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Common Sense: 「国良し、民良し、子孫良し」の三方良し経済 ~ 高橋洋一『日本を救う最強の経済論』から

 経済を成長させる「国良し」、失業率を下げる「民良し」、そして教育投資を通じた「子孫良し」の経済政策。
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■1.経済政策の目的は「失業率を減らし雇用を確保する」こと

 偏向マスコミが「報道しない自由」を発揮し、野党も決して言及しないデータがある。失業率、失業者数の顕著な減少である。

 総務省の「労働力調査」[2]によれば、この7月の完全失業者数は191万人、2.8%だった。通常、転職中の人なども含めると3%が完全雇用状態と言われるので、それをさらに下回っている。民主党の野田内閣の最後の年、平成24(2012)年7月の完全失業者が285万人、4.3%だから、安倍政権になってから100万人近くの失業者が職を得ていることになる。

「経済政策は何のために行うのか。それは一言で言えば、『失業率を減らし雇用を確保する』ためである」とは、第一次安倍内閣でブレーンを務めた高橋洋一氏の最新刊『日本を救う最強の経済論』[1]の「はじめに」の、それも冒頭の書き出しである。弊誌も930号『大御宝(おおおみたから)の経済学 』[a]で、次のように述べた。

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「経済」とは、もともと「経世済民」の略であり、・・・ 経済指標としては株価やGDPなどが用いられることが多いが、「世を経(おさ)め、民を済(すく)う」という目的から見れば、失業、倒産、自殺というような指標の方が、国民の幸不幸を直接あらわしている。
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 したがって、この高橋氏の巻頭からの断言には心から賛同した。氏が安倍内閣のブレーンとして、その結果を出したことに敬意と謝意を表したい。

 しかし、なぜ『失業率を減らし雇用を確保する』ことが一番大切なのか。氏はさすがにプリンストン大学の客員研究員として、世界最先端の経済理論を追求した蓄積から、その理由を体系的に説いている。


■2.「失業率が高くなるだけで、社会はたちまち不安定化する」

「失業率が高くなるだけで、社会はたちまち不安定化する」と、氏はこれまた簡潔明瞭に説明する。

 まずは自殺者の増加。「経済的な要因で自殺する人の数と失業率にはかなり強い相関がある」と氏は指摘する。クビになったり、企業が倒産して、にっちもさっちも行かなくなって、自殺する人が出る、というのは、常識的に理解できる。

 年間自殺者数は平成10(1998)年に、それまでの2万人台前半から一気に3万人を突破し、以降、15年間も3万人台が続いた。バブル崩壊後の不良債権増加や株価低迷のあおりで大手金融機関が経営危機に陥り、貸し渋りによって企業倒産が急増して、失業率も4~5%台が続いたからである。

 それが昨年は2万1千人台。失業者数が100万人近くも減って、自殺者も1万人以上減った、という実態である[3]。自殺者が15年間も毎年1万人ほど増えていた、とすると、合計で15万人。広島の原爆による死者と同じ規模ではないか。誤った経済政策が原爆級の被害を国民生活に与えたのである。

 第二に犯罪の増加。失業で生活に行き詰まって犯罪に走る。被害者は無論のこと、加害者も捕まって刑務所に送られ、前科者としての余生を送らなければならなくなる。仕事さえあれば、被害者も加害者も生まれなかったのに、失業が両者の不幸を生み出す。

 第三に生活保護の受給者が増える。損失は生活保護のコストだけではない。働けるのに仕事がないために国の厄介になっている、という事は、本人の生きがいや誇りを失わせ、社会全体の自主独立の気風を損じ、国家の元気を失わせる。

『五箇条のご誓文』と同時に明治天皇が国民に向かって出された「国威宣布の宸翰(しんかん)」には、「天下億兆一人も其所を得ざるときは皆朕が罪なれば(天下の億兆の民が一人でもその所を得られないときは、すべて私自身の罪である)と述べられている。

「所を得る」とは、一人ひとりの国民が共同体の中で自分に適した役割を果たすということで、それによって幸福な共同体がつくられ、各人の生きがいも得られる。失業とは、まさにこの理想に反した状態である。国民の幸福を祈られる天皇の大御心を実現する事が日本の伝統的な政治の理想であるから、失業者を減らすことは、まさにこの伝統に則った経済政策なのである。


■3.失業率を下げる方法

 それでは、どうしたら失業率を下げる事ができるのか。高橋氏はこれを第二次大戦前の世界大恐慌から日本経済を救った高橋是清の「高橋財政」によって説明している。

 昭和6(1931)年に4度目の大蔵大臣に就任した高橋是清は、翌昭和7(1932)年11月に、政府の国債を日銀が直接引き受けて貨幣を供給し、それを用いて政府が低金利と財政支出拡大の積極政策をとった。この「高橋財政」により日本は世界に先駆けて恐慌から脱出した。

