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憲法改正したら「人権は守られなくなる」のか?
過去30年、平均年3回以上、憲法を磨き上げてきたブラジルから見れば。
『ニッケイ新聞』編集長・深沢正雪
■■ 転送歓迎 ■■ No.2937 ■■ R01.11.27 ■■ 7,773部■■
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【伊勢雅臣】 所用があって、ブラジル・サンパウロに来ています。ブラジルには190万人もの日系人がおり、正直・勤勉などの日本的価値観を堅持し、ブラジル社会を精神的・道徳的にリードする存在になっています。戦後教育で、それらを忘れた本国の日本人にとっては、日本人の生き方を教えてくれるお手本です。
その日系人社会を支えている邦字紙が「ニッケイ新聞」で、日本の偏向した多くの新聞に比べて、深い見識をもって、情報と社説の発信をされています。
今回、編集長の深沢正雪さんにお会いし、時々、同紙の記事を転載させていただく事でご許可をいただきました。深沢さんは優れた御著書も数冊あり、『国際派日本人養成講座』でも何度か、登場いただいています。
No.1131 ブラジル移民が示した「根っこ」の力 ~ 深沢正雪『移民と日本人』を読む
我々と「根っこ」を同じくする同胞が190万人も地球の裏側で生きている事の有り難さ。
http://blog.jog-net.jp/201909/article_3.html
No.1011 ブラジル日系移民、一世紀の苦闘
日系移民がブラジルで尊敬される地位を獲得するまでには、日本人の「根っこ」に支えられた苦闘の物語があった。
http://blog.jog-net.jp/201706/article_7.html
以下、深沢編集長の「憲法改正したら「人権は守られなくなる」のか?」です。過去、30年、年平均3回以上も憲法改正しているブラジルから見たら、70年以上にわたって一行も憲法を改正していない日本は、どのように見えるでしょうか?
なお、図表も含めた本文(日本語)は、以下のページから読めます。
https://www.nikkeyshimbun.jp/2019/191119-column.html
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■ブラジル共和制宣言130周年
この11月15日はブラジル共和制宣言130周年だった。「共和制」とは、君主を持たない政体のことだ。1889年、軍がクーデターを起こして皇帝ペドロ2世を廃位して追い出し、首都リオの議会において共和制が承認・宣言された日だ。
ブラジルの共和制は、一般国民が起こしたと言うより、コーヒー産業の勃興で生まれたファゼンデイロ(大農場主)という新興市民の意をくんで軍が実行したものだった。
共和制とは、国家の所有や統治上の最高決定権(主権)を、君主ではなく、国民が持つ形の国民主権の政体だ。つまり、今のブラジル国家の根本がここでできた。
そんな国家の在り方を定めているのは憲法だ。ブラジルは帝政時代に二つ(1822年、1824年)、共和制になってから7つ(1891年、1934年、1937年、1946年、1967年、1969年、1988年)の憲法を作った。共和制宣言以降だけをみれば、なんと19年に一つという割合だ。
独立、共和制宣言、ヴァルガスの独裁政権樹立、同政権崩壊による民政移管、軍事政権樹立、同政権崩壊に伴う民政移管などの国家的な一大事の際、新しい時代に合わせた憲法を制定してきた。
■102回も改正された現在のブラジル憲法
さて、現在の「1988年ブラジル憲法」は何回改正されたかご存じだろうか? この9月までに102回だ。年平均3回以上になる。
つまり連邦議会では、ほぼ毎年、憲法改正が行われている。皆が議論して国の根本方針たる憲法を磨き上げているという意味で、大変民主的だと感じる。
今年7月に刊行された全訳『1988年ブラジル連邦共和国憲法』(二宮正人・永井康之訳、インテルクルトゥラル社)の前書きには《施行されてから約30年の間に約3分の1が改定された》(11頁)とある。憲法修正の番号が年代順にリストにされており、1992年の2件から始まり、毎年2~3件の修正法案が承認されている。
多い年としては2000年には7件、2014年には8件も修正された。
日伯の憲法を比較して《両国間の根本的な違いは、日本において憲法は「不磨の大典(編注=すり減らないほど立派な法典の意)」的な考え方が強いように思えるが、ブラジルにおいては、過去7回にわたって新たな憲法が作成されてきたことに見られるように、社会情勢に大きな変化があった場合、憲法を修正して新たな状況に臨む、というものである。
その意味では、日本も敗戦時には進駐軍の命令により、明治憲法を現行憲法に改正せざるを得なかったが、ブラジルでは上記のごとく、頻繁に変わってきている》(同35頁)
コラム子は法律に関してまったくの素人だが、これを読んで考えさせられた。
ある意味、ブラジル以上に日本社会も変化してきているはずだ。にも関わらず、憲法にそれを反映させないというのは、外から見て理解しがたい、日本独自の不思議な現象といえる。
