■「加瀬英明のコラム」メールマガジン



----------------------------------------------------

 抑圧と分断に翻弄された民族の愛国心と反日感情


 ロシアで行われたワールド・サッカー世界大会で、韓国代表チームが敗れて、5月にインチョン(仁川)空港に帰国したところを、出迎えたファンが罵声を浴びせて、卵を投げつけた。

 韓国チームは2敗したあとで、前回の世界大会の覇者だったドイツに勝ったから、誉められるべきだったと思うが、韓国社会は結果だけを重んじるから、日本のように努力したことを評価しない。

 日本では食物は大切で、神聖なものであるから、人に食物を投げつけることは、絶対にしない。韓国と日本は隣国だというのに、人々の価値観がまったく異なっていることに、驚かされる。

 だが、韓国も、日本も長いあいだにわたって貧しい国で、しばしば飢饉にも見舞われたから、食べ物は尊いものだったはずだ。

 それなのに、韓国では人を罵って、卵をぶつけることが珍しくない。

 卵は貧しかった時代には、韓国でも、日本でも貴重な滋養源だった。日本では幼い時から、親から食物を粗末にしたら罰(ばち)が当たるといって、厳しく躾けられた。

 私の親しい韓国のO教授が日韓の違いを説明して、「韓国人はみんな見栄を張るからです。卵も貴重なものであったから、自分は卵を投げることができるほど、豊かだということを、見せるためですよ」と、教えてくれた。

 韓国語では、「ホーセプリダ」(虚勢(ホーセ)を張る)とか、「ホーヨンプリダ」(虚栄(ホーヨン)を飾る)という。誰もが空ら威張りする天性が、あるのだ。

 ちなみに、韓国の1人当りのGDP(国内総生産)は、日本の3分の2にみたないのに、韓国では卵1ケがほぼ200ウオン(日本円で30円)であるのに対して、日本では20円あまりだ。韓国のほうが金利も物価も高いが、昔から社会が安定しなかったために、貯蓄する習慣がなく、全員が借金癖に取りつかれているためだ。

 日本では誰もが、謙虚であることを求められる。自己を抑えて、互に譲り合わなければならないが、韓国では自己主張が強く、人を押しのけながら力のある者に、諂(へつ)らわなければ、生き残ることができない。韓国人誰もがそろって認めるように、住みづらい社会なのだ。弱い者は惨めな落伍者になってしまう。

 嘘をつくのも、自己防衛のために必要だから、そうするうちに嘘が真実になってしまう。

 嘘はしばしば、家族や、一族、自分が属している党派を守るために、必要な手段となる。先の大戦中の慰安婦(ウイアンプ)が、職業的な売春婦だったのが事実であるのに、日本によって拉致された性奴隷(ソンノーイエ)だったという嘘を、事実としてつくりかえて、国内外に慰安婦像を次々と建てているのは、その典型的な例である。

 過酷な歴史ゆえの自分本位

 韓国では嘘と真実のあいだに、境がない。

 慰安婦(いあんふ)は日本語だが、戦後独立した韓国の国軍は、旧日本軍の将校経験者が中心となったので、日本軍の多くの制度に倣った、慰安婦を「ウイアンプ」と、朝鮮語読みにして引き継いたために、韓国軍に慰安婦が存在した。

 駐留米軍にも、慰安婦(ウイアンプ)を提供していた。(もっとも「性奴隷」は、日本の偏向左翼の造語で、「セックス・スレイブ」として、世界を風靡している。)

 今年から韓国では、政府が8月14日を『ウィアンプ・ギリムウィ・ナル』(慰安婦を称える日)として制定したが、世界史で売春婦(メチュンプ)を賛美する唯一つの国となった。じつに、個性的な民族だとしかいえない。

 8月が巡ってくると、日本ではテレビが定番のように、先の大戦と、広島、長崎への原爆投下を回想する番組で埋まるが、韓国では日本軍によって虐待された慰安婦を取りあげた番組が、放映される。今年も、文在寅(ムンジェイン)大統領と金正淑(キムジョンスク)大統領夫人が、高齢の慰安婦を見舞った。

