鎌倉時代。
この時代の剣呑な空気は、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を見ていた人なら、よくよく身に染みたことだと思う。
挑発、騙し討ち、族滅、暗殺、喧嘩成敗…。
こんな鎌倉武士たちをまとめている坂東武者は、他人はおろか自分の命も安く見ているフシがあって、自分の領地やメンツのためだったら、幕府に逆らうことも、多数を敵に回すことも恐れない。
本当、坂東武者のメンタリティや暴力性は、厄介オブ厄介なものでした。
また、この頃の寺社の魔物ぶりは、大河ドラマ『平清盛』を見ていた人ならお馴染み。
院政を敷いて堀河-鳥羽-崇徳の3代に渡って独裁を果たし、この世に怖いものなんてないと思わせた"モノノケ"白河院(@伊東四朗サン)が、「ままならぬ」として取り上げた3つ。
賀茂川 賽の目 山法師。
この山法師は、比叡山延暦寺の僧侶(僧兵)たちのこと。
「俺たちに財産を寄越せ!俺たちの権益に手を出すな!地獄に落とすぞコラァ!」
とばかりに神輿を担いでワイワイ山を下りてきて、武力をチラつかせながら朝廷を威圧する様は、坂東武者に引けを取らない厄介オブ厄介(笑)
そして、お公家サンたちの怪物ぶりも…いや、これはこの頃に限らずか。
ただ、鎌倉時代の朝廷は、それまでとはちょっと趣が異なっていて。
平安時代の朝廷は「財政が火の車」というワーキングプアなボンビー国家でした。
ワーキングプア王朝(関連)
http://ameblo.jp/gonchunagon/entry-11299032038.html
何するにもカネがなくてヒーヒー言っていたのですが、平清盛が丹精込めて軌道に乗せていた日宋貿易を、平家の滅亡とともに引き継いだことで脱します。
ひと財産築いたりまでして、政治・経済・文化・教養どれを取っても侮れない連中だったんです。
後鳥羽天皇に入内させようと頼朝の一家が画策した後宮政策も、魔界さながらの公家世界の壁に阻まれて失敗。
それでも、三代・実朝はなんとか教養力も兼ね揃えて対等に渡り合えそうな雰囲気があったのですが、雪の鶴岡八幡宮で非業の最期を迎えてしまいます。
その後は、摂関家(九条家)や天皇家から将軍を迎えているので(摂家将軍/宮将軍)、影響力は排除したくても限定的になってしまったりしました。
坂東武者・寺社・朝廷。
こいつらとやり合わなければならない、幕府政治の舵取り役。
それが、鎌倉殿から「執権」職を預かる、北条家。
北条は元々、伊豆の弱小田舎豪族。当然、帝王学なんて学べるすべもなく、腹芸や根回しが重要になる政治力では疑問点がつく一族。
後世から俯瞰して見ると、そんな出自でこのバケモノたちとよく渡り合えたもんだな…と思ってしまうところなんですが、近寄って細かく見てみると…。
泰時(3代執権):宗教に走る(華厳宗)
重時(泰時の弟):宗教に走る(浄土宗)
実泰(泰時の弟):発狂
時氏(泰時の子):早世(27歳)
経時(4代執権):早世(23歳)
時頼(5代執権):早世(37歳)
長時(6代執権):早世(35歳)
義宗(長時の子):早世(24歳)
時宗(8代執権):早世(34歳)
義政(重時の子):突然出家
宗政(時宗の弟):早世(28歳)
師時(10代執権):早世(37歳)
うん、大抵は渡り合えてない感がありますな(執権は結構早世している)
渡り合えたのは煮ても焼いても食えないタチの人。
11代執権・宗宣より後になると、「病気」と称してさっさと職を手放し、あとは自分の趣味に走るパターンが出来上がってきます。
宗宣は和歌。高時(14代)は闘犬、猿楽、田楽などなど。
こうなると早世率はグンと低くなって、「苦労を次に押し付けると長生きする」という姿が見えてきたりします。
(鎌倉時代後半は御内人に政権を牛耳られているので、執権は有名無実だからさっさと譲らされていた…とも言えますけども)
でもって、仕事でストレス溜まって行って精神に支障をきたしたり早死にしてしまったりするあたり、北条一族ってクソ真面目だなぁ…というかんじもしてしまいます(^^;
北条一族の寿命を縮める諸悪の根源。
坂東武者・寺社・朝廷。
これに付け加えて、「奪えるものは宝でも物でも土地でも命でも、なんでも奪ったるで!」という、坂東武者の十倍ヤバい「モンゴル帝国」が、はるばる海の向こうからコンタクトを取って来た時代。
それが、北条時宗の時代。
北条時宗@和泉元彌サン
2001年大河ドラマ『北条時宗』より
やめて!時宗のHPはもうゼロよ!と叫びたくなること請け合いです(実際、早世してますしね)
そんな、時宗を主役とした大河ドラマ『北条時宗』のDVD完全版が、このたび発売の運びとなったそうです!
第40作 NHK大河ドラマ『北条時宗』(2001年)
主演は、狂言師の和泉元彌サン。
ワタクシは平安時代の朝廷並みにボンビー(泣)なので購入は半永久的に検討中ですが、せっかく中世熱が盛り上がってることですし、これを期に手に取ってみては如何でしょうか。
まぁ、本当は『鎌倉殿の13人』と一緒に見たかった…という方もおられるんでしょうけど、そこは残念でしたね…(澤瀉屋さーん…)
ちなみに、我らが去年の主役・小四郎義時は、約19年の執権職歴を経た後に62歳で亡くなっています。
意外と長寿…?大河ドラマではストレスフルな描写でしたけど、史実ではあんまりストレス感じなかったのかな。
(まぁ、父・時政は77歳、姉・政子は69歳まで生きているので、長生きのDNAがここまでは受け継がれていたのか、鎌倉殿の偉大さが彼らを守ってくれていたのか、あるいは長生きDNAを発現させてくれない4代目以降の環境がヤバいのか…マサカナ)