ジュニア時代
小さな身体で筋力もない私は
飛距離に苦しんだ。
走っても鍛えても飛ばない。
当時からプロレベルだった同い年の他校の実力者達とは
40Yも50Yも離されていた。
その差をなんとか埋めようと
筋トレに励み
走りこみ
唯一の武器だった柔軟性を活かし
身体を使って振ることを学び
その差を1Yでも埋めようと
ドローヒッターになることを決めて
ドロー一本で腕を磨いてきた。
その癖は社会に出ても消えることはなく
「飛ぶけど曲がる」という弊害に苦しむことに。
ドローがかからなければ右にすっぽかし
身体が止まればチーピン。
大事な場面になればなるほど
そのミスはどっちも出て
自滅。
ゴルフショップに勤めるようになり
ゴルファーの悩みを聞く機会が増え
その悩みを道具で解決させてやりたいと
一生懸命になった。
しかし
道具で解決などできるわけがない。
ゴルフはクラブでやるのではなく
自分の身体でやるもの。
道具はただ
ボールと身体を繋ぐ「脇役」に過ぎないということを
道具を売る立場となって
道具を作るようになって
やっと気付けた。
工房を預かり
道具を学び
道具とは何かを身を持って学んだ。
知らないことも多々あったが
それらはすべて
結果に直結するものではないと学んだ。
結果を生み出すための
ひとつのプロセスでしかない。
道具は
グリップの握り方と同じ。
変えれば何かが変わる。
でもそれを変えたからといって
結果が変わるとは限らない。
道具は所詮
プロセスの一部でしかないのだ。
道具は大事だが
道具では上達できないことを
いやというほど学んだ。
お客様の悩みを解決できないジレンマを繰り返し
やっと大事なことに気付けた。
まずは自分のスイングを
自分のマネジメントを
自分のゴルフを見直すことからスタート。
高価なビデオを購入して
自分のスイングを必死でチェック。
来る日も来る日も
チェックチェックチェック。
プロと比較
理論と比較
理屈と比較
なぜドローを打てるようになったのか
なぜドローしか出ないのか
一生懸命勉強した。
理屈では理解できても
その理屈や物理が
自分のスイングや弾道と
自分の飛距離や球質と
それがどう絡んでくるのか知らなかった。
今はすぐわかる。
アドレスを見ただけでだいたいの球筋が読めるようになった。
テークバックだけで弾道を予見できるようになった。
何年も自分のスイングと向き合い
何年も人のスイングと向き合い
それがゴルフやプレースタイルに
それが弾道やスコアにどう影響するのか
自然と脳が理解できるようになった。
長い時間と努力を積み重ねて
やっと理屈が理解できるようになった。
それから
自分の改造に着手。
グリップから
ポスチャーから
アライメントから
ひとつひとつ
コツコツと。
30年も前の若い頃は
頭で理解などする必要はなかった。
ドローを打つんだ!
という意識だけでドローが打てるようになれた。
大人になると
それができなくなる。
蜘蛛を捕まえて足を持って
尻尾から糸を引っ張り出して自分の指に巻いたり
ヘビを平気で捕まえたり
オオスズメバチに石をぶつけて
そばにいるクワガタやカブト虫を獲ったりと
今
それをやれと言われても絶対にできない(笑
それをしたらどうなるかという
先の事を考えることもなく
躊躇なくそれをやれた
あの頃。
今は
先のことをまず考える。
これをしたらどうなるか?
あれを変えたらどうなるか?