 韓国人には、愛国心がない。日本は1億2000万人が同質だと思い込んでいる、世界できわめて珍しい国民だ。ところが、韓国人は家族の結束と家族愛が、日本よりはるかに強いものの、国民として一体感が欠けている。

 韓国人は富裕層から極貧層まで自分本位だから、韓国を捨てて、自由で豊かな海外に移住することが、全員の夢(クム)となっている。もっとも、李朝のもとで500年にわたった朝鮮王朝(1392年~1910年)が、あまりにも苛酷な時代だったから、自分本位にならざるをえなかった。

 分断国家と反日感情

 日本神話が一つしかないのと較べて、韓国には朝鮮北部の檀君(タンクン)神話をはじめ、高句麗(コクリヨ)、百済(ペクチュ)、新羅(シルラ)、伽那(カヤ)それぞれにその国がどのようにして産まれたのか、異った始祖神話が存在する。

 檀君神話は、天帝桓因(ファニン)の子の桓雄(ファヌン)が地上に天降って、雌熊(クンニヨ)と結婚して生まれた檀君が、檀君朝鮮として知られる古朝鮮を建国して、王となったというものだ。ところが、高句麗、百済、新羅と伽那の神話は、それぞれ物語が大きく違っているものの、すべて卵から生まれたという、卵生神話である。

 天帝の子の恒因が天上から天降ったというのは、日本神話に似ているが、なぜか、卵から生まれたという4つの国の神話は、日本神話と共通するところが、まったくない。

 韓国は古い歴史があるといって誇るが、しばしば王朝が交替したから、そのつど歴史が断絶されてしまった。

 中国の歴史も、習近平国家主席が「偉大な5000年の中華文明」を自慢しても、王朝が頻繁に代わるたびに、歴史が大きく書き改められたから、ズタズタの歴史であって、韓国の歴史に一貫性がないのと、同じことだ。

 韓国では、新しい王朝が支配者となるたびに、かならずその前の王朝の業績を、頭から否定した。高麗朝(コリヨジョ)の将軍だった李成桂(イソンゲ)が、1388年に反乱して高麗朝を倒し、朝鮮王朝(チョソンワンジョ)として知られる李朝を樹てると、高麗朝の国教だった仏教(プルギヨ)を禁じて、儒教(ユギョ)を国教とした。

 李朝のもとで、仏寺はみな山の奥深く逃げ込み、僧侶は強制労働に服する奴婢(ヌビ)の身分に落された。今日、韓国の骨董屋にゆくと、五体満足な仏像が、一つもない。日韓併合後、日本が仏教を復活させることによって、仏寺が平地に戻ることができた。

 アメリカの占領下で、1948年に韓国が独立を回復すると、その前の日韓併合時代が完全に否定されるようになったが、国家をあげての「反日(パンイル)」は、何のことない、韓国の歴史で繰り返されてきただけのことだ。

 それに韓国は、李朝が終わるまで国民を苛め抜いて、支配階級が富を収奪する、苛斂誅求(ガリヨムジュグ)の酷(むご)い歴史しかないので、誇れることがないために、「反日」が愛国心の源(みなもと)となった。

 産経新聞のソウル駐在客員論説委員として、韓国における生活が長く、私と同じ親韓派の黒田勝弘氏が、韓国の「反日」について、「韓国民の反日感情というのは、日本による朝鮮半島支配が終わった後、日本においては戦後、彼らにおいては、いわゆる解放後に形成されたものである」(『それでも私はあきらめない』あとがき、黒田福美著、WAC株式会社)と、断じている。

 日本の朝日新聞社をはじめとする、偏向左翼による自虐的な「反日」も、敗戦後に形成されたものだから、韓国を笑うことができない。

 私が長年にわたって、親しくしている韓国のS元新聞論説委員は、「いまの韓国の“反日”は、日本が戦争に負けたのがいけないのですよ」といって、嘆いてくれる。

 私は日韓基本条約によって、日韓国交平常化が行われた前年の1964年に、時事通信社特派員の肩書を貰って、韓国に短期滞在したが、ポージャンマチャ(屋台)を訪れても、深夜、ソウルへ戻るバスに乗っても、日本人だとわかると、人々から握手攻めになった。

