縫製ニットは機械から編み上がった時点で完成品に近く後の作業工程

も少なく裁断クズも出ないし 売り上げに占める原料比率は3割前後という

点に於いても同業他社ではあり得ない理想的な経営が可能である

 事実Hメリヤスでは約10名のパート従業員と家族5名だけで2億円前後の

売り上げ実績もあり10年以上の安定的な受注で相当な利益をあげていた

 

 海外製品に市場を奪われ多品種少量の安価品の生産ばかりで疲弊している

国内のニット工場の中ではありえない理想的な経営をしてきていて

 精神を病んでいたとはいえ目先の受注減で先行きを悲観した息子さんの事

は到底理解できないものであると改めて感じた

昨年の社長交代が励みとなって頑張っているいると思っていたら事情は違っていた

 その年の納品が完了した秋頃に主力取引先のT社が来年からの発注は減少するので

他社との取引を拡充して補って欲しいと通告してきたらしい

 それまでは特許を使った独占的取引なので同仕様の製品の他社への販売はしないことが暗黙の了解だったの裏切りとも言える申し出によって事実上独占的取引が終了する事を意味していた

 特許自体も取得後15年以上経ち公開になるしT社の主力製品の中でのニットインナーの消化率も下降線を辿りつつありラインナップに占めるニット製品の比重を減少させる必要がありその傾向は継続する事は明らかで改善する見込みは無いとも言われたとの事

 それを聞いたHさんは転機と捉え小売業界への直越販売を前向きに進めようと思っているのに対して新社長の息子は作行き不安ばかりを感じて一人悩んでしまったらしい

 対応策として翌年のT社の生産が終わり次第 Hさん個人発注の生産に切り替えてその製品を販売するべく新規取引先獲得の営業活動を開始する計画だった

 Hさんはその点でも息子の工場の経営に負担をかけないように潤沢な蓄えを背景に無理なく支払える範囲の発注を2~3年はできる計画を立てていたと言う

 メインのT社からの受注減で悩んでいる新社長は売り先の確定してない見込み生産に対して

支払いは父親のHさんがするにもかかわら先行き不安を抱いていたらしい

 かと言って自分で新規得意先を開拓する営業活動などした事もなくてをこまねいていて一人で

焦るばかりで重症のうつ病を発症して通院するようになっていたらしい

 自分の責任としてT社の発注分の生産分の編み地は作り上げて納品の段取りの目処が立った時期に一人で命を絶ってしまった

 長い間資金ぐりで悩んだ上に廃業した私や経営難で悩んでいる経営者から見れば理解不能な話で 無借金でなんの足かせもなく単なる受注減で悩む事もなく前に進める段階での自死は理解に苦しむ事態であるけど当人でしかわからない悩みもあったのだと思う

 

 今年の正月あけにH社長から久しぶりに連絡をもらう

 我がブログでも何度も紹介させてもらった過去のお客というより同志のような存在の人なので何があったのか期待が半分と根拠のない不安が半分で話を聞く

 昨年秋に80歳になるのを機に社長を辞め息子に会社を任せたと言う

 むしろ遅いと思える社長交代だけど真面目な息子さんは励んでいるだろうと思い安心する

 私の廃業直後にドイツ製の編み機メーカーの営業になりHメリヤスには足繁く通って高価な機械を何台も購入していただいて単に顧客と言うより半分身内のような関係になっていた

 その時期からドイツ本社の下着メーカーT社と自社保有の特許を活かした独占的な取引が始まり10年以上の順調な商取引で業績は安定し昨年は最高益を記録したとの事

 その利益にまともに税を払うのはもったいなく良い機会なので社長交代して合法の範囲で最大限の退職金をもらうかたちで節税し息子に無借金経営の会社と十分な自己資金を託した

 更に息子の会社の端境期に自己資金で発注しその製品を直接小売業界に販売したいと考えているなんとも羨ましい話でついにその段階になったのだと感じた

 HさんはOEM生産で経営は安定していてもいずれは自社製品を小売業界に直接販売して小さくてもメーカーとして自立したいと昔から考えていて その点において単なる機械の営業の私とも意見が一致していて営業面でできるだけの協力をさせていただいていた

 Hさんはその製品の販売を私に手伝って欲しいという

 営業活動が苦手な社長親子に代わって新規取引開拓営業を請け負ってスーパーなどの小売店から直口座を獲得した過去の実績を認めてくれた上での申し出だった

 

 遂にその時期が来たと思いついろいろプランを考え準備に入ろうと言う段階になって 

コロナ禍でのパニックともいえる状況になり計画は保留状態に陥ってしまった 

 そんな状況でも焦ることもなく 却って先の見えない時期に具体的に動き出さず良かったとも思って事態が落ち着くのを待っていた

 

 半年以上が経った秋口にHさんから息子が自殺してしまったという驚きの連絡が入った

 はやる心を抑えつつカスタマイズしてみる

 これでもかと言うくらいガッチリ作ってるあるのでものものしいけど逆に頼もしい

 早速吹きやすい高さと角度などを慎重に調整する

 装着してみると結構な重さがかえって安定性を高めてる

 

  

 

 低音域の通常のベンドや首を振るトレモロでもハーモニカが動かない

 高音域のオーバーベンドで口をハーモニカに強く押しつけてもしっかり固定されて

音がコントロールされて音がよく下がる

 吹かない時には真っ直ぐ下に降ろしても

 使う時に曲げてレバーで固定すれば所定の角度にぴったり固定できる

 曲によってキーも頻繁に変えるのでハーモニカの脱着のやり易さも重要なポイント

 その点においてもこのホルダーは申し分ない

 頻繁に吹いたり口から離したりしても動いたり下がったりしないので

 余計な気を使わず演奏に集中できる

 なんか上達した様な気持ちになり思わず長時間大きな音を出してしまった

 

 もう少し慣れたら10年ぶりに動画をアップロードしてみようかな....

 

 コロナショックの影響で少々遅くなるとの話だったけど思ったより早く着いた

 予想通り重厚な作りさすがドイツ製

中退はしたけど工学部機械学科だったので習った覚えがある 

 鉄鋼は鉄と炭素とかの含有率で重みとか質感とか耐久性とか全然違うはずで

この製品は部分毎に違った品質と太さ厚みなどの形状が違った鋼材を使っていて

精密機械のような雰囲気

 以前に自分のニット工場社で使っていた自動編み機と同じでドイツ製品共通の重厚な雰囲気があるしとにかく姿が美しい

 

   

 ホルダーを首にかけた時の角度とかハーモニカの着脱角度と高さ

 首の後ろの寸法など数カ所が調整でき専用のゲージも2種類入っている

 箇所ごとに微調整してごっついレバーを倒すと固定されて全然動かない

 ここが一番重要な点で他社のどのホルダーにおいてはネジを締めても 

 ハーモニカを吹いたり口から離したりするとぐらぐら動いてしまう

 このホルダーは何度口を付けてもピタリと止まっていてびくともしない

 首を振ってトレモロをしても高音域でオーバーベンドで力を入れてくわえても

全然動かなくてホールド状態をしっかり保っていて驚く

 ケースも収納し易いしセンスも良い(一番気に入ってる要素)

 

 輸送費など諸々含めて3万4千円くらいもするのもうなずける品質

 たかがハーモニカホルダーでありえない出費と普通の人は言うだろうけど 

 長い間探していた理想的な製品についに巡り合えて大満足

 

 あとは練習するのみ

 もううまく演奏出来ない時に道具のせいという言い訳は許されない...