弟のもう一つの口癖は「馬鹿にしやがって」である。


弟には統合失調症の典型的な症状の1つである妄想癖があるため、現実に全く起きていないことであっても、それが実際にあったかのように脳内でエピソードを作り出してしまう。


家族からすれば、自分の身に全く身に覚えのないことをある日突然弟から、あるいは弟の代弁者としての母親から繰り返し言われて叱責されたり攻撃される、ということである。


ちなみに、弟は、自分で直接周囲の人間を攻撃することもあるが、自分の手駒として、伝令として母を利用することもよくある。


弟の妄想の中で生じてきたエピソードである以上、こちらは全く身に覚えがない。


いわば自分が見た【夢の中】で他人からひどいことをされたからと言って、現実世界の相手に対して謝罪や慰謝料を求めるのと同じである。


今までに何度か書いているが、母親は弟を統合失調症と認めず、弟の言い分をかなり信じているため、弟の片棒を担ぐことも多い。


統合失調症患者本人を家族内で孤立させることも対応としては良くないとは思うが、母のように患者の言い分を鵜呑みにして、家族を含めた周囲の人間に、患者の言い分に沿った現実を逆に作り出すように要求するのはさらに問題である。


統合失調症患者の言い分に合わせて、周囲の人間が現実を作り出していくことは、患者自身の逸脱行動を肯定し、患者の異常行動を促進してしまうように感じる。


一方で、それに同調するように求められる周囲の人間は、度重なる理不尽な要求と自分に対するディスリスペクト、湧き上がってくる否定的観念で徐々に精神的におかしくなってくる。


統合失調症の患者の存在、さらに患者の言動を強烈に肯定する家族の存在、それらがその他の家族を徐々に精神的に追い詰め、心身を蝕んでいってしまう。


患者とは、できれば家族は物理的に距離を置くか、意識的に関わらないように精神面で距離を置き、客観的な目線を失わないことが必要である。