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おはようございます。エンリケです。

現代の軍事戦略入門【増補新版】陸海空からPKO、サイバー、核、宇宙まで
エリノア・スローン (著), 奥山真司 (翻訳), 平山茂敏 (翻訳)
芙蓉書房出版; 増補新版
2019/3/11発行
http://okigunnji.com/url/27/


過去から今に至るすべての軍事戦略思想がつかめる事典と言って差し支えない内容ですね。

冷戦以降の戦略思想の全貌がつかめるんです。
とくに、「統合戦」「サイバー戦」「非正規戦」「核抑止」「宇宙空間」に関する戦略理論の全貌を掴める一般書はこれ以外にないと思います。他に例を見ないこの点が、最大最高のおすすめポイントですね。非常に優れています。

重要なのは、マハンやドゥーエ、孫子やクラウゼヴィッツから、今現在のサイバー戦、核戦略、PKO、対テロ戦、宇宙戦略まで、時間軸の長さだけでなく幅の広さも兼ね備えている点でしょう。

「いまの軍事戦略を考える」うえで必要不可欠な思想・考え方が、コンパクトに一冊のうちに含まれているわけです。

著者のスローン女史は、元カナダ陸軍士官で現在は大学教授。
我が国での知名度はあまり高くありませんが、海外では非常に高名な戦略研究者です。

第一版が出たときも紹介しましたが、今回ご案内している増補版は、追記された項目があるだけでなく、既存項目にも加筆修正が加えられています。

題名は同じですけど、別の本といって差し支えない内容といえます。


個人的には、これまでリアルタイムで眺めてきた統合戦や対非正規戦、平和維持作戦について、はじめて総体を掴み整理できたことが大きいです。

一時期ずいぶん使われた「トランスフォーメーション」なる言葉の位置づけも、この書を通じてようやくできた感があります。


この本が扱う分野は「いかにして戦争に勝つか?」にかかわるアイデアであり「何故戦争が起きるのか?」の論考ではないところも押さえておきたいです。

防大一年生レベルではむつかしいです。
せめて防大4年生レベルの軍事戦略理解が必要です。
とはいえ、弊メルマガの読者で、各連載記事を日常的に楽しく読めている人ならまず間違いなく楽しめるはずです。

各テーマの記述が、ポイントをきちんと押さえているのに簡潔。
実に素晴らしいですね。

ありそうでなかった内容の本で、スローン教授には「いい仕事したなあ」と肩を叩いてあげたい思いです。


それでは、いま旬の戦略思想入門書の内容を見ていきましょう。


■目次

part1 伝統的な戦略の次元

 第1章 シーパワー
  アルフレッド・セイヤー・マハン
  ジュリアン・コーベット卿
  冷戦後の最初の一〇年間の議論(一九九〇~二〇〇〇年)
   海軍戦略/二〇〇〇年代/二〇一〇年代
  まとめ

 第2章 ランドパワー
  孫子
  バジル・ヘンリー・リデルハート卿
  カール・フォン・クラウゼヴィッツ
  アントワーヌ・アンリ・ジョミニ
  冷戦時代の通常戦の戦略思想
  冷戦終結以降の戦略思想
   米軍のビジョン/ブーツ・オン・ザ・グラウンド/特殊部隊
  まとめ

 第3章 エアパワー
  ジュリオ・ドゥーエ
  ウィリアム・ミッチェル
  批判
  冷戦後の最初の一〇年間(一九九〇年代)
   ジョン・ワーデン:重心のターゲティングにおけるエアパワーの役割/ロバート・ペイプ:戦略・作戦レベルにおける拒否戦略の価値/ベンジャミン・ランベス:戦略爆撃と架空の議論/エアパワーと作戦レベルの航空阻止の価値/戦力投射、スタンドオフ攻撃、そして情勢認識におけるエアパワーの役割/現代におけるジュリオ・ドゥーエの制空権/エアパワーは戦略的な効果を達成できたのか?/懲罰/航空阻止/斬首

