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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽にどうぞ
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp
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【10月21日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線
「北朝鮮のミサイルはミサイル防衛システムで撃ち落とすことができるのか?防衛予算概算要求について」
市川文一元陸自武器学校長・陸将補
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
こんにちは、エンリケです。
おまたせしました!
市川元武器学校長の、おもしろ兵器ばなしが始まります。
最初の今回は、
「61式戦車の砲身の先にある煙突のようなものは何?」
です。
疑問質問なんでもどうぞ
ではさっそくどうぞ。
エンリケ
お読みになっての感想や市川さんへの疑問・質問やご意見は、いつでもお寄せください。
⇒ http://okigunnji.com/url/169/
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【新】意外と知られていない面白兵器技術(1)
「61式戦車の砲身の先にある煙突のようなものは何?」
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
「驚くほどよくわかる防衛論」に続き、「意外と知られていない面白兵器技術」という全く趣向の異なるテーマで連載を始めます。
軍事マニアの方であれば、ほとんどご存じかもしれませんが、一般にはあまり知られていないちょっと面白い兵器の技術を紹介していきたいと思います。
兵器技術と言いながら、筆者が陸自出身のため、ほとんどが陸上兵器です。しかも、筆者の若い頃の専門が火器であるため、火器と火器に関連ある弾薬の技術が主体になります。ミサイルや車両の技術も少しはわかりますので、記憶を掘り起こしながら少しずつ取り上げていきたいと思います。
メルマガの場合、絵や写真が掲載できないので、わかりやすく説明しても限界があります。(「○○」で検索)でお知らせしますので、お手数ですがスマホかパソコンで検索いただければ、理解しやすいかと思います。検索の際は画像検索していただくと、素早く絵や写真が見つかります。
今回、本コラムを連載するにあたり、秘密にあたるかどうかは、ネット検索で公開されているかどうかを基準にしました。したがって、詳しく知りたい方はネット検索していただけると、いろいろなサイトが見つかります。ただし、ほとんどのサイトが専門的なものですから、本コラムを入り口として、逐次、専門分野に入っていくのがよいかと思われます。
前回連載の防衛論と同様、軍事関係のものはどうしても専門的になってしまうようです。防衛論もそうですが、兵器についても日常生活では無縁のものですから、一般の方がわかるような内容にするのは大変な作業です。筆者もついつい専門的な解説になってしまいますので、よくわからない場合は遠慮なくご質問ください。
それでは、早速始めます。最初の話題は、陸上自衛隊初の国産戦車からです。
▼弾丸の反動を軽減する
日本初の国産戦車は61式戦車です。その後、74式、90式、10式と続き、最新の10式は4代目です。○○式とは装備化(制式化)年度の西暦の下二桁で61式であれば1961年度に装備化です。装備化年度は装備品が実際に部隊に入る年度ではなく、予算が認められて契約をする年度です。戦車の場合契約してから2年で製造して部隊に入るので、61式戦車が実際に完成したのは1962年度になります。
陸上自衛隊で現役の戦車は74式戦車以降で、61式戦車は使われていません。しかし、多くの陸自の駐屯地では広報用として展示してありますから、全国で見ることができます。
この61式戦車の砲身の先には、昔懐かしい煙突の先と同じような形をしたものが付いています。74式戦車以降は付いていません(「陸上自衛隊の戦車」で検索)。さて、何でしょう?