いつしか
やる前から
答えを求めるようになった。
その大人な考え方が
大人が上達しない
大きな原因のひとつだと自覚した。
それから
私の指導は
「私より下手なんだから、黙って私の言うとおりにやりなさい」
「やってから、継続してから 言いたい事があったら言いなさい」
そういう指導に切り替えた。
私より年上の大先輩に対しても
10歳の子を指導するのと同じ(笑
それが嫌なら
私から教わらなければいい。
頭で理解しないと
できないなら
あなたは一生できないから。
なぜなら
あなたより高いレベルのゴルフは
あなたの想像もできないことばかりだから。
あなたが理解できることはすべて
所詮そのレベルでしかないのだ。
わかった風なことを言う人間を私は
「頭でっかち」と呼んでる。
100叩くゴルファーがどんなに偉そうに語っても
それはあくまで100を叩く次元の理屈。
それを知った。
学んだ。
私は
自分のスコアを出す為の努力はたくさんしてきても
人の実力を上げる努力など何もしてきていなかった。
自分を変えることもできない人が
他人を変えることなど絶対にできない。
それに気付いた。
フェードを打とう。
68を出したドローを捨てて
フェードを持ち球にしよう。
凝り固まった頭を柔らかくすることから
固結びされたヒモを少しずつ解くことからスタート。
極端なインアウトの軌道をスイングビデオで知り
愕然とする。
グリップが極端なウィークであることを知り
唖然とする。
アドレスで左肩が開いていること
極端にインに上げること
テークバックで右ひじが左腕から離れること
トップで左肩の入りが浅いこと
ダウンスイングで右脇が開くこと
インパクトで状態が起き上がること
前傾が最後まで維持できていないこと
左に振り切れていないこと
毎回軌道がバラバラなこと
アプローチからドライバーまで共通して
それらの悪癖があることを知り
失望した。
目を背けたい現実だった。
これじゃ
フェードなんて夢のまた夢。
どんなにスライスさせようとしても
真っ直ぐにしかならない(笑
そうか。
私は
”どスライス”を必死で打とうとして
やっと軌道が真っ直ぐになるんだ。
意識と
現実の大きな大きなギャップ。
長い長い努力は
そこからスタート。
努力は
気付いてから始まる。
そこからが大変だった。
何年もかけて
毎日のように努力して
怪我もして
病気も患って
何度も何度も挫折を繰り返して
ようやく
ようやくフェードが打てるようになった。
長かった。
本当に長かった。
飛距離は落ちたけど
チーピンは撲滅した。
飛距離は落ちたけど
F/K率は格段に上がった。
飛距離が落ちた分
FWやハイブリッド
アイアンショットの精度が上がった。
飛距離を落したことで
ショートゲームの重要性を再認識できた。
フェードに変えたことで
ゴルフが大きく変わった。
シャンクがなくなった。
球が止まるようになった。
ライン出しが容易になった。
振り切れるようになった。
前傾維持の大切さに気付けた。
見た目のスイングはそんなに変わっていない。
決して格好いいスイングではないし
豪快でも美しくも無い。
変わったのは
頭の中。
理屈や見た目に左右されない
影響されない脳になった。
まだまだできていないことも多々ある。
これからまだまだ
課題は盛りだくさん。
染み付いた悪癖は
そうやすやすと消えてはくれない。
ちょっと油断するとすぐ結果に大きく影響する。
72も出れば
85も叩く。
ドライバーや3Wは5年前のモデルだし
5Wなんて10年近く前のモデルだし
アイアンなんて多分誰も知らないクラブだし(笑
パターなんて数十年前の
ボロボロのピンのアンサーだ(笑
そんなポンコツで
最新モデルのクラブや最新シャフトを自慢し
理屈を語るヤツを負かすのが
私より飛ぶヤツを負かすのが
私のゴルフの楽しみでもあります(笑
できるなら
パーシモンと糸巻きボールで
見た目と理屈だけのヤツを負かしたい(笑
見た目を繕うのではなく
持ち物を自慢するのではなく
私のゴルフスタイルとして
”いつも中身で勝負したい”
そう思えるようになれた。
フェードはこんな風に
私の多くを変えてくれた。
自分だけでなく
指導にも多大な影響を受けた。
スライスに悩む人は
どんな順序で
何を変えればいいのか
フックはどうすればいいのか
シャンクは
チーピンは
トップやダフりは
何を変えるべきか
それぞれの明確な答えがしっかりと見えるようになった。
それはあくまでも私だけの答え。
私にしか理解できない感覚。
だから他人には理解などできない。
自分で気付けなければ
自分で変えようと思わなければ
何も変わらない。
私自身
膨大な努力と時間を費やした。
それより短期間に変えられることは不可能だと
自分を基準に考える。
それ以外の事は知らないから。
私が教えられるのは
それだけだと思う。
距離の長い
狭いホールでのティショット。
左のOBギリギリの林の上から
フェアウェイの真ん中に戻ってくる
その弾道を見ながらティを拾う瞬間が
上りの1mのパットをきっち沈められたときと同じように
一番幸せなとき。
その結果に自惚れているのではない。
そのどちらも
今までの努力の結晶だと思える時間だから。
勇気を出して左へ振り切った自分を
褒めてやれる唯一の時間だから。
イップスに悩んだあの頃を
懐かしむことすらできる時間だから。
ダメだった自分を
変えられたことを自覚できる
わずかな時間だから。
知った風な自分を戒め
わかった風な自分を改め
自分の実力を3割増ししていた
ええ格好しぃな自分を恥じること。
意識と現実のギャップを埋めること。
ゴルフはそこから変わるものだということ
忘れないよう
記録。