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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成30年(2018年)5月9日(水曜日)弐
         通巻第5696号
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 ポンペオ国務長官、ふたたび平壌訪問。横田基地で給油
  大連での習近平、金正恩会談を受け、「段階的、同時並行的非核化」の下準備
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 じつに目の回る三日間だった。
 2018年5月7日、専用機で極秘に大連に飛んだ金正恩は、習近平の出迎えを受け、儀仗兵閲兵後、ただちに実務会談に臨んだ。中国側の出席は王こ寧政治局常務委員、楊潔チ国務委員、王毅外相という外交三羽烏に加えて、宋涛(中央弁事処主任)らが出席したが、王岐山の姿はなかった。

 大連空港での北朝鮮特別機の駐機を最初に報じたのは日本のメディアだった。
 中朝首脳会談は引き続き8日も行われ、ふたりが大連の海岸を悠然と歩きながら話し合う風景がCCTVに映し出された。大連は嘗て金正日が極秘訪問した場所だが、新義州から丹東、大連と陸路を走った。出迎えに行ったのは李克強だった。黒塗りの高級車40台を連ねての訪問で大連は交通麻痺に陥った。

 たまたま大連にいた筆者も、その行列に遭遇したことを鮮明に記憶している。大連では近く中国国産空母第一号の正式な就航式が行われることも予想されている。

 さて僅か1ヶ月という短期間に二回という異常な中朝会談だが、板門店における南北首脳会談の報告を受けた後、習近平の関心は近く行われる予定のトランプ大統領と金正恩対談に釘を刺し、牽制することだ。

 米国は「段階的、同時並行的な非核化」のプロセスが明瞭になるまで制裁を続行すると表明しているが、習近平としては、米朝間に最終的な合意があるのか、北朝鮮の本心は奈辺にあるのか、中国はどこまで介入余地があるかを探ったと考えられる。中国筋に拠れば、米朝首脳会談はシンガポールでの開催がもっとも有力だという。

 同じ日、重要な外交場面から外された李克強首相が訪日した。日中友好40年を記念する目玉とはいえ、日本のメディアが多少は報じたくらいで、華字紙の扱いは小さい。
 李克強首相は9日に同じく来日する文在寅韓国大統領を交えての日中韓三国会談に臨んで、そのあと北海道を訪問する予定。


 ▲同じ日、トランプはイランとの核合意離脱を正式に表明した

トランプが「イランとの核合意から離脱」を表明し、欧米メディアは、こちらのニュースを特大に扱って、北朝鮮の動きは二番か三番の扱い。
イランへの制裁再開は180日の猶予期間をおいて実施され、イランとの銀行送金も出来なくなる。イスラエルの新聞は前向きに評価する分析が目立った。

 米国の軍事筋がもっとも懸念するのは、北朝鮮が核弾頭をイランに売却するのではないかという危険性である。

 ワシントンタイムズはポンペオ国務長官が近く平壌を再訪問し、米朝首脳会談の地ならしを行うだろうと予測記事を流していたが、直後にトランプは記者団に対して「すでにポンペオは北朝鮮に向かっている」と発表した。

 ポンペオの特別機は横田基地で給油後、日本人時間の9日午前五時40分に大統領専用機で平壌へ向かった。
 横田を飛び立つ風景は日本のメディアがとらえた。

 ポンぺお国務長官に随行したのはブライアン・フック政策局長、マシュー・ポテンガー国家安全会議アジア部長ら七名とされ、帰路に勾留されているアメリカ人三名を連れ帰るのではないかという期待がある。
 しかしアメリカの世論はとくに、アメリカ国籍の三名が帰っても、情緒的な反応を示すようなことはない。

 ポンペオは3月末に極秘に北朝鮮を訪問し、4月1日に金正恩と会談している(このときポンペオはCIA長官、こんどは国務長官)。この動きから分かるのは国務省主導の外交権をホワイトハウスが掌握したという事実である。リベラルの巣窟だった米国務省が、外交の蚊帳の外に置かれているという事実も、尋常ではない。
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)今週末、5月12日(土曜日)、東京での宮崎正弘先生の独演会のお知らせです。まだすこし余席があります。
目まぐるしく変化する東アジア情勢、とりわけ朝鮮半島の動きが急です。いったい本当のところ何が変動の基礎にあり、何が地下水流で蠢き、次に何が変わろうとしているのか?
北朝鮮は本気で非核化を考えているのか?
トランプの狙いはほかにあるのではないのか?
習近平が一番慌てたのではないのか?

とき    5月12日(土曜) 午後二時半――四時半
ところ   文京シビック 四階シルバーセンターホール
      http://www.city.bunkyo.lg.jp/shisetsu/civiccenter/civic.html
講師    宮崎正弘先生(作家、評論家)
演題    「中朝会談、南北会談、そして米朝会談でどうなるアジアと日本」
参加費   事前申し込み1500円(当日2000円)。
事前申し込みの学生=千円、高校生以下は無料
主催    千田会
      なお、終了後、近くの居酒屋で懇親会あります(事前申し込み3500円)
申し込みは morale_meeting@yahoo.co.jp
      FAX(0866)92-3551
詳しくは下記サイトにあります。
http://www.kokuchpro.com/event/2ce5866624131c8a82c804e4bfcb5f3c/
 予約なく突然おみえになっても余席はあります。
   (千田会事務局)



