■「加瀬英明のコラム」メールマガジン



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 危機と躾

 「躾」は日本でつくった国字だが、「馴れている」「身についている」を意味する、「しつく」の名詞だ。

 武道、書道、茶道から日常の身のふりかたまで、動じる――動揺することなく、慌ててはならない。つねに落ち着いていることが大切だ。私は空手道6段を允許されているが、試合に臨んでは技が身についており、どのような状況にも馴れていることが求められる。

 中国から始まった新型コロナウィルスが、全世界にひろがるなかで、人々が浮き足立っている。不安が先き立って落ち着かないので、足が地を踏んでいない。焦燥感に駆られると、判断力と認知機能が低下する。

 全国でトイレットペーパーの買い占め騒ぎが起ったが、トイレットペーパーはウイルスの感染予防には何の役にも立たないはずだ。 躾けを欠いた人々は、自律神経を冒されたように付和雷同する。

 昨年は異常な気象によって全国に大きな被害が発生したが、人類の歴史を振り返ると、地球温暖化や冷却化によって翻弄されてきた。

 このところ、人間活動が二酸化炭素(CO2)の排出量を増しているために、気候変動をもたらしていると、ひろく信じられているが、人はそれほど大きな力を持っているだろうか。コロナウィルスにも、対応できない。思い上がりだ。

 青森県の三内丸山遺跡はよく知られているが、今日よりも海岸線が接近していた。科学調査によれば、当時の気温は現在より2度以上も高く、海面が上昇していた。あの時代に日本列島に工場がひしめき、まだ自動車も走っていなかった。

 およそ2万8000年前の最終氷河期の中期から、温暖化によって海水が増加して、6000年前あたりに海面が4、5メートルも上昇した。

 西暦1550年から約300年にわたって小氷河期が訪れ、日本では1833年から天保の飢饉に襲われ、全国にわたって餓死、行倒れがあいついだ。

 今回のウイルスが、太陽の外層に輝く部分に似ているので、「コロナ」と名づけられている。太陽のコロナは黒点が極大、極小期によって、地球に飛来する電子の強弱が変わって、地球の気象をもてあそんできた。

 愚かな人々が妄動して、人間活動が気候変動を招いていると、全世界にわたって空ら騒ぎに耽っている。スーパーにおけるトイレットペーパー騒動によく似ている。