■■ Japan On the Globe(1061)■■ 国際派日本人養成講座 ■■
公民教科書読み比べ(4):伝統文化を実感する
グローバル化時代には、まず自国の伝統文化の有り難さを実感することが大切。
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■記念講演 伊勢雅臣『世界が称賛する 日本の教育』■
「教育を良くする神奈川県民の会」定期総会・講演会
・平成30年5月19日(土)14:00~
第1部 定期総会 14:00~14:50
第2部 講演会 15:00~16:30
・かながわ労働プラザ(L プラザ) ホールA
JR根岸線「石川町」駅北口(中華街口)から徒歩3分
https://www.zai-roudoufukushi-kanagawa.or.jp/l-plaza/access.html
・会費 1000円
・会場にて伊勢雅臣著書『世界が称賛する 日本の教育』他を定価1,620円→1,000円で販売します。
・申し込み 不要。直接、会場にお越し下さい。
・問い合わせ information@教育神奈川.jp
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■1.「伝統文化の継承と創造」を押しつけられても、、、
東京書籍版(東書)公民教科書の「1 私たちの生活と文化の役割」では、文化の記述が表面的な次元に留まっていることを前回[a]、指摘した。
次のセクションは「2 暮らしに生きる伝統文化」だが、ここでの伝統文化の記述も表面的である。伝統文化の例として能と茶道、初詣、ひな祭りなどの写真を掲載する程度の紹介に留まり、その意味する所は説明されていない。
これで1ページを費やした後、次のページでは「日本文化の地理的多様性」と題して、雑煮における餅の形、汁の種類の地理的分布を地図によって示している。さらに「特徴的」なのは、アイヌ文化と琉球文化について、半ページ近くを使って紹介している。
生徒たちにとっては、伝統文化を実感する機会もないまま、雑煮の分布やアイヌ・琉球文化の紹介をされても、知識として学ぶだけだ。その後に、「私たちには,伝統文化を継承していくとともに,そこから新しい文化を創造していくことが求められています」と押しつけられても、どうしてなのか、得心がいかないだろう。
■2.「深めよう 伝統文化の継承と私たち」
この後で「深めよう 伝統文化の継承と私たち」という2ページのコラムがあり、以下の4つの取り組みについて半ページずつ紹介している。
1.日本の伝統文化の魅力を伝える一石川県小松市の全国子供歌舞伎フェステイバル in 小松ー
2.地域の伝統芸能を未来に受けつぐ一宮崎県の子ども神楽一
3.復興への願いを地域芸能にたくす一宮城県石巻市の復興輪太鼓-
4.世界遺産を自分たちの力で守る一島根県大田市の世界遺産学習-
伝統文化を子供たちの手で継承する取り組みという興味深い内容ではあるが、伝統文化の大切さに関する実感のないまま、これらの記事を読んでも、一部の物好きな子供たちの同好会的な活動として捉えられてしまう恐れがある。
東書の記述は、文化の表面的な説明に終始していて、文化そのものへの切り込みがない。やはりまずは生徒たちに、伝統文化は自分たちにとって何なのかを、実感を持って理解させることが不可欠なのではないか。
■3.「もったいない」に込められた日本人の「価値観や心情」
東書の記述にも生徒たちの実感に訴える事例が一つある。「世界に広がる日本文化」のセクションで、次のように述べている。
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「もったいない」という日本人の価値観を表す言葉は,ケニア出身の環境保護活動家でノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんによって, ごみの減量(リデュース),再使用(リユース),再生利用(リサイクル)の3Rの考え方を全てふくんだ言葉として高く評価されました。[1, p20]
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その横には、「国際連合本部で演説するワンガリ・マータイさんと演説の内容」と題して、マータイさんの写真とともに、次のように演説の一部を引用している。
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地球温暖化の影響は世界各地ですでに現れています。ケニアでは,1000万人が飢えに苦しんでいます。土地は干上がり,作物はかれ,家畜は死に,子どもたちはおなかをすかせています。これは,何十年にもわたって環境問題を放置し,対応を誤り,地域社会が弱体化してしまったからなのです。
私たちは,日本語の「もったいない」という言葉にこめられた,物に感謝し,大切にし,無駄にしないようにするという精神で,ごみを減らし,物を再使用し,さらにリサイクルしていかなければならないのです。[1, p20]
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その2ページ前の「伝統文化とは」のセクションでは、以下の一節もあった。
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「おかげさま」や「おたがいさま」,「おもてなし」といった言葉にこめられた価値観や心情も,日本の風土の中で形成された伝統文化といってよいでしょう。[1, p18]
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「もったいない」という言葉は、「おかげさま」「おたがいさま」,「おもてなし」と並んで、日本人の「価値観や心情」をあらわす重要なキーワードだ。その「価値観や心情」こそが様々な伝統文化を生み出す「根っこ」となっているのである。
「もったいない」を、「世界に広がる日本文化」の文脈で語る前に、まずは、その言葉から日本人の「価値観や心情」を深掘りしていけば、生徒たちが自分の「根っこ」を実感する事ができたはずだ。せっかくの良い入り口を示しながら、そこに立ち止まっているのは、まさに「もったいない」記述である。
■4.グローバル化の中での伝統文化の持つ意味は?