 屋台では人々が懐しがって、つぎつぎとマッコリ(どぶろく)を奢(おご)ってくれ、満員のバスでは、全員が日本の歌を合唱してくれた。

 私は27歳だったが、当時の韓国の代表的な企業の経営者が、若い私を上座にすわらせて、妓生(キーセン)を侍らせた宴席を設けてくれた。

 日韓併合時代が遠ざかって、日本時代を体験した人々が減るにしたがって、「反日」が暴走して、喜劇的なものとなっている。

 事大主義を生んだ儒教の受容

 韓国では前政権の大統領が、かならずといってよいほど逮捕され、投獄されるが、前政権を否定することが、慣(なら)わしとなっている。前政権の幹部が記念植樹した木があれば、引き抜いてしまうことが、珍しくない。

 韓国民の思考様式を解明する、もう一つの鍵は、「サデチュイ」である。漢字で「事大主義」と書く。日本では「事大(じだい)」という言葉が使われることがないから、馴染(なじ)みがないが、漢和辞典で「事」をひくと、「仕える」という意味がでてくる。「事大(サデ)」は、力の強い者に仕えることだ。

 韓国は歴史を通じて、中国からしばしば侵略を蒙ったために、中国に臣従して、中国の属国となった。

 韓国の歴代の国王は、中国によって册封(任命)される地方長官のようなものだったから、皇帝のみに許される「陛下(ペーハ)」とい敬稱を用いることができず、「国王(ククウォン)殿下(チョンハ)」と呼ばれた。

 歴代の韓国の王朝は、ひたすら中国に仕えることによって、生き伸びてきた。中国に追従(ついしよう)して、諂(へつら)うあまり、自立心も何も捨てて、儒教から科挙制度まで、すべて中国を真似して、中国の「大中華(デチュンファ)」に対して「小中華(ソチュンファ)」と稱して、悦に浸るようになった。

 ヨーロッパに、「ロシアの隣国となるほど、不幸なことはない」という諺(ことわざ)があるが、中国の隣国となるほど、不運なことはない。

 今でも韓国では「大国(デグク)」といったら、中国一国だけを指す言葉となっている。アメリカも、ロシアも、「大国」とはいわない。

 それでいながら、韓国人は中国に対して屈折した感情をいだいており、中国人が不潔だといって、昔から「テンノム」(垢野郎)といって、軽蔑してきた。今日でも「テンノム」といったら、中国人の蔑稱となっている。

 もう一つの韓国人の思考様式を解く鍵は、韓国人全員が英語でいうが、「ウインナー・テイクス・オール」(勝った者が、すべてを一人占めにする)のだ。日本のような“和の社会”ではなく、常時、熾烈な競争を強いられている社会なのだ。

 そこで、子どもを学校に送り出す時には、日本であれば「みんなと仲良くしなさい」というが、韓国では「チヂマ!」(負けるな)、「イルテンイ・テウォラ!」(一番になれ)「イルテンヘラ!」(同)といって励ますというより、脅(おど)かす。

 このために、韓国では少数の財閥(チェボル)と呼ばれる大企業が、経済の3分の2以上を独占して、中小企業が育つことがない。

 韓国の悲劇は、韓国社会が小型の中国となってしまったことだ。

 中国人も苛酷な歴史のなかで生きてきたから、不正を不正と思わない。自己本位で、自分を守るために、いくらでも嘘をつく。畏友の宮崎正弘氏が、「中国人は息を吐くたびに、嘘をつく」と述べているが、嘘が呼吸と同じ生きる術となっている。

 中国の儒教は支配階級が、美辞を並べて人民を支配するためのハウツウの統治思想であるが、日本に伝わると、精神修養哲学につくりかえられて、今日に至っている。ところが、韓国では中国の儒教をそのまま取り入れたために、中国産の猛毒によって冒された。

 『論語』には、孔子の言葉として、「身内の不祥事を、外に洩してはならない」という、日本人なら目を剥(む)く教えがある。

 日本は“和の社会”であるから、心は相手が誰であれ、配るものとされているが、中国、韓国では、家族と一族のあいだに限られる。//