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家庭内暴力などに苦しむ女性たちのためにサンガ天城という駆け込み寺を立ち上げ、救いの手を差し伸べてきた戸澤宗充さん。
戸澤さんが僧侶となり、現在の活動を続けるきっかけは辛い戦争体験と、突然のご主人の死でした。

致知出版社の人間力メルマガ 2018.1.22
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戸澤 宗充(日蓮宗一華庵・サンガ天城庵主)
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青山 俊董(愛知専門尼僧堂堂頭)

※『致知』2018年2月号【最新号】
※特集「活機応変」P70
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【青山】
戸澤さんはどういう経緯で仏門にお入りになったのですか。

【戸澤】
少し遡ってお話ししますと、父を育てた継母が大変意地の悪い女性でございまして、よく母が割烹着で顔を覆って2階へ駆け上がっていたのを幼心に覚えています。
たぶんその継母に苛められていたのだと思うんですが、結局継母とは別れて、父の従兄弟を頼って家族で満洲へ渡ったんです。

私たちのように向こうへ行った日本人は、皆贅沢な暮らしをしておりましたが、私が小学校2年生の時に終戦を迎えて、それまでと全く逆の生活になりました。

父はソ連に憲兵と間違われてシベリアへ抑留され、母と兄と私は牡丹江の収容所に入れられました。

収容所は零下40℃という過酷な環境で、周りの日本人は次々と死んでいきました。
妊娠している女性もいましたが、ほとんどが死産で、頼まれて小さな亡骸を公園へ埋めに行ったことが何度もあります。

収容所から解放された後、しばらく満洲の荒野を放浪して歩いたのですが、その間に周りの女性たちがソ連兵に乱暴されるところを何度も見てきましたから、私はいまだにあの人たちのことを平等に見られないんです。

戦争が悪いんだといくら自分に言い聞かせても、中学生くらいの女の子たちが乱暴されて泣き叫ぶ姿がどうしても頭から離れません。
私の中ではまだ戦争は終わっていないんです。

【青山】
大変なご苦労を……。日本へはいつお戻りになったのですか。

【戸澤】
母が病気になったために、なかなか引き揚げ船に乗ることができなかったのですが、昭和21年の八月にやっと母が立ち直って、奇跡的に帰国を果たしました。

帰国後は母の実家の山梨へ身を寄せ、そこでも母はまた肩身の狭い思いをしながら私たちを育ててくれました。
幸い、5年して父が帰国しまして、私が中学1年の時に東京へ移りました。

その後、私も若かったものですから恋をして、結婚しました。
二人の子供にも恵まれ、ようやく人並みの幸せを手に入れることができたんです。

ただ、いま振り返っても悔やまれるのですが、私は幸せのあまり有頂天になってしまって、厳寒の満洲で苦労して私を育ててくれた母への感謝の念が薄らいでいました。
そんな私に鉄槌が下されたのでしょう。
二男が生まれた2日目に、夫が交通事故であっと言う間にいなくなったんです。

【青山】
あぁ、ご主人が事故に……。

【戸澤】
本当に悲しくて、辛くて、自分も後を追おうと思って線路の傍をさまよい歩いたり、しばらく荒んだ生活を続けておりました。

けれどもある時、何も知らないで寝ている子供たちの姿を見て、ハッとしたんです。
自分は何と愚かな母親だろうと気がついて、涙が止まらなくなりました。
本当なら満洲で死んでいてもおかしくなかったのに生かされ、そして夫の死という悲しみの中でも生かされたのは、私に何かせよという仏の声だったんですね。

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