大河ドラマ「平清盛」、視聴率が苦戦しているようですね・・・・。
 
★持ち直したのも束の間 第20話で平均視聴率再度11%台に
 
--------以下引用--------------------------------
前回の第19話では約2カ月ぶりの14%台に回復。15%復帰も間近の14・7%まで上げていた。
しかし、ここで一気に3ポイント近いダウンで11%台に逆戻り。3番目に悪い数字となった。
------------------------------引用以上---------- 
 
第19話は「鳥羽院の遺言」
 
全ての不穏な空気を押さえ込んでいた鳥羽法皇が崩御寸前で、戦乱の一歩手前になる・・・・という様子が描かれていました。
 
第20話は「前夜の決断」
 
朝廷がふたつに割れ、それぞれの陣営に源氏・平氏が、身内と敵対するのを覚悟の上で参じる・・・・というお話。
 
 
第19話から第20話にかけて、視聴率が下がったということは・・・・えぇ!?
 
第19話を見た後で「朝廷の重石である鳥羽法皇が亡くなった。この先、一体どうなるんだろう?」とは思わなかった・・・・ということなのかしらね?
 
もちろん、録画して後で見るのよという人もいるでしょうし(録画は視聴率にカウントされないらしい)18時からのBSで、あるいは土曜日の再放送で、それぞれチェックしている生活リズムな人もいるでしょう。
 
でも・・・・そうでもない、つまり「見ないつもりな人」っていうのも、いるんだろうか。
 
先週のラストや次回予告の、あれだけの引きをスルーしてしまうってことですか・・・・。
 
「平安時代は馴染みが薄い」から視聴率が延びないと言われ、ワタクシもそうなんだろうなと思ってました。
 
けど、これはもはや「テコ入れを何回やろうか?」云々どころの話ではなくなってる気が・・・・。
 
昨今は歴史ブームというけれど、そこに「平安時代」は入ってないことが白日のもとに晒された、というような気がしますなぁ・・・・。
 
 
ところで、いまの人たちは、どうして「平安時代に馴染みが薄い」のだろう?
 
いや、むしろ「歴史ブーム=戦国時代」であり、「戦国時代以外は馴染みが薄い」のは何故だろう?と言い換えるべきか。
 

「戦国時代ブーム」と「平清盛が奮わない」。
 
これ、実は表裏一体なのではないかと、ワタクシは考えています。
 
といっても、ファン層を取り合っているという意味ではなくて。
そこには、戦後教育の影響(日本の歴史観・学校教材の歴史観)があるのではないのかなーと。
 
 
戦後教育と言えば、それまでの「帝国主義」の失効とともに「天皇家」の見方が変わったことが挙げられます。
 
戦前は、「国家神道」や「帝国臣民」に見られるように、天皇家を絶対視した歴史観で学びました。
 
戦後は、「天皇の象徴化」に見られるように、天皇家を相対視した歴史観で学んでいるのです。
 
 
「絶対視」「相対視」というと、お茶を濁した言葉になるかもしれない。
 
いっそ、絶対視は「拡大視」、相対視は「無視」「軽視」と言ってしまった方が、現実に即しているかもしれません。
 
 
そこで考えてみたいのですが、たとえば「源平合戦」や(イマドキの人に最も馴染みが薄いと思われる)「南北朝」の話を、天皇家を無視して語れるだろうか?
 
それは、今年の大河ドラマを見ていたら一目瞭然。
 
「鳥羽法皇」「崇徳上皇」「後白河天皇」を無視して「保元の乱」を語れる?
 
ハッキリ言って無理語れません。
語れるという人がいたら、それはその人の法螺だと言い切れます(笑)

南北朝だって、天皇家が南朝と北朝に割れているから「南北朝」と称するわけで、天皇家を無視して語るなんてのは無理も無理。
 
そんな、これらの時代を「天皇家を無視(したい)という歴史観で学ばせようとするならば、自然とあまり深く触れることなく通り過ぎることになるでしょう。
 
 
しかし「戦国時代」は、天皇家を無視しても語ることができたりします
 
例えば、身近にいる戦国時代ファンを自称する人に、こんなクイズを出してみてください。
 
「上杉謙信が上洛した時に拝謁した天皇って誰?」
「織田信長が上洛した時に拝謁した天皇って誰?」
「秀吉を関白に就任させて『豊臣』の姓を与えた天皇って誰?」

謙信&信長が上洛したこと、秀吉が関白になったことは、戦国ファンを自称するなら誰もが知っている(と思われる)こと。
でも、その時の天皇は誰?というクイズには・・・・はたして、どれくらい正解が返ってくるだろうか。

