イスラム復権がもたらした中東の政情不安 【加瀬英明氏(史実を世界に発信する会)のコラム】 | My Flame

My Flame

ブログの説明を入力します。

■「加瀬英明のコラム」メールマガジン

---
送信日 : 2013/09/11 (Wed)
題 名 : イスラム復権がもたらした 中東の政情不安

 アラブ世界の最大の国家であるエジプトで、60年も続いた軍部独裁によったムバラク政権が2年前に倒され、5000年にわたるエジプト史ではじめて自由な選挙が行われて、巨大なイスラム政治勢力であるムスリム同胞団が勝って、モルシ大統領が1年前に就任したが、7月に軍がモルシ大統領を拘束罷免して、無名の最高裁判事を暫定大統領として据えた。

 エジプトでは全国にわたって、ムスリム同胞団が激しい抗議デモを行って、多くの死者がでている。エジプトが内戦に陥ることになるとも、危惧されている。

 もっとも、7世紀に教祖モハメドによってイスラム教が誕生して以来、これまで政教の抗争が絶えず繰り返されてきた。

 イスラム教はもともと政教が一致していて、戒律(シアーリア)に忠実に日常生活を営まなければならない。シアーリアはアラビア語で、水に至る道を意味しており、唯一つの正しい道である。

 イスラム史を通じて、権力者がしばしば僧侶や、信仰者によって堕落しているとみられ、俗と聖が衝突してきたから、古い古い話だ。

 今年1月に、アルジェリアの石化プラントをイスラム過激派が占領して、10人のプラントで働いていた邦人が殺害された。

 アルジェリアも独裁政権のもとにあったが、1991年にはじめて自由な選挙が行われて、イスラム原理主義勢力のイスラム救国戦線が圧勝した。すると、軍がクーデターによって選挙を無効にして、実権を握った。今回、エジプトで起ったことと、極似している。その後、政府軍とイスラム勢力の間で内戦が戦われ、今日まで10万人以上の死者が発生した。

 エジプト、アルジェリア、チュニジア、リビア、イラク、シリアをはじめとする諸国では、20世紀に入ると、世俗的な政権が登場して、イスラム教を近代化を妨げる後進的な枷(かせ)とみなして、イスラム離れを進めた。

 エジプトでは1952年に、ナセル中佐が率いる自由将校団が、クーデターによって王制を倒し、1928年に生まれたムスリム同胞団を、非合法化した。モルシ前大統領も永年にわたって、塀のなかにいた。

 イスラム離れの先鞭を切ったのが、トルコだった。ケマル・アタチュルク将軍が帝制を倒して、トルコ共和国を建設して、「シアーリア」に代わる近代民法を制定し、学校で『コーラン』を教えるのを禁じるなど、強権をもってイスラム離れを進めた。

 2年後に、イランでレザー・シャーが帝制を倒して、自ら王朝をひらき、メッカへの巡礼を禁じるなど、同じように上から非イスラム化を強要した。ところが、1979年にホメイニ革命によって、2代目のシャー(皇帝)が追放され、イスラム原理主義の国となって、今日に至っている。

 1970年代に入ると突然のように、イスラム世界においてイスラム教が力を回復して、今日のイスラム復権時代がおとずれた。エジプトの軍事独裁者も、イラクのサダム・フセイン大統領も、敬虔なイスラム教徒を装うようになった。

 イスラム教が力を盛り返した。いったい、何が起ったのだろうか?

 70年代に、イスラム産油諸国が、原油価格を高騰させて、2回にわたって石油危機が先進諸国を直撃した。

 それまでイスラム圏が脱イスラム化をはかったのは、西洋に対する劣等感だったが、石油ショックを境にして、欧米、日本の先進諸国の大統領、首相、経済人が中東を油乞いのために訪れて、拝跪するようになると、イスラム圏は自信を取り戻して、イスラム教が息を吹き返した。

 今日のイスラム圏の混乱は、経済的快楽を求めて石油を浪費してきた、先進諸国の飽くなき欲望がもたらした。先進諸国が快楽をみたすために、かつて最貧国だった中国から、中華大帝国の再興を夢みて、軍拡に狂奔する妖怪を生みだしたのと、同じことだ。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
加瀬英明事務所
お問い合わせメール: info@kase-hideaki.co.jp
ホームページURL: http://www.kase-hideaki.co.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■