マクロスΔを神話劇・神話学劇として見れば……個人的にはチャレンジ精神に富んだ冒険作品
マクロスFよりもはるかに驚きが多かった……初めて見たタイプの神話系……
そもそも北欧神話の黄金林檎女神イズンがメインヒロインな作品は初めて見たかも🍏
それに最近気付いたことだけど、ギリシャ神話の黄金林檎物語のヘスペリデス歌妖精と蛇女ゴルゴーン要素も同時進行という驚くべき凝った展開
しかもそれらが無関係ではなくて比較神話学や系統神話学や歴史学に基づいた組み合わせ
ケイオス・統合軍とウィンダミア王国の戦いも、同一英雄の名を冠した“ドイツ名ジークフリードとノルウェー名シグル=バレンツの戦い”に見られるような、大陸ゲルマン・ドイツとヴァイキング・ノルウェーの北欧神話を巡るオリジナル論争……ドイツ人とノルウェー人のどちらが北欧神話の神々の子孫なのかという現実の学術論争をモデルにしたもの……
まさに……神話学劇
ちょっと凄い作品だったと思う
女神イズン (1858) by Herman Wilhelm Bissen
ただ……そうであるが故の困難さがあったのも事実だと思う……
マクロスFに採用されている英雄ジークフリードを中心としたメイン神話・楽劇物語は過去数百年の間に多くの二次創作が作られるほどの定番演目……例えばスター・ウォーズやロード・オブ・ザ・リング……なので元々多くの演劇表現がこれまでにも試されてきて、娯楽神話劇として神話特有の理不尽さを和らげ、盛り上げやすい要素も多かったりする……
一方、Δシリーズは娯楽神話劇として表現難易度が高い題材……失楽園や処女懐胎のような信仰思想の根幹にかかわる教導的題材やイズン誘拐・国生み神話などの劇画化の例が少ない題材……他のクリエイターが計画しては断念するような難関に数多く挑戦しているかも🍎
そしてその表現方法についても実験的なチャレンジを敢行……ある意味コナレテいない部分も多々あって……しかも導入されている神話数も多い
それらが一般視聴者に不合理感やテンポの悪さを感じさせる原因になったのかも🍎
あと感じたのは後半部分で何らかの路線変更があったのかも……
特にフレイアに関して……18話あたりから重要な部分がカットされてるような気がする……フレイアの覚醒もあっさりスルーされてるし……恐らくその部分が将来のサブユニバース編で効いてくるかも🍎
とにかく14話以降、小説版もコミック版も無くなってしまったわけだから予定変更があったのは間違いないとは思う…
そもそも……
マクロス公式は“神話典拠”について明言したことが無い
……女神フィギュア出したりして言いたくないけど察して欲しい的な態度に終始している訳で……
でもそれは神話に馴染みのない大多数の視聴者に理不尽満載の神話をベースにした物語を見せるということ……しかも神話満載の将来作品に繋ぐための状況説明・伏線設定に多くの時間を費やす……さらには多くの視聴者が伏線そのものに気付くことが無い……
ヴァールシンドローム問題やハヤテの暴走など大事なことはほとんど26話内で完結せず……
ロイドとマクロスFの電脳貴族の目的がほぼ同じだったというのも、ロイドや電脳貴族やプロトデビルンをラスボスとみなすか、あくまでも彼らは複数のサブユニバース勢力やプロトカルチャー残存勢力に操られた駒に過ぎないという神話知識前提の視点で見る場合で大きく感じ方が変わってくる部分ではあると思う……
あと絶対LIVE!!!!!!が終わった後も多くの伏線が未回収状態……おそらく将来のサブユニバース物語につながるはずだけど……とにかく伏線探しそのものを妄想して楽しめる神話好きはともかく、TV版だけで完結していない部分が多く神話好き以外には理解できない表現があることは視聴者に消化不良感を抱かせた原因になったかも🍎
情報量の多いアカデミックな要素を娯楽作品に反映させる困難さ……全く知らない国の歴史劇・時代劇が多くの人にとってイマイチ楽しめないのと似た状況になる可能性も否定できないかも
女子2男子1の三角関係は……Fみたく肉食女子2と鈍い男・初心な男が定番でやっぱり盛り上がる……
逆にΔみたいな弱気女子2人の譲り合いはバトルにならないから傍から見てる分には面白くない……
でも……本当のところは……
三角関係を深化できない神話劇的制約があった
……ということも大きいかも
フレイアは“フレイヤ”じゃなくて“フレイア”と名付けられたときから……徹底した林檎の演出も相まって……サーガ上の役割として聖母マリアとして「聖母処女懐胎」の主役を演じることは決まっていたと思うんだよね
さらに絶対LIVE!!!!!!!でのレイブングラス村・林檎畑でハヤフレが演じた旧約聖書「失楽園」……むしろミルトンの「失楽園」を意識かも……これも難易度が高い神話題材であり、キーポイントになるのは……
フレイアの処女性
そのフレイアの特性を担保するために……
「劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!!」のレイブングラス村林檎園で
「禁断の林檎」を齧るまではハヤフレ絶対恋愛禁止!!!!!!
