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新保祐司先生の講演「出光佐三と日本人」をお聞きして

武田孝太郎
■■ 転送歓迎 ■■ No.2747 ■■ H30.01.22 ■■ 7,975部■■


 昨期の第20期(第29回)国民文化講座は、昨年6月10日、靖国神社境内の靖国会館に於いて開催された(参会者は111名)。講師は文芸批評家で都留文科大学副学長・教授の新保祐司先生であった。演題は「出光佐三と日本人―その高き精神的気圏に触れよ― 」。

 出光佐三(いでみつさぞう)(1885~1981)は、周知のやうに明治末年から戦後の昭和50年代まで活躍した実業家であり、石油元売り会社・出光興産の創業者として、また「人間尊重の経営理念」でも名高い事業家であった。
一昨年12月公開された百田尚樹原作の映画「海賊と呼ばれた男」のモデルとしても脚光を浴びた。そこでは戦後の混乱期から高度経済成長までの時代を揺らぐことなく石油事業に挺身した姿が描かれてゐた。

 先生は、40歳過ぎまで出光興産に勤務されたが、創業者・出光佐三の言葉やエピソードからその人間像を紹介された。さらに内村鑑三や国木田独歩らの作品を幅広く引用されながら、明治を生きた人々の姿をも語られた。ことに佐三の「日本人にかえれ」との言葉を取り上げ、戦後の日本人は日本人ではなくなってをり、我々が取り戻すべきは明治の精神であると仰った。

 以下、印象深く私がお聞きした点を中心に、当日のお話の一端を記してみたい。


■出光佐三の人物像

 まづ印象深かったのは出光佐三といふ人物が、我々が一般的に考へる「名経営者」といふものとは異なる非常にユニークな経営者だったといふことであった。出光は社員に「黄金の奴隷たるなかれ」と言ひ、また、新入社員に対しては「卒業証書を捨てよ」(学歴や形式に囚はれることなく、学校で学んだことを実業に生かせ、といふ意)と言ってゐたさうだ。

 出光自身、神戸高等商業学校(現神戸大学経済学部)を卒業後、大手商社への内定を断り、小麦粉や石油・機械油などを扱ふ従業員数名の酒井商店といふ店に就職するなど、当時としても型破りな人物であった。

 先生が出光興産に勤務時のエピソードも大変面白いものであった。

 先生が新入社員であった頃、ガソリンスタンドに配属されたとのことで、そこでの朝礼では国旗掲揚を担当されてゐたさうだ。出光のスタンドのポールには日の丸が掲げられてゐたとのこと。その経営理念の根柢には深い愛国心があった。

 また、出光が著名な建築家に依頼して建設された社屋やガソリンスタンドのお話も印象的であった。例へば、先生も勤務された京都支店の建物は、土地の形状に合はせるのではなく、御所に正対して作られたため道路に対してはいびつな形になってゐた。
また、デザインを重視して屋根のないガソリンスタンドを作った結果、雨天時に社員は雨合羽を着て給油にあたったとのこと。しかも、社員はそれを不便とも思はず、むしろさうした職場環境を誇りに思ひ、生き生きと働いてゐたといふお話を興味深くお聞きした。

 現代ではちょっと見当らない会社ではないかと感じた。


■「真のナショナリスト」

 出光は、働く意義は「真に働く姿を通して、社会・国家に示唆を与へる」ことであると説いたといふ。そのやうな出光について、先生は、事業家ではなく思想家であり、一種の「狂気」を持った人物であったと評された。普通の人間であれば、保身を図り楽な方に流されるが、出光はさうではなかった。
ナショナリストだが、国家を頼るのではなく、むしろ役所の言ひなりにならずに、石油の国際大手を向うに回して戦った。かういふ自分の足で立つナショナリストこそ本物であること、そして、昨今ナショナリストと呼ばれる人は、国家の力を使って自分たちの考へを実現しようとする「軽薄な自称ナショナリスト」であると仰った。
真のナショナリストも世の中に存在するとは思ふが、圧倒的に少数派であるのは間違ひないと思ふ。

 出光のこの姿勢を指して、先生は「狂気」と仰ったのだが、この狂気は明治人に共通したものであったと指摘され、その一例として内村鑑三の『デンマルク国の話』(明治44年、1911)といふ講演録を紹介された。これは、ドイツとの戦争に敗れ、国土の割譲を強いられたデンマーク人が、残された荒野を切り墾いて、いかにして国を復興させたかといふ話である。
その中で内村は「戦敗必ずしも不幸ならず」、「精神において敗れない民が最も強い民である」と説いた。この話は当時の人々をいたく刺激したとのことで、雪印の創業者・黒澤酉蔵は、北海道を豊かにし、日本人を健康にせんとして北海道で酪農を始めたといふ。

