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■ 「警官殴り」が多発する中国 忍び寄る「乱世」と「下克上」
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今月、中国では、警察官が主役となる「珍事件」が数多く発生している。
たとえば3日、河南省太康県の塘坊村という村で、村の「違法建築」の調査にやってきた制服警官のひとりが、当事者の村民から暴行を受けた上、丸1日以上「拘禁」された事件が起きた。
昔から「犬が人を噛(か)んでもニュースにならないが、人が犬を噛んだらニュースとなる」との言い伝えがある。
この事件の場合、本来なら人を捕まえるのを仕事とする警官が逆に村民によって拘禁されてしまうとは、まさに大ニュースに値するものだ。
もちろん今の中国では、この程度のもめ事は日常的なもので、もはや「珍事」でもなくなっている。
10日には四川省成都市で、中学校の女性教師が街の真ん中で警官を殴る事件が起きた。
電気自動車に乗った姉が交通違反したことで警察に止められたところ、同乗の女性教師は車から降りるや有無を言わせずに警官に平手打ちを数発も食わせた。
翌11日、今度は福建省廈門市内で、乗用車の猛女が無免許運転の上、クラクションをむやみに鳴らしたことで警官から取り調べられると、女は2人の警官を相手に果敢な「戦い」を挑んだ。
彼女はすべての手足を使って暴行を加え、警察官に股間蹴りの「必殺法」まで使ったという。
同じ11日の晩、広東省東莞市では100人余のチンピラが乱闘しているところに5人の警官がパトカーでやってくると、チンピラたちは直ちに乱闘をやめてパトカーを包囲。
警官たちをつまみ出して暴行を加えた上、パトカーを引っくり返して破壊した、と地元の新聞がその一部始終を詳しく報じている。
そして2日後の13日、成都市内で発生した車の盗難事件を調査にきた警察官が、調査された男の運転する車に突き飛ばされて大けがを負った事件も発生した。
このように今の中国では、普通の村民から学校の女性教師、町のチンピラから車狙いの小物泥棒にいたるまで、皆で天下の警察官を、いとも簡単に殴ったり蹴ったりして躊躇(ちゅうちょ)することがまったくない。
どうやら白昼堂々と「公安警察」に反抗して暴行を加えるというのが国民的大流行となっている感がある。
こうなった背景のひとつは、政治権力そのものに対する人々の不満と敵意が中国社会に充満していることである。
多くの国民が不満と敵意をもっているからこそ、身近にある政治権力の象徴である警察官の顔を見るや否や、とにかく一発食らわせてやりたい気分になっているのであろう。
そして、「警官を殴る」という具体的な行動に移したところから、中国社会のもうひとつの重要な変化を読み取ることができよう。
それは、今の中国民衆が警察権力も含めた政治権力を昔のように、恐れなくなっていることだ。
民衆はむしろ、権力を上から見下ろして
「お前らはなんぼのものか」と軽蔑するようになっている。
「お上」に対する敬意や畏怖の念は今の中国ではすでに死語となってしまい、政治権力の権威はもはや、なきもの同然である。
つまり今の中国では、共産党独裁体制はすでに行き詰まっているだけでなく、秦の始皇帝以来の威圧的な専制主義政治がそろそろ終焉(しゅうえん)を迎えようとしているということである。
今後、共産党政権が「治安維持費」をいくら増額したとしても、殴りまくられている警官たちを頼りにして社会秩序を維持していくのはもはや無理なことだ。
そして、権威がそこまで失墜したようでは、安定した体制維持はますます難しくなる。
中国は確実に、「下克上」の乱世の時代に突入しようとしている。
( 石 平 )
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