もちろん、ブラジルの憲法も変えられない部分がある。でも、果敢に変えるべきところは変えてきている。
■ブラジル人もビックリ?!《憲法って簡単に変えちゃってもいいの?》という日本の発想
一方、日本でも憲法改正が再び議論になっている。「自民 憲法改正の世論喚起へ全国で集会」(NHK NEWS WEB-2019/10/17)には、《憲法改正に向けて議論の進展を目指す自民党は、幹部が出席して全国各地で集会を開くなどして党をあげて世論の喚起を図りたい考えです》などと報じられている。
これをみて、憲法公布から60年以上たって一行たりとも変えていない日本のありかたは、世界の中でも異常な存在だと改めて感じた。
さらに、日本弁護士連合会サイトに掲載されているパンフレット《憲法って簡単に変えちゃってもいいの?》を見ていて、その発想に改めて驚いた。
見出しを順番に見ていくと(1)「憲法は国の権力者から私たちの人権を守るためにある」、(2)「国の権力者は、憲法を簡単には変えられない」、(3)「今、96条を改正して憲法を変えやすくしようとする動きがある」、(4)「すると、憲法がどんどん変えられて人権が守られなくなる」、(5)「しかも、国民投票の手続法にも、たくさん問題がある」という風になっている。
つまり、「憲法改正」=「国の権力者(政治家)が人権を踏みにじる」という図式になっている。ここで問題にされている96条改正というのは、衆参両議院がそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成がなければ、憲法改正の国民投票を提案(発議)できないという点だ。
それを過半数だけで提案できるようにする動きに反対して作られたパンフレットだ。日本では、国会は憲法改正の提案をするだけで、ブラジルのように改正を承認できない。決定するのは、国民投票だ。
しかも、国民投票に関して同パンフレットは「有料意見広告に規制がなく、お金持ちの政党や団体がTV等のCMを独占する」という問題があるので、いったん発議されたら国民は簡単にだまされるから国民投票はやらないほうが良いといっているように読める。
国民をバカにしていること甚だしい一文ではないか。ブラジルは「ジレッタス・ジャー」(大統領直接選挙)なので大統領を直接投票で選ぶ。いわば国民投票だ。良くも悪くも「誰が選ばれても、自分たちが選んだのだから仕方がない」という形で納得するしかない。
だが、日本弁護士連合会の言い分では、国民投票自体が信用できないとしている。そんなことを言うなら、民主主義の根幹システムである選挙自体も問題だろう。
TVの政見放送と支持率の関係は、インターネットやSNSの普及によって大きく変わった。WhatsApp(ブラジルのSNS)などを良くも悪くも選挙に利用したからボウソナロ氏は選挙戦で勝てたと言われており、その変化がなければ現在のブラジル政局はない。
日本だって既成の大マスコミが信用されなくなり、ユーチューバー出身の政治家が出てきている。であれば、TVCMうんぬんという理屈は、現状に当てはまらない。
「憲法が日本国民を守っている」というよりは、「日本国民が憲法に縛られている」ように見える。
■憲法改正に国民投票は必要なのか?
ブラジルでは憲法改正するのに連邦議会の憲政委員会、専門委員会を通過し、下院では513人の議員のうち308人の承認を2回、上院でも憲政委員会を通過して81人の上議のうち48人の承認を2回得ないといけない。今回の社会保障改革法案(憲法改正案)では8カ月もかかっている。
だが国民投票はいらない。だから、可能だ。だいたい連邦議員は国民から投票で選ばれた〃代表〃だという位置づけがある。だから、国民の代わりに審議し、承認する役割を果たす。
そもそも、日本のように憲法改正に関して国会は提案しかできず、国民投票で決定するのでは国会議員の価値が低い。
日本弁護士連合会の同パンフレットには、「96条が改正されたら、その時々の権力者の都合で、他の大事な条文も簡単に変えられちゃうかも??」と危機感をあおっている。
危ない具体例として《憲法9条(戦争放棄)を変えて自衛隊を「軍隊」にして戦争のできる国へ!》と、《憲法21条(表現の自由)を変えてインターネットでの情報発信・収集を制限!》の2点を挙げ、「えぇー!そしたら憲法が国の権力者をしばることができなくなっちゃうんじゃない?!」と問題提起している。
ここで気になるのは「権力者」という言葉だ。権力者と書くと絶対的な権力を持っている感じがするが、民主主義においては、選挙で選ばれたただの政治家だ。その政治家を支えているのは国民の投票だ。
もしも国民が、その政治家が「権力をもちすぎ」と感じるなら、選挙で落とせばいい。そのような自浄作用をはたらくから民主主義は「国民主権」なのではないか。
国民が「政治家に騙された」「意にそわない権力者を選んでしまった」と反省するのであれば、次の選挙ではそのタイプの政治家は選ばれないはず。その失敗体験の積み重ねで、民主主義は成熟していく。
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