ワタクシの統計では、1割くらいでした。
10人中1人が全問正解できれば上々だと思います。
 
これは知らないのがおかしいのではなく普通は知らないのです。

何故なら、歴史の授業で「秀吉が関白になった」のは教えても、「正親町天皇に任官された」のは教えていないから。
だから、普通は知らない・・・・というか、知ってる人がマニアなのです(笑)
 
でも、これらの天皇を知らなくても、戦国時代の流れはきちんと知っています。
これは、戦国時代は天皇の個性とあまり関係がない時代だからという何よりの証左なのではないでしょうか。

 
「天皇家を無視する歴史観」でも理解が可能な「戦国時代」がもてはやされ、
「天皇家を無視する歴史観」では語ることができない「平安時代」は、疎遠になっていく。

平成の人たちが、戦国時代は「常識」として持つことができ、平安時代は「馴染みがない」という現状は、戦後の歴史観・歴史教育がそうしたのではないかと考えたのは、こうした推測に立脚しています。

 
ちなみに、明治から戦後すぐにかけての人は、戦国と幕末以外についての歴史観は、常識としてちゃんと持っていました。
 
「戦国」「幕末」はもちろん、いまNHKが苦慮している「平家物語」の時代(源平合戦)「太平記」の時代(南北朝時代)人気がありました
 
好きな武将を聞いてみたとしたら、織田信長よりも平清盛楠木正成のほうが人気があったようです(それよりも、豊臣秀吉の人気のほうが高かったようですけども)

ワタクシの祖父も大正生まれですけど、そんな傾向がありました。


「幕末ブーム」は、この時代も天皇なしでは語れない時代ですけど、天皇の個性というよりも「尊皇攘夷」という時流ですから、無視した歴史観でも流れは理解できるんじゃないでしょうか。

あと、昭和の巨人・司馬遼太郎の影響が大きいのかもしれませんね。
彼が坂本龍馬を「創造」してから、幕末人気は花開いたような気がするのでねー。
(あと観光業界の事情とか・・・・)


でもって、こういう「常識としての歴史」の基礎知識の差って、ドラマ制作から見ると随分と大きなハンデですよね。

イマドキの人なら、信長がどんな人か知ってるし、秀吉も、家康も知ってます。
上杉謙信も、武田信玄も、伊達政宗も知ってます。

「桶狭間の戦い」 は誰と誰が戦い、誰が勝ったのか?
「川中島の戦い」は?「関ヶ原の戦い」は?「大坂の陣」は?
大筋でなら、みんな知ってます。

しかし、平安時代はそうは行きません。
「保元の乱」「平治の乱」も、誰と誰が戦って、誰が勝ったのか、大筋ですら知らないわけです。


ドラマで信長が出てくる時、「信長とは・・・・」という説明は要りません。いきなり物語に入ることができます。
それは、織田信長という人について「常識としての歴史観」を、みんな持っているからです。

でも、「平安時代」は無理
平清盛や源頼朝くらいなら、説明なしでも大丈夫かもしれませんが、例えば藤原頼長崇徳院後白河院信西入道源義朝は、説明が絶対必要なのです。

「常識としての歴史観」さえも欠如した状態でドラマをやっているのだから、分かりづらくて当然

「平清盛」の視聴率が低いのは、戦後教育が根底にある、結構根深いものなんだと、ワタクシは考えてみたのですが、どうでしょうかねー。


何年か前に、安倍首相(当時)が提唱した「戦後レジームからの脱却」が実現しつつあるのかどうか。
いまの人たちの歴史観は、戦後のそれとはまた、大きく変わりつつあるように感じています。

これは決してネガティブではない。いいかんじだと思いますw
 


ただ、変わらないのはNHK・・・・。

天皇大河ドラマのメイン題材になれないのは、「視聴者が」でも「日本政府が」でも「いまの皇室が」でもなく、「NHKが」気にし過ぎているのだと思います。

もう戦後が始まってから、ずいぶんと経っています。
戦争体験は風化させてはいけない負の財産だけれども、戦後レジームは、そろそろ脱却しませんかね?

そして、是非とも自分が生きているうちに、天皇を主役にした大河ドラマを見せてほしいなぁ!と、願ってやまない、救いようのない歴史オタクなのでした(笑)

(やるんだったら天武天皇・持統天皇・聖武天皇あたりがいいなぁw)


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