 1929年の工業生産を100とすると、1933年はアメリカが64、イギリス88、フランス82、ドイツ61に対して、日本は113と逆に成長している。1933年に登場したアメリカ・ルーズベルト政権のニュー・ディール政策は有名だが、実態は1934年の工業生産は66,1935年でも76と低迷を続けている。[4]

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 財政政策と金融政策のフル活動によって、日本経済をデフレからいち早く脱出させたという点で、世界的な経済学者ジョン・メイナード・ケインズより大恐慌脱出策を実施した高橋財政は、むしろ海外では高く評価されている。[1, p17]
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 高橋財政がなぜ恐慌脱出に効果を上げたか、を分かりやすく説明する譬(たと)え話が「ヘリコプター・マネー」だ。たとえば、政府が国債を日銀に売って得た膨大な一万円札をヘリコプターからばらまく。一万円札を拾った人々は今まで我慢していた服を買ったり、外食をしたりするだろう。

 こうして人々が消費を増やすと、商店やレストランの売り上げがあがり、その中には従業員を増やすところも出てくる。職を得た人がまた消費を増やす。こうして1万円をばらまくと、国全体では数万円の消費増、すなわち店から見れば所得増につながる。このように市中に出回るお金を増やすことで景気が良くなり、失業率が下がるのである。

 しかし、もし政府がこの金を増税でまかなったら、それだけの効果は出ない。税金をとることで民間の消費を減らしてしまうので、その分を政府が支出しても、国全体としての消費は増えないからである。


■4.経済成長による税収増

 国債を発行してお金をばらまくのでは、国の借金を増やすだけだ、という批判があるだろう。貯蓄を重んじ、借金を嫌う日本国民の質実な気風からは、当然の反応である。

 しかし、経済が成長すれば、税収はそれ以上に伸びて、国債を償還する余裕が生まれてくる。前章の例で1万円をばらまいたら、それで店が儲かって、より多くの税金を払うようになる。新たに雇われた人も消費税や所得税を払う。

 名目成長率(物価上昇を含めた成長率)が1%高くなると、その時々の経済の状況によって異なるが、2001年から2009年の平均では3.13%の税収の伸びになったと推定されている。[1, p68]

 実際に民主党政権時代の平成24(2012)年度の税収は78.7兆円だったが、安倍政権の約5年間で22兆円も増加して、平成29(2017)年度は史上初の100兆円突破が見込まれている。この功績についても偏向マスコミは「報道しない自由」をフルに発揮しているが。


■5.ヘリコプターマネーで狂乱インフレにならないか?

 ヘリコプターマネーが生むもう一つの不安は、そのばらまきが狂乱インフレを起こさないか、ということである。これに関しては高橋氏は史実で答えている。

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 高橋是清はこの日銀引き受けをしたので、インフレ率が100%を超えるようなハイパーインフレが起きて狂乱物価に国民が苦しんだと言われているのだが、果たしてそうだったのか。
 当時の東京卸売物価指数によれば、高橋是清が日銀引き受けをする1932年のインフレ率は11.5%、1933年15.8%、1934年2.0%、1935年2.6%、1936年4.2%というように、当時としてはそれほど高いインフレ率ではなかった。まして、悪性インフレとはとても言えない。
 こうした事実に反することが、今でも政治家やマスコミ人などの少なくない人びとに信じられている。[1, p17]
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 通貨の供給量が増えれば物価が上がるというのは、部屋の暖房を入れれば室温が上がるのと同じ、当然の現象である。だから、快適な室温を保つために暖房の強弱をコントロールするように、物価上昇を適正な範囲に収めるよう通貨供給量をコントロールすれば良い。

 理論的には2%程度のインフレ下では、ほぼ3%の完全雇用が実現する、ということで、多くの国はインフレ率2%を目指している。安倍政権がインフレ目標を2%としているのも、このためである。

 狂乱インフレを恐れて通貨供給量を増やさないということは、室温が高くなりすぎることを恐れて、暖房をいっさい入れない、というのと同じである。それで冷え切った部屋でガタガタ震えながら我慢していたのが「失われた20年」であった。


■6.経済成長率で世界最下位の「失われた20年」

「失われた20年」とは、平成3(1991)年から日本経済が20年以上にわたって低迷した時期をさすが、この前後の世界の中での日本の名目経済成長率ランキングは以下の通りであった。

・1980年代=138国中下から28位
・1990年代=150国中最下位
・2000年代=188国中最下位
・2010年代=190国中下から15位

「日本経済の場合、もともと経済規模が大きいので、下から20位くらいであれば十分にやっていける」と高橋氏は指摘する。それを前提とすると1980年代、そして安倍政権の登場した2010年代はまずまずの成長率だが、1990年代、2000年代は見事に「世界最下位」を記録している。

 この成長率と高い…

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