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「九大信和会」の思ひ出(上)
湘南 仁
■■ 転送歓迎 ■■ No.2775 ■■ H30.04.25 ■■ 7,946部■■
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(伊勢雅臣) 国民文化研究会会員の湘南仁さんが、学生時代にどう学んだかを回想した文章です。一人の後輩のために、徹夜して文章を直してくれる先輩、そういう機縁に恵まれて人は育っていきます。国文研の学問の特徴がよく窺えます。こういう機縁を少しでも多くの若い方々に味わっていただきたいと思います。
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■九州大学への道
昭和54年のことである。横浜市内の県立高校に通ってゐた私は、大概の高校3年生と同様に、卒業後の進路で悩んでゐた。自分の人生を打ち込むものを見つけたいと思ってはゐたが、何をしたいのかといふ具体的な希望を持ってゐなかったからである。
そんな時、倫理社会の時間に「チャイナシンドローム」といふ言葉があることを知った。「アメリカで原発事故が発生して炉心が溶け落ちた時、地球の裏側の中国まで達するだらう」といふ意味の言葉であった。学校帰りに立ち寄った町の図書館で、原発事故を描いたSF小説を借りて読み、主人公が水で冷やすため炉心に向ふ姿に感動した。
読後、危険ゆゑの緊張感があるのではないかと考へて、原子力を学ばうと思った(福島原発の事故当初、被曝を顧みず任務を全うされた自衛隊、消防の方々に頭が下がった)。
学科名に“原子”を持つ大学は少なかった。それまで両親の庇護の下で安穏に暮してゐた私は、親元を離れて自分を変へたいとも思ってゐた。私は、横浜から遠くのいくつかの大学を思ひ浮かべた。
一方、私は、自分にない潔さ、決断力に憧れてゐた。現代国語の授業で、三島由紀夫氏の事件について話があり、関心を持った。町の小さな書店で、『尚武のこころ』といふ氏の対談集を買ひ、夢中で読んだ。他に『葉隠入門』等、彼の武士的実践に関する本をいくつか読み、彼の決然たる行動と言葉に牽きつけられた。
また、クラスの友人が学校に持って来た『男一匹ガキ大将』といふ漫画の、九州の人物の果断と篤い友情に血湧き肉躍った。当時まだ九州に行ったことがなかった私は、九州に行けば情に篤い武士的男、即ち九州男児に会へると信じた。
私は、思ひ浮かべてゐた大学の中で九州大学を選び、昭和55年4月に進学した。
■先輩との出会ひ
入学式の数日後、授業履修のオリエンテーションを迎へた。
オリエンテーションでは、教務課の職員による単位履修の説明の後、生協職員(以下職員)が登壇し、生活協同組合(生協)の説明だけでなく政治的発言(反原発の)をした。話の後、職員は質問は無いかと聞いたが、教室にゐた私を含む100名ほどの新入生は誰も質問せず、そのままその場が終るかと思はれたその時、窓際の通路に立ってゐた一人の学生が質問した。
職員の政治的発言が他の人の意見の羅列であったのに対し、「君自身はどう思ふのか」と質問したのである。職員は何も答へられなかった。
職員が退出した後、この学生が登壇して、教務課から少し時間を頂いたと言って話を始めた。私と同じ学科の4年生だった。正岡子規が病苦の中、活き活きと生活し、短歌革新に尽したことを熱を込めて話された。
大勢の新入生を前に堂々としたものだった。話の終りにこの4年生は、「学問と生き甲斐」といふガリ版刷りの冊子を示し、興味のある人は声を掛けて下さい、と言って降壇し教室の出口の辺りに立った。
オリエンテーションの時間が終り、教室から出て行く時、私は思ひ切ってその人に、冊子に興味があります、とおずおず話掛けた。先ほどのお話に感動しました、とも伝へた。これがY先輩との出会ひであった。
先輩は、その日輪読会があるから参加しないか、と言ってくれた。私は先輩に連れられて学生会館の和室に行った。部屋を見渡すと、参加者は新入生だけで10名以上ゐたやうに記憶してゐる。他に上級生らしき人が10名ほどゐて、皆大人に見えた。
テキストは、文芸評論家小林秀雄氏の講義録『感想- 本居宣長をめぐって- 』(国民文化研究会の昭和53年夏季合宿教室でのもの)であった。
その頃の私は、文学は行動と関係なく言葉で飾り立てるだけのものと思ってをり、興味がなかった。小林秀雄氏についても、高名な文学者としてしか知らず、単に読書会といふだけなら、文学青年や少女がお喋りするだけの軟派サークルと嵩を括り、参加しなかったと思ふ。先輩との出会ひがあったお蔭で輪読会に参加し、その後お世話になる多くの先輩に出会ふことができた。
