絆~二十二話~
卒業から3日が経った。
クラスメイトたちは、大学や就職先を探していて。
陵たちは、家を継ぐから問題ないんだけど・・・。
病室から見える桜はまだ蕾で。
固い、けれどもすぐに優しい花を咲かすんだろうな。
「もうすぐ、桜が咲きますね」
あたしの心を読み取ったように言う陵。
うん、と言って外を見る。
空は雲ひとつ無い透き通った水色の空。
地面には菜の花や蓮華がポツリポツリと咲いていて。
こんな日、だったな。
未桜と嶺羽が出会った日も。
鮮明に蘇る記憶はきっと、来世になっても色褪せることは無いと思う。
この感情、風景、全てが・・・受け継がれる。
隣に座った陵の肩に、頭を置く。
目をつぶると聞こえる自分の心臓の音。
陵に守られている安心感。
・・・幸せ、だな。
ずっとずっと傍にいたい。
いくら願っても叶わないけれど。
切ない気持ちになるけど。
今を生きなきゃいけないもん。
自分の為に。
「未来さん・・・」
「ん~?」
「重大なことを言ってもいいですか・・・?」
「うん」
悪いことでも受け止めてあげる。
不安げな顔をした陵を見て、そう思った。
陵は、ベッドから降りてあたしを見上げるように屈伸の体制になる。
あたしの両手をぎゅっと握って、真っ直ぐ眼を見てくる。
「ー僕と結婚してください」
・・・え?
「今・・・何て言ったの?」
「未来さん、僕と・・・結婚してください。
そう、言いました・・・」
顔を赤く染めた陵は、本気なんだと伝わってきて。
目を逸らすことができずに、数秒間見詰め合った。
「・・・はい」
嬉しくて、嬉しくて。
たった二文字だけなのに、言ったら涙が出てきて。
「ごめ・・・っ
嬉しいから、ね。
凄い嬉しくて・・・っ」
ぎゅっとあたしを抱きしめた陵は震えていて。
陵の背中にあたしも手を回すと。
「こんな・・・どうしようもないくらい情けない僕ですけど・・・
未来さんの夫にしてもらえますか・・・?」
「あたしこそ・・・ガサツで女の子らしくないけど・・・。
神山未来になってもいいのかな・・・?」
そう言うと、未来さんは誰よりも素敵な女性ですよ、って言われて。
また涙が出てきて。
「陵こそ、世界中で誰よりカッコイイんだから!
自信もってよね・・・!」
はい、とあたしのおでこに自分のおでこをくっつけて。
あたしたちは、お互い幸せそうな表情で笑っていた。
「式はまだ出来ませんが・・・。
籍は入れたいので」
そう言って紙を取り出す陵。
それは結婚届で。
もう、あたしの名前を書くだけになっていた。
「・・・これ、あたしが出していい?」
「え?
僕が出してきますよ?」
「陵の奥さんになれるんだって思ったら、手放したくなくて。
後でちゃんと、あたしが責任を持って出すから・・・
ダメ・・・?」
上目遣いで陵を見ると。
パッと顔を逸らされた。
でも、耳まで真っ赤だから。
「っズルイです・・・っ/////
分かりました。
でも、なるべく早く出してくださいね?」
「うん!/////」
あたし、今世界で一番幸せだよ。
でも、出会って3年だもんね。
ふふ。
3年前は思いもしなかったよね。
3年後には結婚するってこと。
そして・・・病気になるなんて。
でも幸せだから、いい。
神様・・・
あたしにもう少しだけ時間をください。
大好きな人と、一秒でも長く傍にいたいから・・・。