シートだけでも値千金!フィアット・ドゥカートを見にキャンピングカーショーに。 | 自動車コラムニスト中込健太郎のブログ『込氏のブログ』

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自動車ライターですが、最近はノリで買った積載車が忙しく、レッカー・搬送、搬入搬出、自動車何でも屋みたいになっております。自動車絡みだったりじゃなかったりの日々を綴ります。

フィアット・プロフェッショナルはフィアットのコマーシャルカーブランド。日本では輸入キャンピングカーのベース車両としてお馴染みなのが、フィアット・ドゥカート。これをこのほど正式に日本に輸入することになったそうです。この週末、ジャパンキャンピングカーショー2022の会場で展示されていると聞いて、ほぼこれを見るのが主目的でジャパンキャンピングカーショー2022に行ってきました!



一般にはデュカトと言われることが多いが、自動車評論家の武田公美さんに、「中込くん、イタリア語の読みからすると、ドゥカートというのが自然じゃないかな」と言われてからドゥカートと呼ぶようにしています😊ちなみにいただいたプレスリリースにはデュカトと書いてあります。



数年前、やはりこの場所に、参考出品で展示されたこともありましたが、その後なんとなくフェードアウト。思い返すと、トランスミッションが6速から9速オートマチックにアップデートされたりしたこともあったし、たしかにFCAの範疇だけでこれを型式認証受けて輸入するとなると荷が重かった面もあったのかもしれません。その後ステランティスグループになり、やはり同じモデルを既一緒に販売していたプジョー、シトロエンを擁するPSAと合流しましたから、このモデルの展開としても、日本での今後を考えて行く上でももっと本腰を入れて行くべき、という判断に至ったということもあったかもしれません。何しろこれが日本に導入される。これは個人的にも大歓迎ですし、もしかするとものすごい屋台骨の一つになるような気さえしています。そんなフィアット・ドゥカートについて、私にまとめておきたいと思います。


●ドゥカートはハイエースの牙城云々ではなく、この国になかなかない箱である。


キャンピングカーショーでのお披露目ということで、当然キャンピングカーのベースとしても国内ビルダー向けへの供給ももちろん視野に入れてのことだろう。というとハイエースの牙城を切り崩しにかかる的な論調に至りがちだが、実際は国内のキャンピングカー市場の拡大を開けてのこと。新たなクラス展開を推進する、と言ったことが当面の効果になるのではないでしょうか。


▼既に国産でもドゥカート・ベースのモデルは既に存在する。VANTECHのフラッグシップモデルV670だ。これはこれでシャーシにキャビンを載せたキャブコンバージョンモデルなのでこのほど輸入されるバンとは由来がやや異なるが。ただ、既に認知はされているモデル展開には期待したい。


というのも、ハイエースはハイエースで、ファンもいるし、ハイエースだからこそバンコンキャンピングカーにしたというユーザーはビルダーやユーザー寄りの動向からすると少なくないようです。ステルス性というか、メルセデスのEクラス、BMWの5シリーズで買える。国内ならアルファードが買える。その価格帯であまり派手ではない。たしかに大きいが見た目はハイエース。これが購入を後押しする面が少なくないのです。


だからドゥカートが入ってきたからと言ってすぐにこちらにそっくりシフトとはならないでしょう。


加えて、このドゥカート、国内に存在しないタイプの箱だということです。かつてエルフなどFFシャーシを試みたこともありましたが、日本では定着しませんでした。技術的なことでしょうか、時代のニーズに合わなかったのか。しかし欧州ではこれは一般的なタイプ。


最大積載量でも1450kg〜1525kgという仕様が日本向けの仕様では検討されているようです。この規模だと国産ではキャブコンの規模感に近い。FFシャーシで荷室部分が広くとれるとなると、継ぎ目の無いバンコンバージョンで今までのキャブ間的なモデルができる。断熱、剛性、走行安定性の点でもかなりメリットがあるので、脅かされる可能性は「カムロード」の方かもしれないというのが個人的な印象です。


全長は5413ミリの「L2」と5998ミリの「L3」の二種類が用意され、高さは2524ミリの「H2」と「L3」のみ2764ミリの「H3」が用意される。数多の仕様がある中でこのチョイスも日本のキャンピングカーのサイズに合わせてきたものと感じます。


少なくともハイエースよりも広いバンコンバージョンのカテゴリーが国産ビルダーさんのモデルで展開されて行くと楽しいなあと思います。回転シートで広々テーブルと常設ベッドはいいですが、マルチスペースに留めているドゥカートベースのモデルでは少ないですから。高い天井はいいですね。こういう空間に日本の職人さんの技でお部屋ができたらどんなに良いか。個人的には理想的なモデルはその中にありそうな気がしています。(この辺は使ってみないとわかりませんし、好みや考えもありますのでなんとも言えませんが。お金貯めなくてはいけませんね!)