育鵬社版(育鵬)は、伝統文化そのものに関して、はるかに大きなスペースを割いている。「2 日本の伝統文化」ではまるまる2頁を使って伝統文化を論じ、紹介するとともに、さらに「理解を深めよう 日本の伝統文化」と題して2ページのコラムを設けている。
この節の冒頭の「伝統文化とは」と題したセクションで、伝統文化を「親から子へ,子から孫へ,長い歴史のなかで形づくられ,伝えられてきた文化」と定義した後で、グローバル化の中での伝統文化の持つ意味について、次のように述べている。
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グローバル化が進み,世界の人々との交流が活発になればなるほど,一人ひとりが,どのような伝統文化をもった社会環境に育ったかがとても大切になってきます。自分の国や郷土の伝統文化に誇りをもち,未来につなげていくこと,そして,それを世界の人々にも伝えることが,私たちに求められています。[2, p26]
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この指摘は、弊誌が「国際人養成講座」ではなく「国際派日本人養成講座」と題している考えにも通ずる、きわめて重要なポイントなのだが、この一文だけで生徒たちに「なるほど」と納得させるのは難しいだろう。もう少し具体的な説明が欲しいところだ。
グローバル化に関して、東書は浜松市のブラジル人によるサンバフェスティバルや京都での在日韓国・朝鮮人による東九條マダンと呼ばれるお祭りなどを写真入りで紹介しており、これに関連して次のように述べている。
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私たち一人ひとりには、異文化を理解しようとする態度(異文化理解)が求められます。異文化を理解することは,自分の文化に対する理解を深めることにもつながります。[1,p21]
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「異文化を理解することは,自分の文化に対する理解を深める」というのは知の次元ではその通りだが、もっと深い情意の次元では、自国の文化への愛着を持てば、他国の文化を尊重する姿勢も育つ。
たとえば、日の丸に愛着を持つ日本人なら、外国人も自国の国旗に愛着を持っているだろうと察して、そこから自然に他国の国旗を尊重する姿勢も育つ。文化も同様である。グローバル化が進むほど、「自分の国や郷土の伝統文化に誇り」を持つことが大切だ、と育鵬が指摘するのは、こういう意味も含んでいるのである。
■5.自然信仰と祖霊信仰を基底とした日本文化
育鵬は次の「日本の伝統文化の特徴」のセクションで、以下のように説明している。
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日本人は古くから自然を信仰し,祖先の霊をまつる神道を大切にしてきました。狩猟・採集の時代から,食物をはぐくむ山や海,太陽や水などの自然を「神」として,おそれと感謝の念をいだいてきました。
のちに,仏教が伝わると,その教えを融合し,お盆や春・秋の彼岸に祖先を祭るようになりました。
これらは,神社の祭礼や民俗信仰,年中行事だけでなく,皇室の文化や祭祀(神仏や祖先をまつること)の大きな特色でもあります。その土壌の上に,能や歌舞伎などの芸能や相撲や柔道などの武道,そして茶道,書道なども生まれました。[2, p26]
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この一文は日本文化の「根っこ」に自然信仰と祖霊信仰があり、そこから年中行事や芸能、武道、芸道などが生じていったという日本文化の構造を簡潔に言い表しているが、これだけでは、まだ抽象的で生徒の実感には届かないだろう。
伝統文化の具体例として、続く2ページを使って「日本の伝統文化」と題し、信仰(神道、ひな祭り、精霊流し、除夜の鐘等)、芸道(茶道、華道、書道、歌道等)、武道(剣道、柔道、相撲、なぎなた等)、美術・建築・工芸(絵画、彫刻、社寺、料理等)、芸能(雅楽、能、狂言、歌舞伎、文楽)と、それぞれ写真を示し、一大絵巻物のようにしている。
この一覧からは、これだけ多彩多様な分野の文化を育ててきた日本人の創造性の凄さが感じられる。ただ、これらの多彩な文化要素の中から、一つでも良いから、生徒が愛着を感じられるような学習が望ましい。そのためには生徒のグループ学習として、特定の1つの文化要素を取り上げ、それがどのように生まれて、継承されてきたのか調べるのが良いと思う。
■6.「世界に類のない国民参加の文化行事」
その一例となるのが、横のコラムで、歌道について「宮中歌会始」が写真とともに紹介されている内容である。
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毎年1月に皇居では新年最初の歌会が開かれ,日本国…
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