これは「砲口制退器(ほうこうせいたいき)」といって、戦車が弾丸を発射したときの反動を軽減するためにあります。弾丸が発射されると、砲身は反動で後ろに下がります。この力が馬鹿にできないほど大きく、力をうまく吸収しないと命中率が下がり、よっぽど頑丈に作らないと戦車が壊れてしまいます。制退器は、日本の戦車では61式だけにしか付いていませんが、さまざまな火砲、小火器に付いています。
弾丸が砲口から出たあとに、弾丸を発射するためのガスが出ます。
これをこの砲口制退器に当てることで、砲身に前進する力が働き、砲身が後退する力を減らします。火砲の種類によって異なりますが、2割~5割の反動が吸収できます。合わせて、爆風偏向器といって砲口から出る発射ガスを側方にそらして、土埃が巻き上がるのを防止する機能も持ちます。
弾が砲口から出たあとには発射ガスが出ます。この時の砲身と発射ガスの状況を思い浮かべてください。砲口側からガスを噴射して、後ろ向きにロケットが発射されているのと同じです。この力もまた、馬鹿にできません。砲口から出る発射ガスを横か斜め後ろ向きに吹き出すことで、この時の反動も低減できます。
実は、反動を吸収するための主たる装置は「駐退機」で、半分以上の反動を吸収します。構造は、注射器のように、小さな穴から液体を出すとゆっくりとピストンが動く原理を利用しています。
最初から穴が小さいと反動を吸収できませんから、最初は穴が大きく、だんだんと小さくなり、穴が塞がれたときに止まる様子を想像してください。これで、弾丸発射の反動をスムーズに吸収できます。最終的反動は本体(戦車は車体、火砲は脚)で吸収します。
74式戦車以降は、命中精度を上げるため、APDSFS(装弾筒付翼安定徹甲弾)を撃つためという2つの必要性と、駐退機の性能が上がったという可能性から、砲口制退器は付いていません。砲身の先に「砲口制退器」のような重いものを付けると砲身が下がります(正確には下に曲がります。わずかな曲がりですが数キロ先では大きなズレになります)。当然、命中精度は落ちます。
APDSFSの弾の説明は別の機会としますが、61式戦車のような砲口制退器だとAPDSFSを撃つときにサボー(装弾筒)と呼ばれるものが干渉します(次々回に登場しますが、マニア以外には知られていない面白い構造の弾丸です。お楽しみに)。
陸自の新装備品16式機動戦闘車には再び砲口制退器と同様の機能が付けられています。砲身の先の部分にたくさんの穴が開いていますが、これが砲口制退器の役割を果たしています(「16式機動戦闘車で検索」)。砲身に直接穴を付けることで、砲身の先に重量物を付けることもなく、APDSFSの発射にも影響を与えません。
16式機動戦闘車は74式戦車と同じ弾を撃ちます。弾は同じですが、車体が装輪(タイヤ)タイプとなり、74式戦車の装軌(キャタピラー)タイプと比べると、弾丸を発射したときの反動を吸収できる能力が低くなりました。そのため、再び方向性退器の必要性が出てきたわけです。ちなみに、駐退機も74式戦車とは違ったものを使い、よりスムーズに衝撃を吸収できるようになっています。
(市川文一)
【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に2017年8月に退官。
退官後の9月にはYouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。 https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
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「61式戦車の砲身の先にある煙突のようなものは何?」
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□はじめに
「驚くほどよくわかる防衛論」に続き、「意外と知られていない面白兵器技術」という全く趣向の異なるテーマで連載を始めます。
軍事マニアの方であれば、ほとんどご存じかもしれませんが、一般にはあまり知られていないちょっと面白い兵器の技術を紹介していきたいと思います。
兵器技術と言いながら、筆者が陸自出身のため、ほとんどが陸上兵器です。しかも、筆者の若い頃の専門が火器であるため、火器と火器に関連ある弾薬の技術が主体になります。ミサイルや車両の技術も少しはわかりますので、記憶を掘り起こしながら少しずつ取り上げていきたいと思います。
メルマガの場合、絵や写真が掲載できないので、わかりやすく説明しても限界があります。(「○○」で検索)でお知らせしますので、お手数ですがスマホかパソコンで検索いただければ、理解しやすいかと思います。検索の際は画像検索していただくと、素早く絵や写真が見つかります。
今回、本コラムを連載するにあたり、秘密にあたるかどうかは、ネット検索で公開されているかどうかを基準にしました。したがって、詳しく知りたい方はネット検索していただけると、いろいろなサイトが見つかります。ただし、ほとんどのサイトが専門的なものですから、本コラムを入り口として、逐次、専門分野に入っていくのがよいかと思われます。
前回連載の防衛論と同様、軍事関係のものはどうしても専門的になってしまうようです。防衛論もそうですが、兵器についても日常生活では無縁のものですから、一般の方がわかるような内容にするのは大変な作業です。筆者もついつい専門的な解説になってしまいますので、よくわからない場合は遠慮なくご質問ください。
それでは、早速始めます。最初の話題は、陸上自衛隊初の国産戦車からです。
▼弾丸の反動を軽減する
日本初の国産戦車は61式戦車です。その後、74式、90式、10式と続き、最新の10式は4代目です。○○式とは装備化(制式化)年度の西暦の下二桁で61式であれば1961年度に装備化です。装備化年度は装備品が実際に部隊に入る年度ではなく、予算が認められて契約をする年度です。戦車の場合契約してから2年で製造して部隊に入るので、61式戦車が実際に完成したのは1962年度になります。
陸上自衛隊で現役の戦車は74式戦車以降で、61式戦車は使われていません。しかし、多くの陸自の駐屯地では広報用として展示してありますから、全国で見ることができます。
この61式戦車の砲身の先には、昔懐かしい煙突の先と同じような形をしたものが付いています。74式戦車以降は付いていません(「陸上自衛隊の戦車」で検索)。さて、何でしょう?