室内高も十二分!収納や2段ベッドなどの可能性も広がる。さすがFFモデルだ。


低くても252センチオーバーとなると、自走式でも立体の駐車場などだと進入不可の場所も多いので注意は必要。コストコなどは高さがあるクルマの場合平置きのところを案内してくれるケースもあるようだ



270度開閉ドアパネルも予定では標準装備とのこと。解放部が広くなる上に邪魔にならぬよう折りたためるので便利。

国内で型式認証取ることもあり、簡単に脱着できる仕切りが設けられていたが、正式に輸入されるモデルでは、ここを解放、回転式の運転席・助手席が採用される模様。ボンネット分スペース効率が悪そうにも思えるドゥカート、実はこのシートもリビングスペースに使えるのでむしろ余すところのないスペースユーティリティが魅力だ。



●フィアット・プロフェッショナルのネットワークを構築!⇦これが今回相当大きなトピックだしFCAの気合を感じるポイント


実は今回、クルマもさることながら、一番大きなニュースだと感じたのは、このクルマを販売するためのネットワークを構築しようとしていることではないかと思っています。


展示車はブリザックを装着していた。FFコマーシャルビークルの雪道の走行性能も楽しみなところ。


前回、参考出品された時からFCAの方はからがとても大きなネックだと話しておられました。フィアット、アルファロメオ、アバルトなどを扱うディーラーさんは、整備ピットなども背の低いクルマ用のところも少なくないので、そのままでは扱えない場合も多いというのです。


ジープの拠点なら多少はいけるかもしれませんが、イプシロンのこともあるし、そこでサイズ的な理由だけで、扱うということはしないだろうし、とかも思いましたし。


そうなると、新たなネットワークが必要です。


今回のキャンピングカーショーの会場にも既に「バン」の選択肢として注目しているキャンピングカー関係ではない法人、企業の関係者も多数来場されたとのこと。


5.5メートル以内だと、最近では大型化している乗用車枠でも駐車できるところも多いし、長いバージョンでも6メートル以内なので、フェリーなど、さまざまな日本の道路事情を考慮した結果選定された仕様なのではないだろうか。また、この高さのクルマを入れてピット作業となると、たしかに既存のフィアットディーラーでは難しい。新ディーラーネットワーク展開も楽しみなところ!


自分もトラックに乗っていて思うのは、トラックは看板です。ハイエースやキャラバンでもいいけど、少し個性を発揮したい。とか、室内で作業ができる高さのあるバンは好都合!と言った新たなコマーシャルビークルの需要にも応える可能性がこのクルマにはあるのです!となると、部品もある程度の供給体制は構築される必要があるかもしれません。


確かにコマーシャルビークルは看板である。ちなみに温泉ソムリエでもある筆者は温泉好きもあってロゴを入れているが、これも作業中に声をかけられること一度や二度ではない。みんな見ているのだという実感は強い。


そうなると、既にステランティス系ブランドを展開している企業や、多数のディーラーを運営している企業が扱うケースや、スカニア などのような物流企業資本が参入するケース。また、地場のトラックディーラーの企業が扱うようになる?


また、キャンピングカー向け、ビルダー向けの対応のみならず、そうしたコマーシャルビークルとしてのユーザーへの荷台構築、架装の相談なども対応して行くことになるようで、そうなると海外の荷台メーカーの架装とかもゆくゆくは対応してもらえるのかしら?とかシャーシでの導入は?などさまざまな期待も膨らむというものです。


この辺りとても興味が湧くところです。


いずれにしても価格は469万円〜、9速オートマチック、180馬力仕様のマルチジェット3(ディーゼル)2.3リットルインタークーラーエンジンという仕様が日本向けで持ち込まれる模様。アルファロメオ・ジュリアの量販グレード「スプリント」並の値段でお仕事するクルマが選べるのは大変リーズナブルではないでしょうか。(あ、スプリント終売だ😭)


●シート代は300万円ですか?値千金のシートはそのままに!


今までは、輸入キャンピングカーで運転席に座るとなんて素晴らしいシートなのだ!と思わされることが多く、ベースのバンだとそこはなんかチープのになってしまうのかな?と思いきや、どうもそうではなさそうで安心しました。


この椅子、ディーラー展開されたらお近くの拠点でぜひ試して欲しい!


展示者は導入されるモデルとは異なりハンドブレーキ式のサイドブレーキながら、輸入されるモデルではエレクトロニックパーキングブレーキ(ボタン式の電磁ブレーキ)になる模様。


さらにこのシートが回転式になるとのこと。キャンピングカーはもちろん、利便性良さそうだ


日本に輸入されるモデルは全て9速オートマチックモデルのようだ。カタログ燃費でおよそ1リットルあたり10キロほど走るそうだから、経済性も高いモデルとなっている。


展示されていたクルマはサンプル輸入されたモデルで手動のサイドブレーキだったりはしましたが、基本は販売される仕様に準じているそうです!


これがまた素晴らしい!大ぶりで乗車にそのままとはいきませんがしっかり両側から支えられて、適度に反発!全体を支えるシートは長距離を走る大型トラックのそれのよう。


個人的には最も好きなクルマのシートです。それはどうもそのまま持ち込まれるとのこと。日本的に言えば「いいシートで商売繁盛!」まさにそんなシートです。


フィアットのクルマ作り、時に俯瞰するととても真面目だなあと思うのです。クルマをコストカットする時、槍玉に上がり、餌食になるのがシートではないかと思うのです。しかしこういうところはしっかり死守!健全だし、信頼できるところでもあるのです。


フィアット伝統の「オールフォワード」アーキテクチャー。日本の道路で試せるのは夏頃上陸、下半期デリバリー開始とのこと。実に楽しみです!


私のブログということで、個人の考えや期待、見解もありますので決定事項ではないこともあるでしょう。でも、あらゆるFCAのモデルの中でもベストセラーになるかも!そんな期待はできるのではないでしょうか。


いずれにせよ、ディーラー網展開も含めて今後も注目していきたいところです。しかし見れて良かった!そんなジャパンキャンピングカーショー2022でした!