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宮崎正弘の最新刊『米国衰退、中国膨張。かくも長き日本の不在』(海竜社)
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―――日本は世界史のプレイヤーとしての位置を復活するのか? それとも半恒久的に米国の附録なのか? (定価1296円 アマゾンは下記 ↓)
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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成30年(2018)2月28日(水曜日)
通巻第5621号
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トルコはNATOメンバーから降りる積もりだろうか?
米土関係の険悪化につけ込んだプーチン、シリアで主導権
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プーチンはシリアの宗主顔をし始めた。
国民が嫌うアサド大統領体制を擁護しておきながら「自由選挙をやれば多数派のスンニ派が勝利し、アサド独裁は潰える」と発言して、シリアを揺さぶりながらも、凶暴な空爆を続けて市民の民家や病院にも爆弾を降り注いだ。もっとも自由選挙となれば、スンニ派は分裂するので、アサドが漁夫の利を占めるのも明瞭である。
シリア北部に展開中のクルド武装勢力に対して、トルコが越境攻撃を加え、その武装勢力を支援してきた米国を激怒させたが、エルドアン大統領は知らん顔をしている。
エルドアン大統領がこうまで反米色を露骨にしているのは、第一に2016年夏のクーデタ未遂事件の扇動者ギュル師を米国が保護しているからであり、第二にトルコが敵視してきたクルド武装勢力に米国がいまも公然と武器供与を続けているからである。
ロシアがこのチャンスを見逃す筈はなく、プーチン――エルドアン会談は何回も行われている。あの露土戦争のルサンチマンは何処へやらトルコが米国を袖にしはじめたことになる。
こうなると予想される最悪の事態とは、トルコがNATOを脱退するリスクである。
プーチンはさかんにそのことをエルドアンに嗾け、中東における米国の影響力の削減を決定的なものにしようと、つぎにイスラエルのネタニヤフ政権に近付いて、レバノンにおけるヒズボラなどの武装集団とイスラエルの話し合いの仲介の労をとるとまで発言しはじめた。
要するに中東のカオスを、さらに混沌とさせる企図がありありとなっている。プーチンも状況対応型の政治家である。
ティラーソン国務長官は中東問題に明るく、先週もトルコを訪問し、エルドアン大統領と四時間の会談を持った。ところが、険悪ムードの打開方向は見られず、恒例の共同記者会見はなかった。
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ページを捲る度に落涙、その悲劇の本質は「寛容」という国民性の陥穽
チベットの悲劇がつぎに襲いかかるのは日本である
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ペマ・ギャルポ『犠牲者120万人 祖国を中国に奪われたチベット人が語る侵略に気づいていない日本人』(ハート出版)
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本書は涙なくして読み通せない。
行間にも氏の苦労、チベット人の悲劇、その懊悩と悲惨な逃避行のパセティックな思いが滲み出ている。中国にあっという間に侵略され、中国に味方する裏切り者も手伝って、120万もの同胞が犠牲となった。
ダライラマ法王は決死の覚悟でヒマラヤを越えてインドに亡命政府をつくった。
その表現しようのないほどの深い悲しみ、暗澹たる悲哀、血なまぐさい惨劇、しかしこのチベットの教訓こそが、日本がいま直面している危機に直結するのである。
日本人よ、中国の属国に陥落し、かれらの奴隷となっても良いのかとペマ氏は訴え続けるのである。なぜなら日本侵略計画はすでに日中国交正常化から開始されており、この謀略にほとんどの日本人が気づいていないという失態に苛立つからだ。
チベットは「寛容の国」だった。
それゆえに「寛容の陥穽」に嵌って、結局は邪悪な武装組織、つまり中国という暴力団の塊のようなならず者によって滅ばされた。
日本は平和憲法という、寛容な国家の基本法を押しつけられてから七十年も経つのに、未だに後生大事に墨守している。それが国を滅ぼす元凶であること、左翼の言う「平和憲法」擁護には騙されてはいけないことを力説している。
評者(宮崎)がペマさんと知り合ってかれこれ三十年。本書で展開されている歴史的な証言は会うたびに断片的に聞いてはいたが、本書を通じて改めて知った事実も多い。
とくにペマさんが12歳で初来日したおりにスポンサーとなって呉れた一群の善意の人々がいた。
共通の知り合いは亜細亜大学時代の恩師・倉前盛通教授(ベストセラー『悪の論理』でも知られる)だったが、その前にペマさんは埼玉県毛呂山町に住んで、チベット語を喋る木村肥佐生氏と出会った。
この木村肥佐生氏こそ、知る人ぞ知る波瀾万丈の人生を送った。
チベット潜行十年、チベット名はダワ・サンポだった。木村は英語、モンゴル語をマスターし、さらにチベット語をネィティブスピーカーのように操った。
木村がチベットに潜り込み、そこで日本の敗戦を知った。残地諜報員としての職務も自動的に解かれ、以後帰国までの流浪物語は木村自身が回想録を書いた。それをもとに木村の生涯を描いた英語本もある。