 第4章 核戦力と抑止
  冷戦時代
  現在の抑止戦略
  能力を「テーラード」する
  通常戦力による抑止
  核抑止
  先制核攻撃の問題
  先制攻撃と生物・化学兵器
  弾道ミサイル防衛
  抑止とテロリズム
  まとめ

part2 戦略と非国家主体

 第5章 非正規戦―反乱、対反乱作戦、新しい戦争、そしてハイブリッド戦
  二〇世紀初頭から中盤までの革命戦争
   対反乱作戦についてのC・E・コールウェルの思想/反乱に対するT・E・ローレンスの思想/毛沢東の反乱についての思想/ダヴィッド・ガルーラの対反乱作戦/ロバート・トンプソンの対反乱作戦
  冷戦後
   アンドリュー・クレピネヴィッチの反乱・対反乱作戦/マーチン・ファン・クレフェルトの「非三位一体戦争」/ウィリアム・リンドの「第四世代戦」/トーマス・ハメスの第四世代戦/批判/「新しい戦争」学派の学者たち/デイヴィッド・ペトレイアスと「対反乱作戦」/批判/ハイブリッド戦
  まとめ

 第6章 平和維持、安定化、人道的介入
  平和維持とその派生型
   冷戦後に平和維持に関する戦略思想:一九九〇年代初期/冷戦後の平和維持に関する戦略思想:一九九〇年代後半と二一世紀
  安定化と復興
  人道的介入
  まとめ

part3 科学技術と戦略

 第7章 統合理論と軍事トランスフォーメーション
  軍事における革命(RMA)
   ウィリアム・ペリー/アンドリュー・マーシャル、アンドリュー・クレピネヴィッチ、そして総合評価局/エリオット・コーエンとトフラー夫妻/ウィリアム・オーウェンスと「システムのためのシステム」/ジョン・シャリカシュヴィリと「ジョイント・ビジョン二〇一〇」/批評
  軍事トランスフォーメーション
   アーサー・セブロウスキー、NCW、そして軍事トランスフォーメーション「効果ベースの作戦」や、それに関連する概念
   ジョン・ワーデンとデイヴィッド・デプチュラ/ハーラン・ウルマンと「衝撃と畏怖」/アメリカ統合戦力軍/「効果ベースの作戦」に対する批判
  トランスフォーメーションが及ぼした影響
  軍事イノベーション
  まとめ

 第8章 サイバー戦争
  サイバー戦争とは何か?
   許容範囲
  戦略思想
   サイバー戦争の様相/サイバー戦争の狙い/行為主体(アクター)たち/戦争のやり方
  戦争に関する問題点
   限界点(閾値)/帰結/切迫性/所属/有用性/予測不可能性
  戦略的サイバー戦争の実現性
  サイバー戦争と非国家主体
  まとめ

 第9章 スペースパワー
  宇宙空間とは何か
  宇宙空間の「地形」
  宇宙飛翔体の性質
   グローバルなプレゼンスとアクセス/非機動性
  スペースパワー
  宇宙戦力と宇宙での任務
   戦力強化/スペースコントロール/宇宙空間の戦力の応用/宇宙戦力応用兵器/武装化についての議論
  戦争の遂行
   宇宙空間から・・・/宇宙空間内で・・・
  まとめ

 あとがき

 訳者あとがき
  著者スローン教授の略歴
  入門書としての本書
  戦略思想と本書
  なぜ後継者がいないのか?
  謝辞



いかがでしょう?

芙蓉書房さんのこの種の書でいつも言ってることですが、著者あとがきだけでなく、訳者あとがきが実に充実しています。
うれしいことです。

平山教授も訳者あとがきでおっしゃってますが、各章の最後にある論文・書籍紹介は、次の段階に進みたい人に格好な読書ガイドとなっています。地味ですが読み手にとり実にありがたくうれしいポイントといってよいでしょう。

「いまの軍事・安保環境」を掴みたい。そう思っているあなたにおススメの一冊です。


現代の軍事戦略入門【増補新版】陸海空からPKO、サイバー、核、宇宙まで
エリノア・スローン (著), 奥山真司 (翻訳), 平山茂敏 (翻訳)
芙蓉書房出版; 増補新版
2019/3/11発行
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エンリケ


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