 普通の人間なら二の足を踏むであらうことを自らの使命だとして躊躇せず実行するといふのが、先生の仰る「狂気」なのであらう。

 更に先生は、出光と内村に共通するものとして、「信仰と愛国」を挙げられた。出光は皇室への尊崇の念が強く、出生地の福岡県宗像市に鎮座する宗像大社を厚く信仰したことでも知られるが、出光、内村ともにアウトサイダーであることを指摘された。出光は前述の通り役所に盾突く反骨者であったし、内村は日露戦争で反戦論を唱へてゐた。
そして、そのアウトサイダーたる所以は、愛国者であることであった。世の趨勢に合せるのが愛国者だと思はれがちだが、それは「小なる愛国心」であり、時に国を思へばアウトサイダーになることも辞さない出光や内村のやうな姿勢は「大なる愛国心」によるものであると仰った。

 また、「聡(さと)き愚人と愚かなる智者」といふ言葉を通じて、心を働かせず頭だけで生きてゐるエリートは「愚かなる智者」であり、出光や内村は「聡き愚人である」と仰った。「聡き愚人」とは世間からは愚かなやうに見えるが実は正しい行ひをする者であり、一見賢いやうに見えるが結果的に愚かな振舞ひになってしまふ者が「愚かなる智者」のことだと思った。


■「聡き愚人」が多くゐた明治時代

 先生は、出光、内村に加へて、「聡き愚人」の例として秋山好古(よしふる)を挙げられた。陸軍に入った秋山は、旧松山藩主の留学の供としてフランスへ渡った。当時、陸軍ではドイツ留学が主流であり、フランス行きはその後のキャリアが傍系となることを意味した。
旧藩主とはいへ、既に主従関係にないので供をする義務はない。それでも秋山はフランス随行を選んだ。かうした要領ではなく義理を重んじ、道徳を行動の核とするのが「聡き愚人」であると先生は仰った。かういふ人が明治には多くゐたが、今は少なくなってゐる。日本にとって危機的状況であると仰った。


■昭和天皇の出光佐三へのお歌

「高き精神的気圏」と表された出光の精神性の高さを表すエピソードとして、先生は昭和56年3月、出光が数へ97歳で亡くなった際に、昭和天皇が詠まれた御製を紹介された。

 国のためひとよつらぬき尽くしたるきみまた去りぬさびしと思ふ

 昭和天皇が「さびし」とお感じになるとは、やはり出光はとてつもない人物であったのだと思ふ。特定の人への御製は極めて稀のことだといふ。

■明治が輩出した「非凡なる凡人」

 先生は、明治時代を読み解くもう一つの言葉として「非凡なる凡人」を挙げられた。明治時代は多くの偉人が出たが、彼らは一人で仕事をしてゐたわけではなく、「非凡なる凡人」たちが脇を支へてゐたと仰った。この「非凡なる凡人」とは、国木田独歩の作品名を引用されたものである。
この小説は、貧しい生れながら努力して学ぶ友人の姿を描いたものであるが、友人が電気工事に取り組む姿を見て、独歩は「荘厳さを感じた」と書いてゐる。生業(なりはひ)に取り組む姿が、独歩に荘厳と思はしめるほど実直に熱心に取り組んでゐたといふことであらう。このやうな「非凡なる凡人」がゐたといふことも、明治時代の大きな特色であると仰った。

「聡き愚人」と「非凡なる凡人」が形作った明治について、先生は、「明治の精神は豊潤であった。一方、この豊潤さは干からびてしまった。この豊潤さをどのやうに受け継いでいくかが大切だ」と仰った。昨今は、作家百田尚樹氏の著作や映画などで出光佐三がブームになってゐるが、一過性で終らせることなく、日本の経営者がぜひ学んでいくべきことだと述べ、講演を締めくくられた。


■講演をお聞きして

  何よりもまづ、出光の精神性の高さに大変感銘を受けた。そして、かういった高い精神性は出光固有のものではあらうが、加へて明治の人々に共通するものだったのだと改めて感じさせられた。

 中でも、新保先生が仰った「聡き愚人と愚かなる智者」といふ言葉が大変心に残った。いまの我が国では目先の功利から行動するやうな「愚かなる智者」が多いやうに感じられるが、一方で出光佐三ブームを鑑みると、出光の生き方に魅力を感じる人も多いはずで、「聡き愚人」といふ生き方が受け入れられる素地は十分にあると思ふ。

 新保先生が仰るやうに、明治の精神の豊潤さを枯らすことなく引き継いでいけるやう、まづは自分たちが「愚かなる智者」とならないやうに努めることが大事なことだと肝に銘じた。

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■訂正 前号で以下の文章がありましたが、訂正させていただきます。

【訂正前】
当時の国民は、それまで見たこともなかった。

 容姿と、この軍楽隊の統制の姿と、全く体験のない西洋音楽の衝撃に、得体の知れない脅威を感じ取ったのではないかと想像する。

【訂正後】
当時の国民は、それまで見たこともなかった容姿と、この軍楽隊の統制の姿と、全く体験のない西洋音楽の衝撃に、得体の知れない脅威を感じ取ったのではないかと想像する。
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