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(伊勢雅臣) 国民文化研究会会員の湘南仁さんが、学生時代にどう学んだかを回想した文章です。一人の後輩のために、徹夜して文章を直してくれる先輩、そういう機縁に恵まれて人は育っていきます。国文研の学問の特徴がよく窺えます。こういう機縁を少しでも多くの若い方々に味わっていただきたいと思います。
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■九州大学への道
昭和54年のことである。横浜市内の県立高校に通ってゐた私は、大概の高校3年生と同様に、卒業後の進路で悩んでゐた。自分の人生を打ち込むものを見つけたいと思ってはゐたが、何をしたいのかといふ具体的な希望を持ってゐなかったからである。
そんな時、倫理社会の時間に「チャイナシンドローム」といふ言葉があることを知った。「アメリカで原発事故が発生して炉心が溶け落ちた時、地球の裏側の中国まで達するだらう」といふ意味の言葉であった。学校帰りに立ち寄った町の図書館で、原発事故を描いたSF小説を借りて読み、主人公が水で冷やすため炉心に向ふ姿に感動した。
読後、危険ゆゑの緊張感があるのではないかと考へて、原子力を学ばうと思った(福島原発の事故当初、被曝を顧みず任務を全うされた自衛隊、消防の方々に頭が下がった)。
学科名に“原子”を持つ大学は少なかった。それまで両親の庇護の下で安穏に暮してゐた私は、親元を離れて自分を変へたいとも思ってゐた。私は、横浜から遠くのいくつかの大学を思ひ浮かべた。
一方、私は、自分にない潔さ、決断力に憧れてゐた。現代国語の授業で、三島由紀夫氏の事件について話があり、関心を持った。町の小さな書店で、『尚武のこころ』といふ氏の対談集を買ひ、夢中で読んだ。他に『葉隠入門』等、彼の武士的実践に関する本をいくつか読み、彼の決然たる行動と言葉に牽きつけられた。
また、クラスの友人が学校に持って来た『男一匹ガキ大将』といふ漫画の、九州の人物の果断と篤い友情に血湧き肉躍った。当時まだ九州に行ったことがなかった私は、九州に行けば情に篤い武士的男、即ち九州男児に会へると信じた。
私は、思ひ浮かべてゐた大学の中で九州大学を選び、昭和55年4月に進学した。
■先輩との出会ひ
入学式の数日後、授業履修のオリエンテーションを迎へた。
オリエンテーションでは、教務課の職員による単位履修の説明の後、生協職員(以下職員)が登壇し、生活協同組合(生協)の説明だけでなく政治的発言(反原発の)をした。話の後、職員は質問は無いかと聞いたが、教室にゐた私を含む100名ほどの新入生は誰も質問せず、そのままその場が終るかと思はれたその時、窓際の通路に立ってゐた一人の学生が質問した。
職員の政治的発言が他の人の意見の羅列であったのに対し、「君自身はどう思ふのか」と質問したのである。職員は何も答へられなかった。
職員が退出した後、この学生が登壇して、教務課から少し時間を頂いたと言って話を始めた。私と同じ学科の4年生だった。正岡子規が病苦の中、活き活きと生活し、短歌革新に尽したことを熱を込めて話された。
大勢の新入生を前に堂々としたものだった。話の終りにこの4年生は、「学問と生き甲斐」といふガリ版刷りの冊子を示し、興味のある人は声を掛けて下さい、と言って降壇し教室の出口の辺りに立った。
オリエンテーションの時間が終り、教室から出て行く時、私は思ひ切ってその人に、冊子に興味があります、とおずおず話掛けた。先ほどのお話に感動しました、とも伝へた。これがY先輩との出会ひであった。
先輩は、その日輪読会があるから参加しないか、と言ってくれた。私は先輩に連れられて学生会館の和室に行った。部屋を見渡すと、参加者は新入生だけで10名以上ゐたやうに記憶してゐる。他に上級生らしき人が10名ほどゐて、皆大人に見えた。
テキストは、文芸評論家小林秀雄氏の講義録『感想- 本居宣長をめぐって- 』(国民文化研究会の昭和53年夏季合宿教室でのもの)であった。
その頃の私は、文学は行動と関係なく言葉で飾り立てるだけのものと思ってをり、興味がなかった。小林秀雄氏についても、高名な文学者としてしか知らず、単に読書会といふだけなら、文学青年や少女がお喋りするだけの軟派サークルと嵩を括り、参加しなかったと思ふ。先輩との出会ひがあったお蔭で輪読会に参加し、その後お世話になる多くの先輩に出会ふことができた。
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