マイケル・ジャクソン?

俺はロッカーだぜ!?
そんな甘っちょろいもん、聴いてられっかよ。
そもそもちゃんとアルバムを通して聴いたこともない。
なんというか、動きがやかましいんだよな、マイケル・ジャクソン。
ちょこちょこチャカチャカした動きがやたら多くって。
音楽もそうだ。無駄な飾りが多すぎる。
効果音っぽいのとか、必然性を感じない轟音ギターが突然鳴ったりとか、いきなり奇声を発したりとか。
 
でもね、この曲は好きだな。
“Heal The World”。
ベタな展開の曲だよ。
サビでコーラスが入って、だんだん盛り上げっていって、最後は大合唱、的な。
あざとい。いかにも狙ってる感じ。
メッセージも陳腐だ。
「世界を癒そう」だなんて、何様?そもそも癒せるもの?神様目線?
だいたい、癒されるとかヒーリングだとか、そういうのって好きじゃない。そもそも癒されようのない世界で生きていくんだっていう覚悟からロックンロールは始まっているんだ。
甘っちょろいんだよ。
でも、この曲を聴いていると、なんか泣けてくる。
涙がじわじわと溢れてきて止まらなくなる。
何度でも聴きたくなる。
聴き終わると、なぜか心が洗われたような気がする。
 
  There's a place in your heart
  and I know that it is love
  and this place could much brighter than tomorrow
  And if you really try find there's no need to cry
  In this place you'll feel there's no hurt or sorrow
  There are ways to get there
  if you care enough for the living
  Make a little space
  Make a better place

  心の中にひとつの場所がある
  それは愛
  その場所は明日をより明るくしてくれる
  もし本当に向き合うことができれば
  泣き叫ぶこともない
  痛みや悲しみを感じることもない
  そこへ至る道はあるよ
  生きることをもっと大事にすれば
  小さな場所を作ろう
  よりよい場所を

青臭いメッセージも、マイケルの声で歌われると素直に聴ける気がする。
この人はほんとうに、世界中の人々が、癒され、平和に暮らせることを願っていたんだと思う。ほんとうにそう感じられる。
立場の弱い人に威圧的に振る舞ったり、人の揚げ足をとっては馬鹿にしたり、誠実さのかけらもなく自分に都合のいいように嘘を重ねて事実を改ざんしたり、人々の暮らしを駆け引きの道具にしたり、爆弾を作って脅しをかけたり、よその国に爆弾を落としたりている偉い人たちに聞かせてやりたいよな。
森友・加計問題、公文書改ざん、防衛省の日報、財務官僚のセクハラ、或いはアメリカ大統領の振る舞いにしても隣の国の国家主席にしても、誤魔化しても隠しきれる、力で相手を黙らせることができる、と思っていることがそもそも大きな問題。時代錯誤。
そんなことを論じたいわけではないけれど、マイケルが歌う愛や人が生きることへの誠実な向き合い方がひとつも感じられないんだよな。
 
 
マイケルのバラードはいいな。
心が洗われる。
どーなってんの?だいじょうぶかよ?と思ってしまうようなことがいろいろある世の中だからこそ、心をクリアーにして鎮めておくことが必要だ。
マイケルのバラードはいいよ。
“You're Not Alone”もしみるし、“I Just Can't Stop Loving You”もぐっとくる。それから、ジャクソンズのアルバムに入っていた“Be Not Always”も泣ける。
「オフ・ザ・ウォール」の“She's Out Of My Life”も「スリラー」の“Human Nature”もいいし、「BAD」の“Man In The Mirror”にも世界を憂い何かを改めたいと願う気持ちが歌われている。

って、なんだかんだとマイケル、けっこう聴いてるわけね(笑)。