昨日のボクジングミニマム級タイトルマッチ、井岡一翔VS八重樫東。気迫の12R。
試合にも増して素晴らしかったのが、試合前に放映された薬師寺保栄と辰吉丈一郎の対談。1994年に年にWBCバンタム級「王座統一戦」で死闘を演じた二人が当時を語ったが、本当に素晴らしいトークだった。
試合前から熾烈なマイクパフォーマンスで威嚇し合った二人。口だけではなく、本番の試合も最終ラウンド判定までもつれ込む大激戦だった。
当時を振り返り辰吉が、「オレあんな失礼なこと言ってたんやな」と反省の弁。試合を見ながら「俺は明らかに弱い。完全に負け試合」と言ってのけた。
何て潔い男なんだろう。
そして、辰吉の極みのコメント。
「マイクパフォーマンスであれこれ言ってるけど、今までの試合で相手を憎いと思ったことなど一度もない」
薬師寺に対しては「そりゃ、リスペクトしていたよ」と当時を振り返り熱く語った。
これぞ、本物のアスリート。そこいらのチンピラの喧嘩とはまったく属性の違うものであることを如実に物語る発言だった。
さて、試合終了のゴングとともに二人はリングの真ん中で健闘を讃え合い抱き合った。このとき、辰吉が薬師寺の耳元で何かを囁いた。
薬師寺は語る。「試合で勝った時、この野郎に勝った的なコメントを用意していた」と。しかし、「気がつくと、まったく違うことを言っていた。あとで自分でもびっくりした」と。
実際の薬師寺のインタビューは、非常に紳士的な内容のものだった。
大舌戦のあとの死闘。
辰吉が試合直後に薬師寺の心を揺るがした言葉は、
「いろいろ言って、すまんかった。今日はありがとう」だった。
心がジーンときた。恥ずかしながら、私は両眼が涙でいっぱいになってしまった。
辰吉は昨夜、薬師寺とともにタイトルマッチを観戦した。
試合後に、敗けた八重樫選手の控室を訪れ、「俺も何回もやってるから。家に帰って泣けばいいよ」とエールを送ったそうだ。
自分と戦い続けてきた男。いや、いまもなお戦い続けている男の語る「ことば」は、どこまでも深い。