これって三角関係以前の問題だよね
だからテレビアニメや「劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ」段階で……
ハヤフレを子供の恋以上の関係にすることはできなかった制約があったはず……
それが「劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ」でハヤフレ恋愛要素がバッサリ切られてハヤテも主役じゃなくなってしまうという原因のひとつかも
そんなハヤフレも絶対LIVE!!!!!!で「失楽園」を経て「禁断の林檎」も「大胆に抱いたっていいね」で経験済みなので……むしろこれから盛大に三角関係……もしかすると四角以上の争奪戦をブチかましてくれると期待……サブユニバースで……
フレイア・ミラージュ・星の子(闇フレイア)・ランカ・ミンメイあたりがハヤテ争奪戦に加わっても不思議ではない……
神話上の必然……フレイアを裏切るハヤテ・シェリルを裏切るアルト……復讐の龍と化す二人のヒロイン女神……南座ライブのトークにあった安珍清姫伝説が展開されそうな気が……すっごく期待してます🐍
あ~そう言えば林檎園での「失楽園」に……
イブ役フレイアをたぶらかす「蛇=堕天使・サタン」
……が出てこなくて気になってたけど……前の記事でフレイアが蛇女ゴルゴーン姉妹のひとりである可能性が高まったということは……
フレイアは原初女性イブと蛇(サタン)兼任
林檎園で両手に脱いだブーツを持って科(しな)を作ってバックステップする素足のフレイアが、フレイアにしては妖艶な表現だったので怪しいとは思ってたけど、あれは“蛇”と一体化したイブ……ルンは蛇の頭……を表わしていたのかも?
ウィンダミア人の存在そのものが「蛇の人」に相当する訳で「鳥の人」「魚の人」といったマクロスゼロとの絡みも期待できるかも
あとフレイアという名前にも仕掛けがあるように思う🤔
フレイアの英語表記は“Freyja”だけど……
北欧女神“Freyja”は金曜日・Fridayの語源
……なんだよね……もちろん北欧神話女神フリッグ“Frigg”説もあるけど、そもそもフレイアとフリッグは同一女神説もあるぐらい神話が似てるから恐らく……
フレイア→金星・明けの明星の女神
つまりローマ神話ヴィーナスやギリシャ神話アプロディーテ……
さらに遡るとメソポタミア神話イシュタルやシュメール神話イナンナにルーツを持つ金星女神の系譜のはず……
金星と言えばもう一人重要な存在がある……女神とは言えないけど……聖書の天使には性別が無い……
実は聖書・コーランにおける堕天使ルシフェルも名前の語源は“金星”なんだよね
……つまり……
フレイア→堕天使ルシフェル→サタン・邪悪な蛇
失楽園のイブ
こんな風に神話伏線を楽しめるならマクロスシリーズは一層面白いものになると思うよ🍎