http://www.ne.jp/asahi/kibono/sumika/kibo/note/kimura/kimurahisao.htm
その木村氏がペマさんの日本における庇護者の一人だったことは聞いてはいたが、ここまで身近な存在だった事実は初めて知った。
戦後、ようやく帰国した木村が外務省へ行くと、かれの体験的情報に、外務省がまったく興味を示さなかった事実も、いかに外務省が腐っているかを証明しているのだが、その批判は別の機会に論ずる。
ともかく本書のエピソードのなかで、圧巻の一つが、この木村がペマ青年を前にして、迎えたチベットからの要人との対話の場面である。中国の傀儡となってからのチベット政界の大物が日本にやって来たときのことだ。チベット政府の内閣官房長格だったバラ氏に会ったとき、木村は言った。
(引用開始)
「閣下は私のことを覚えていらっしゃいますか?」
パラ氏は答えた
「ハイ、覚えています」
すると、木村先生はさらに乗り出した
「私はダワ・サンポです。ソクボ・ダワ・サンポです」
(中略)「私のことなど覚えているはずがない。あの頃、あなたは天下の大バラでしたから。あなたの顔をまっすぐ見られるチベット人はほとんどいなかったが、私はよく覚えているよ。私はあなたの顔を忘れない。私たちが(チベットの改革のための)嘆願書を出しに行ったとき、あなたは私たちに物を言わせずに、叱りとばした張本人だった」
そして先生は私(ペマ)を指さし、
「この子たちを国のない子供にしてしまったのはあなたたちだ」
しかし、そのときのバラ氏は立派だった。
彼は静かにこう言った。
「おっしゃることはごもっともだ。だが当時の私たちは英国をはじめ、周囲の圧力と国内の不満に挟まれ、炎の中にいるような感じで、彼ら(チベットの改革派)を国外に追放することで精一杯寛大な措置をとったつもりであったのだ。全員処刑しても収まる状況ではなかったのですから」(本書49-50p。引用止め)
ほかにも貴重な歴史的証言が詰まっている。
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メルケル独首相は女傑か、怪物か、それとも?
彼女の政策こそが、ドイツ政治を危機に追い込んだのではなかったか
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三好範英『メルケルと右傾化するドイツ』(光文社新書)
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三好模英氏は読売新聞特派員としてベルリン駐在経験が三回、ドイツ滞在が合計十一年におよぶ。ドイツ通である。
前作『ドイツリスク』で著者は山本七平賞特別賞の栄に輝いたが、その祝賀会で妙に畏まっていたのが印象的だった。三好氏はおとなしい人なのである。ところがいったん筆を執ると、本質を直角的にずばり抉り出し、物事の地下水脈の動きにまで筆が進む。
いったいドイツ政界に何が起きているのかを知るために本書は格好の現在報告書でもある。
先週、評者(宮崎)はたまたまブリュッセルに二日ほど滞在したので、時間を工面してタクシーを雇い、EU議会とEU本部の撮影に行った。
この一帯はインタナショナル・ヴィラッジとでも呼ぶべきだろうか、EU加盟国のエリートが集まり、机上の空論を戦わせながら、贅沢な官僚生活を送る所でもあり、ナショナリズムを異端視するリベラルの巣窟でもある。
ところがベルギー国民の大半がEU官僚どもを「税金の無駄つかい」と批判する。ベルギーのような小国に、しかしなぜEU本部を置いたかと言えば、国際組織の本部を誘致することでベルギーの経済的飛躍を狙ったからでもある。
しかし、そのベルギー国民が、ドイツで「ドイツのための選択肢」などの反メルケル運動が台頭し、フランスでルペン率いる「国民戦線」が第二党に躍り出てきたように、ベルギー政治の変革を希望しているのも、皮肉というほかはない。
そしてEUの旗を振ったのがドイツだった。
メルケルは保守政治家と見られがちだが、彼女は西独ハンブルグ生まれだが、東ドイツへ移住し、共産主義の教育を受けている。数学も出来たが、ロシア語がぺらぺら、政治信条はリベラル。そのうえトランプを敵視する。つまりメルケルは断じて保守政治家ではない。
プーチンのような「状況対応型政治家」の典型であると言える。それゆえ政策に大きな振幅が見られ、その「変節」の度に、欧州全体が混乱することになる。そうして文脈から見れば、いったいメルケルは世界の救世主なのか、それとも世界秩序の破壊者か?ということになる。
(余談だが、本書の裏帯が三色、黒、赤、黄色とドイツ国旗を著している)。
本書では冒頭に、エマニュエル・トッドの警句が掲げられている。何かを象徴する。
トッドは言った。
「ヨーロッパは、20世紀の初め以来、ドイツのリーダーシップの下で定期的に自殺する大陸ではないのか」(『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』、文藝春秋)。
細かな説明は除くが、このトッドこそEU解体、ユーロ解体を予言して憚らないフランスの人口学者で、かつてはスラブとムスリムとの相対的人口比較からソ連の崩壊を予測した。
メルケル独首相は女傑か、怪物か、それとも世界の破壊者か。こうした設問がでてくるのも、彼女の政策こそが、ドイツ政治を危機に追い込んだからである。そこで三好氏は、メルケルの生い立ちから、その青春期、東ドイツ時代、そしてコールの右腕として頭角を現し、やがてコールと訣別し、政権を担い、四選を成し遂げた女傑ぶりをあますところなく描き出した。
三好氏はメルケル首相を総括して「誠意の人」だとさらりと言う。//






