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 平成29年7月5日発行 vol.438
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 斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」
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新例を開くための大義名分は何か
──何のための歴史論か 8
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 私は運動家ではありませんが、やむにやまれぬ思いから、「御代替わり諸儀礼を『国の行事』に」キャンペーンを、ひとりで始めました。いまのままでは間違いなく悪しき先例が踏襲されるでしょう。同憂の士を心から求めるとともに、友人知人の皆様への拡散を切にお願いします。


 さて、以下、拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの抜粋を続けます。一部に加筆修正があります。


第2章 有識者ヒアリングおよび「論点整理」を読む

第5節 何のための歴史論か──「女性宮家」創設論のパイオニア・所功京産大名誉教授


▽8 新例を開くための大義名分は何か

 所先生は「象徴」「世襲」の天皇制度を強化する必要があると仰せです。

 すでに述べましたが、「世襲」とは、小嶋和司東北大学教授(故人)が述べているように、皇室という「王朝による支配」の意味ではないでしょうか?(小嶋「『女帝』論議」=『小嶋和司憲法論集2 憲法と政治機構』昭和63年所収)

 だとすれば、男系男子継承の断絶をもたらすこと、つまり皇室による王朝支配に終止符を打つことは、天皇制度の強化とはいえません。

 もちろん、先生はそんなことは百も承知であるかのように、こう述べています。

「この〈まず秋篠宮家の御長女が同家を継がれ、御次女が新しい宮家を立てられ、次いで皇太子家の御長女が新しい宮家を立てられるという〉ような女性宮家の設立は、確かに前例がありませんから、いろいろ慎重に配慮しながら実現する必要があります。
 ただ、皇室の歴史を広く見渡せば、古代にアジアで初めて皇太后を女帝とし、初めて藤原氏を皇后に立て、中世まで前例のなかった男性宮家を設け、そのうち数家を世襲親王家とし、やがて桂宮家では皇女を養子に迎えて当主としましたが、 これらはいずれも新例を開いたことになります」

 新例だという認識であるのならば、過去の歴史にあったかのような、まどろっこしい説明や議論は不要ではありませんか?

 先生はまた

「あらためて歴史に学び、現実を正視しながら、将来への展望を開く」

 と表明していますが、正確さに疑念のある断片的な歴史論を、何のために展開するのでしょうか。歴史に学ぶのなら事実に対する謙虚さが求められます。一般人ならもかく、およそ歴史家にとって、歴史はご都合主義の道具ではないはずです。

 逆に、それでも新例を開く必要がある、というのなら、そのための大義名分が求められます。けれども、秋篠宮家、東宮の各内親王に婚姻後も、皇室にとどまり、果たしていただくべき「皇室のご活動」とはいかなるものなのか、具体性が先生の所論にはまったくといっていいほど見えません。

 生身の人間の将来に関わる重大事です。「皇室の御活動」維持という目的は十分な新例の根拠となり得るのでしょうか。歴史に学ぶなら、行動主義が悠久なる皇室の本質でないことも明らかなはずです。


以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります


◇ 筆者のプロフィール ◇

斎藤吉久(さいとう・よしひさ) 昭和31年、第32代崇峻天皇の后・小手姫(おてひめ)が里人に養蚕と機織りを教えたとの物語が伝えられる福島県・小手郷(おてごう)に生まれる。子供のころ遊んだ女神川は姫の故事に由来する。弘前大学、学習院大学を卒業後、総合情報誌編集記者、宗教専門紙編集長代行などを経て、現在はフリー。著書に『天皇の祭りはなぜ簡略化されたか』など。過去の発表記事は斎藤吉久のブログで読める。「戦後唯一の神道思想家」葦津珍彦(あしづ・うずひこ)の「没後の門人」といわれる


━━━━━━━━━━━━《《《著書紹介》》》━━━━━━━━━━━━━
『天皇の祈りはなぜ簡略化されたか─宮中祭祀の危機─』 斎藤吉久著
定価(1700円+税)

天皇ご在位20年、ふたたび宮中祭祀の破壊が始まった!政教分離の名のもとに側近らが祭祀を破壊してきた知られざる歴史を検証しながら、たったお一人で祭祀を守ろうとされた昭和天皇と今上陛下のご心情に迫る。http://www.namiki-shobo.co.jp/
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