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(読者の声2)中国在住のジャーナリスト姫田小夏さんのレポートでは、マカオの観光地がシナ人で溢れかえり、歴史的遺産を破壊しかねないほどと、深刻な報告がなされています。ちなみにマカオへの観光客は「1位が中国大陸で2219万人、2位は香港で616万人、3位は台湾で106万人、4位は韓国で87万人、5位は日本で32万人となっており(マカオ特別行政区政府旅行局)、大陸からの中国人は全体の約7割」との由です。
 日本の観光地も同じ現象で、蝗の大群が去ったあとはゴミの山。インバウンド増加は決して喜ぶべき事態ではないのではと思います。
   (UI子、杉並区)


(宮崎正弘のコメント)中国大陸からの客は大半がカジノ目当てで、ホテルでは徹夜の博打。ですからマカオの街角は、質屋ばっかりですよ。広東語で「質」は「押」です。



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(読者の声3)5月25日、三島由紀夫研究会の「公開講座」は憂国忌発起人でもある井上隆史先生をお迎えします。
            記
日時 5月25日(金)午後6時開場、6時半開演
会場 アルカディア市ヶ谷(私学会館)
  (JR・地下鉄「市ヶ谷」駅徒歩2分)
講師 井上隆史先生(国文学者、白百合女子大教授)
演題 「もう一つの日本」を求めて、『豊饒の海』を読み直す」
    講師略歴 昭和38年生れ。横浜市出身。東京大学文学部国文科卒。文芸評論家。百合女子大学教授。専門は日本近代文学。著編書に『三島由紀夫幻の遺作を読む~もう一つの『豊饒の海』』(光文社新書)、『混沌と抗戦~三島由紀夫と日本、そして世界』(共著、水声社)など多数。最新著に『「もう一つの日本」を求めて~三島由紀夫『豊饒の海』を読み直す』(現代書館)
会場分担金  会員・学生千円(一般2千円)
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1728回】  
――「支那人に代わって支那のために考えた・・・」――内藤(29)
   内藤湖南『支那論』(文藝春秋 2013年)

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満洲の実情を弁えない一知半解で頭でっかちの「書生輩」が権力に任せて政治を行なえば、摩擦は必ず起きる。やはり驕りに導かれた強権が反発を招くことは必至だ。

 内藤の主張に従うなら、どうやら当時の日本は小さくは満洲政策、大きく言うなら対中政策を策定する際に、中国における南方と北方、南方人と北方人、さらには満洲における満人と在満漢人の違いを考慮することなく、彼らを一緒くたに扱ってしまったのではなかろうか。

  じつは「今日でも一般の人民は日本の勢力というものを認め」、さらに「満洲におい馬賊などから成り上って、日清日露の戦争以来の実際のことを知っておる軍隊の頭目など」も、「何事があっても日本に頼らなければ危いということを深く呑み込んでおる」。ところが、そういった実情を知らない南方出身官吏――彼らを送り込んだのは日本だ――に邪魔され、「日本と満洲の関係が、段々気まずい傾きを来しておる」。
かくして内藤は、「今日でもその歴史を知らない南方人の官吏さえ逐い退けてしまえば、満洲のことは、日本との間に何ら悪い関係がなしに、円満に行くべきはずである」と結論づけた。

 満洲の歴史、満洲と日本の関係を知る在満漢人に満州を任せるべきだ。「もしも日露の勢力を引き去ってしまうと、満洲は依然として貧乏の土地に止まる」。だから財政的に考えるなら中華民国から満州を切り離すがいい。中華民国が「漢人の天下で漢人が支配するということになると、支那本部の財力でもって、支那を支配するということを根本の主義として立てて行かなければならぬ」。かくして新しい国家は「支那の根本財政に害こそあるけれども、利益にはならぬというような土地をば切り離してしまう方が、財政の理想上から云うと至当のことである」と主張した。
財政上も中華民国は満洲を切り離すべし、である。

  さらに内藤は筆を進めるが、かりに「支那人がそこらじゅうの異種族の土地を侵害するということは、一方から云えば漢民族の発展」と見做すことができるが、これを異種族の立場から考えるなら「支那の人民」の「侵略的精神」というべきものだろう。だから「今日において国力すなわち兵力とか財政力」からして「維持できない土地は、政治上からこれを切り離してしまって、単に将来の経済上の発展を図る方」が得策である。

 かくして内藤は、「五族共和というような、空想的議論」を排し、中華民国は実力に見合う形で「むしろその領土を一時失っても、内部の統一を図るべきである」。「今日支那の領土問題を論ずるにおいて、(中略)種族問題と、政治上の実力とが最も注意して考えられなければならぬところである」とする。

歴史的経緯と現状を弁えず、メンツと理想にこだわる余りに「五族共和というような、空想的議論」を掲げ推し進めることは政治的には愚策というべきだ。内政にせよ国際関係にせよ、高邁な理想を掲げはするが、軍事的にも財政的にも、また民力のうえからも費用対効果を考え判断するのが政治の要諦だろう。だからこそ日露戦争から中華民国初期の満洲を考えた時、内藤の考えは傾聴に値する。
そこで問題となるのは内藤の主張が、実際に満洲に関心を懐いた日本朝野を動かしたか否かである。

内藤の主張を敷衍するなら、日本は中国における南北――ということは、中部・西部・東部に加え、東西南北の辺境部の違いからくる文化(つまりは《生き方》《生きる姿》《生きる形》)の違いに思いを致すことはなかったという//