これは「砲口制退器(ほうこうせいたいき)」といって、戦車が弾丸を発射したときの反動を軽減するためにあります。弾丸が発射されると、砲身は反動で後ろに下がります。この力が馬鹿にできないほど大きく、力をうまく吸収しないと命中率が下がり、よっぽど頑丈に作らないと戦車が壊れてしまいます。制退器は、日本の戦車では61式だけにしか付いていませんが、さまざまな火砲、小火器に付いています。
弾丸が砲口から出たあとに、弾丸を発射するためのガスが出ます。
これをこの砲口制退器に当てることで、砲身に前進する力が働き、砲身が後退する力を減らします。火砲の種類によって異なりますが、2割~5割の反動が吸収できます。合わせて、爆風偏向器といって砲口から出る発射ガスを側方にそらして、土埃が巻き上がるのを防止する機能も持ちます。
弾が砲口から出たあとには発射ガスが出ます。この時の砲身と発射ガスの状況を思い浮かべてください。砲口側からガスを噴射して、後ろ向きにロケットが発射されているのと同じです。この力もまた、馬鹿にできません。砲口から出る発射ガスを横か斜め後ろ向きに吹き出すことで、この時の反動も低減できます。
実は、反動を吸収するための主たる装置は「駐退機」で、半分以上の反動を吸収します。構造は、注射器のように、小さな穴から液体を出すとゆっくりとピストンが動く原理を利用しています。
最初から穴が小さいと反動を吸収できませんから、最初は穴が大きく、だんだんと小さくなり、穴が塞がれたときに止まる様子を想像してください。これで、弾丸発射の反動をスムーズに吸収できます。最終的反動は本体(戦車は車体、火砲は脚)で吸収します。
74式戦車以降は、命中精度を上げるため、APDSFS(装弾筒付翼安定徹甲弾)を撃つためという2つの必要性と、駐退機の性能が上がったという可能性から、砲口制退器は付いていません。砲身の先に「砲口制退器」のような重いものを付けると砲身が下がります(正確には下に曲がります。わずかな曲がりですが数キロ先では大きなズレになります)。当然、命中精度は落ちます。
APDSFSの弾の説明は別の機会としますが、61式戦車のような砲口制退器だとAPDSFSを撃つときにサボー(装弾筒)と呼ばれるものが干渉します(次々回に登場しますが、マニア以外には知られていない面白い構造の弾丸です。お楽しみに)。
陸自の新装備品16式機動戦闘車には再び砲口制退器と同様の機能が付けられています。砲身の先の部分にたくさんの穴が開いていますが、これが砲口制退器の役割を果たしています(「16式機動戦闘車で検索」)。砲身に直接穴を付けることで、砲身の先に重量物を付けることもなく、APDSFSの発射にも影響を与えません。
16式機動戦闘車は74式戦車と同じ弾を撃ちます。弾は同じですが、車体が装輪(タイヤ)タイプとなり、74式戦車の装軌(キャタピラー)タイプと比べると、弾丸を発射したときの反動を吸収できる能力が低くなりました。そのため、再び方向性退器の必要性が出てきたわけです。ちなみに、駐退機も74式戦車とは違ったものを使い、よりスムーズに衝撃を吸収できるようになっています。
(市川文一)
【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に2017年8月に退官。
退官後の9月にはYouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。 https://youtu.be/6hPY3vgpidw
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