クラブ職人の徒然草~2 -203ページ目

The MYSTERY 削り出しパター



The MYSTERY(ザ・ミステリー) はオーダークラブ専用パーツの老舗メーカー。

ヘッド、シャフトの性能はもちろん、数値管理の精度が高く、当工房でも主力ブランドの一つです。

ステンレスインゴットからCNC削り出しのパターが新発売になりました。

いわゆるジャーマン・ステンレスと呼ばれる素材です。

裏面には3g+3gのビス。これで標準的なヘッドウエイトで、10gのオプションも用意されています。

フェイス面のミーリングは角度によってmysteryのロゴが浮かび上がる仕掛。

これも実はフェイスの平面精度の高さの証明でもあります。

シャフトは3Dのスチール。ライ角はほぼ70度に設定。

座りが良く、ターゲットに構えやすいのがアドレスした第一印象。

ストロークのスムーズさに驚いた第二印象。


本格的なデリバリーにはもう少し時間が掛かるそうですが、宜しければ是非試打してみて下さいませ!

ご同業、お気を付け召されよ!我々ウソツキと思われてますよ!

お客様への請求金額の決め方はお店によりそれぞれです。

当工房の場合、部材費は部材費として頂き、作業工賃は手の掛かった分だけ(施した分だけ)頂く。
と決めております。

それが幾らになろうが(沢山だろうが少なかろうが)フェアだと思うからです。
「そんなに手も掛かってないけど、まぁ決めてる金額やからもろとこか」はお客様に対して不誠実だと思うし、
「こんだけ手が掛かったけど、まぁ決めてる金額やからしゃぁないな」は自分の仕事に対して矜持が無いと思います。

だから部材費、工賃の明細は事細かに明細を出してご請求することになります。

先日、一見さんで来られた若い男性、アイアンの事で色々話しているうちにフルチューンではないにしろロフト、ライの調整まではやりましょう、という事になり、
グリップ代などと一緒にお支払いして行きます。と言われたので

「最大で@2000×7本ですけど、やらなくてよい番手もあるかもしれませんので出来上がってから頂きます」と申し上げると、

ちょっと驚愕のお答え・・・

「そんなん、やらんでもやったて言うて取ったら宜しいやん。どこの店でもそうしてるでしょ!?」

ご同業のみなさん、僕ら工房はどうやらこんな目で見られてるのが一般的認識みたいですよ。

もちろんお得意様、リピーターになって下さっているお客様方には正しい理解と認識を頂いていると信じていますが。

襟を正して仕事に励もうと思った

今日この頃です。

アイアンクラブのヘッド重量の話

お客様から持ち込まれた某M社製の特注アイアンセット。

米国内での別注だそうですが。

このメーカーのヘッドはクラフト的に見れば良く出来ていて(実は良く出来ているヘッドだったんだ、ということが後で分かる。が正しいです)、

お預かりした時点でロフト、ライ、フェイスプログレッション(F.P)、ソール角の揃い・流れがかなり悪いものでも、一旦分解して綺麗に組み直してやると

組み付けだけの時点で上記のスペックが綺麗に揃い始め、ネックの曲げ調整でロフト、ライを整えてやると下手なコンポーネンツブランドよりはるかに綺麗に揃ったセットに仕上がります。

つまり、後になって分かる、というわけ。

ただ一つのスペックを除いて。

それがヘッド重量です。


ゴルフクラブの長さというのは誰が決めたわけでもなく、
「おおよそ21度くらいのロフトを持つ番手(一般的には3番アイアン)なら39.0インチの長さが最も効率的*に結果を生み出す。」
と人類ゴルフ史が見つけ出した結論です。グローバルスタンダードなんです。

*効率的に、というのはロフト(=打ち出し角とスピン量)と長さ(=ヘッド周速)には密接な関係性があり、短すぎればスピン量不足で上がらず距離不足、長すぎれば吹け上がるばっかりで前に飛ぶ効率が下がる、その最も効率的な関係がこれだろう、ということです。

そして、どのくらいヘッドが利いているとタイミング良く打ちやすいか(=スイングバランスという指標が一般的に用いられてきました)、はシャフトの重さ・硬さにより、また使う人により異なりますが、

一つの目安として「一般的な男性にはD-1.0~2.0が良いようだ」との意見にはあまり異論はないと思います。


標準的な50gくらいの重さのグリップで、男性用に標準的な128gのシャフトを付けて、標準長さんお39.0インチに仕上げたときに、天秤ばかりのスイングバランス計でD-1.0~2.0になるには自ずとヘッドが何gあればよいか、

が出てきます。それが243gであり、この3番以下、ロフトを3~4度ずつ寝かせていくごとに長さを0.5インチ短くしていく時に以下の番手が3番と同じタイミングで打てるバランスになるには7gずつ重くしていくと上手く行く。

というのがアイアンセットの基本設計です。#3=243g、#4=250g、#5=257g、・・・・・・・。
標準重量と呼んで差支えないでしょう。

アイアンヘッドはクラブに組み立てたときにフェイスのほぼ中央の下部にスイートスポット(設計通りのパフォーマンスを最も発揮できる打点)が設計されているものがほとんどであり、まぁ基本でしょうから、設計された通りの形状に作られて、かつ上記の重量を持っていないと、折角良い設計の下に生まれたヘッドであってもクラブにした時にイレギュラーに長い(または短い)か、イレギュラーにヘッドの利き感が無い(または過剰)なクラブになってしまうことになります。


冒頭の某M社製アイアンを分解し、ヘッド重量を計測しました。
実測値と標準値(三浦技研の一般値)を並記すると
#5(257g) 実測248.5g 差違▲8.5g
#6(264g)   256.8g   ▲7.2g
#7(271g)   266.5g   ▲4.5g
#8(278g)   273.8g   ▲4.2g
#9(286g)   281.6g   ▲4.4g
PW(294g)   291.8g   ▲2.2g

アイアンの場合、ヘッド重量2gでスイングバランス1.0pt変化しますから7番はD-2.0欲しいところがD-0.0くらいしか出ない、
5番、6番はまるまる1番手分軽いわけです。

では、このM社、ヘッドに鉛も貼らずにどうやってカタログにあるD-1.0とか2.0のバランスに仕上げたのか・・・

答はネック内(正確にはネックに装着されたシャフトの内側)への重量物挿入です。

ヘッドのスイートスポット(≒重心点)から最も離れた位置にそれだけの荷重をして、元々の設計どおりの重量バランスを保てるはずもなく、案の定こういう組み立てのクラブはシャフトの重量感、硬度感が全く変わってしまい、先ずもって振りにくい、すなわち芯に当たりにくいクラブに・・・

最初の設計段階ではなく、最後の組み立て段階で生まれ変わらされている、ということです。


このクラブ、分解~再組立て~調整を施される「フルチューンナップ」という作業が間もなく完了します。

ネックの中からほじくり出した重量物分の重さはどうやって荷重するのか?
バックフェイスのスイートスポット周辺にバランスよく鉛テープを貼ることで「自然加重」した形にします。

7g分の鉛テープですから、多分どこの何モデルのクラブか分からんようになるでしょうね。

まぁ、裏見て構えませんし、裏見ながら打ちませんから。


俺が持ってきたあのクラブとは思われへん!!という、これまで幾度となくお客様から頂いたこの言葉が聞けるよう、頑張って仕上げます。