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方法論に終始する「問題解決型学習」

今井信吾
■■ 転送歓迎 ■■ No.2748 ■■ H30.01.24 ■■ 7,975部■■


 従来の授業形態を知識詰め込みの「知識注入型教育」であるとして批判する中で導入されたのが「ゆとり教育」であった。昭和55年度から小学校、中学校、高校と徐々に実施されたが、大まかに言へば「(1)教科内容と授業時間数の削減、(2)教科書のない『総合的な学習の時間』の設置、(3)自ら課題を見付け自ら学び考へる主体的な問題解決力の育成」といふものである。
しかし学力の低下が指摘されたことから「脱ゆとり教育」が指向され、新たに提唱されたのが主体的・対話的で深い学びの実現を目指す「アクティブラーニング」(問題解決型学習)であった。

 もともとアメリカの教育学者、ジョン=デューイ(1952年歿)の学習理論で、「学習」とはそもそも能動的に行ふものであり、知識の暗記のやうな受動的な学習ではなく、自らの問題を発見し解決していく能力を身につける、といふものである。

 この学習の特徴は、まづ自分で教科書で基本的な知識を理解することを前提とし、それを踏まへて授業で積極的に他者と対話しながら自分の意見を形成していくところにある。現在、学校現場ではこの「アクティブラーニング」の研修会や授業実践が盛んに行はれてゐる。

 筆者が参加したある研修会で、講師の大学教授は「私の90分間の授業で講義するのは10分間だけ。あとは学生によるディスカッション(討論)やプレゼンテーション(報告・発表)を自由にさせてゐます」と語ってゐた。つまり、先生が教壇に立って教授することを極力避け、学生の自主性に任せるといふ方法なのである。

 一昨年度、某校(一年生)の「総合的な学習」の時間で課題研究が行はれた。まづ各自が自分に関心のあるテーマを準備する。それに基づいて研究テーマを絞り込むためのブレーンストーミング(集団思考、集団発想法)を行ふ。テーマが決まったら、グループごとの討論、ICT(コンピュータ?やネットワークを使ふ情報通信技術)による発表を行ひ、最後は到達目標に達したか否かをルーブリック(評価指標)によって生徒たちを指導する。

 生徒の中には、テーマと真剣に向き合ってゐない者もゐて、少し行き詰まると「先生、別のテーマに変へてもいいですか?」と言ってくる。そして新しいテーマに関する情報をインターネットから巧みに引用し情報を上手に「整理」して発表を終へる。
論点などない。したがって、生徒同士が真剣に討論することもないし、発表者に質問をすることもない。すべてが表面的な作業である。生徒の知識理解は二の次なのである。これでは学力がつくはずがない。

 須(すべから)く「学問は学者の人格、志、生き方を離れては存在しない」(福田恆存)ことを忘れてゐる。

 このやうに今の教育界ではカタカナ語を頻用した方法論に終始して、基本的な「ものを考へる(言葉を学ぶ)」「志を育てる」といふ教育が等(なほ)閑(ざ)りにされてゐる。学習指導要領がいふ「人間性豊かな教育」を実践するためには、自由気ままにおしゃべりをすることではない。
古典的名著や偉人の生き方に謙虚に学び、「人生」の質を高めなくてはならない。古典に宿る先人の命に触れれば、生徒の心も自づと躍動する。心を働かす訓練なくして単に方法や技術に固執する考へ方は、社会制度を変革すれば社会は良くなるとした人間不在の社会主義思想にも通じるのである。

 筆者は「アクティブラーニング」と言ふならば、幕末の「吉田松陰先生に学べ!」と言ひたい。先生の『野山獄読書記』を開くと、「甲寅((安政元年))10月念4日((24日))入獄」からその年の12月までの僅かの期間に『資治通鑑』や『日本外史』など「大略106冊」を読破したと記されてゐる。
先生は熱心に読書をする一方で、ほぼ全国を旅して知識を吸収し、大事な事柄については抄録を作り、感想を記し、野山獄や松下村塾では弟子たちと真剣な討論も展開したのである。

 これぞ我々が目指すべき「問題解決型学習」のお手本ではないか。わが国にも立派な先達がゐるのである。かうした具体的な教育実践に真摯に学ぶ姿勢こそ、今日の教育界に最も必要なことだと思ふ。

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