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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28年(2016)11月28日(月曜日)弐
通算第5112号
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2020 次の大統領選挙。民主党候補ラインアップ
クリントン人脈から女性が四名、リベラル色強い候補者ばかり
****************************************
バイデン副大統領は、すでに野心潰え、事務所を畳む。
ヒラリー・クリントンも、二回落選。次の望みは絶たれ、批判の強かった「クリントン財団」を株式会社にでもするか、先行き社会活動でも展開するのだろう。
民主党の若手がはやくも準備に入ったとワシントンポストが伝える六人の「候補」予定とは、誰々か。
コリー・ブッカー上院議員がファースト・ランナーとなるかも知れない。ニューアーク市長。スタンフォード大学にロード奨学金で入学。フットボールの花型選手だった。黒人。47歳。カリスマ性がある。
キルステン・ジリブレッドはヒラリーの愛弟子、ヒラリーが大統領選のため、NY上院銀を止めたときの後釜。49歳。女性。
カマラ・ハリスはカリフォルニア州から上院議員に当選したばかり。カリフォルニア州司法長官からリベラル色を鮮明にして上院議員選挙では1300万ドルの政治資金を集めた辣腕に衆目が集まる。黒人女性。
ジョン・ヒッケンルーパーはコロラド州知事。共和党主流と変わらない穏健派ゆえに、予備選で苦戦が予想される。コロラド州は、民主党がトランプを破った。
アミィ・クロブッチャーはミネソタ州選出の上院議員。女性。
そしてダークホウスで、もっとも強力な候補はファーストレディのミッチャル・オバマ大統領夫人だ。ファーストレディが大統領候補というのも、ヒラリー流儀に倣うことになり、一部に支持者がいる。
□◇▽◎み□◇▽◎や□◇▽□ざ○◎□○き◎□▽▽
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 しょひょう BOOKREVIEW
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戦前も戦後も偽善的な知識人はやまのようにいたが
晩年に訣別した三島の親友たちを冷静に描ききった傑作
♪
松本徹『三島由紀夫の時代 芸術家11人との交錯』(水声社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
三島由紀夫はいうまでもなく現代日本の文豪。
「その卓越した才能、感受性、知識、意思をもって、一人でその営為を遂行したわけではない。昭和という時代のただ中で、さまざまな人々と出会い、学び、競い合い、反撥もすれば惹かれあい、共鳴し、影響を受け、自らを形成しながら、創作活動を展開した」として松本氏は本書執筆の動機を書く。
作家論、文学論、伝記、そして政治思想、哲学論は夥しく書かれたが、同時代人と三島との交遊に的を絞った観点からの三島交友録論はほとんど書かれなかった。
すでに十数冊の三島論をものにされている松本徹氏は、こんどは、そうしてテーマに挑んだ。
「三島が浅からぬ係わりを持った、同時代の優れた人々を採り上げ、相互の係わりを見ようと思いだった」
それが本書となって結実した。
登場する11名は川端康成、六世中村歌右衛門、大岡昇平、武田泰淳、福田恒存、蓮田善明、渋沢龍彦、橋川文三、細江英公、林房雄、そして江藤淳である。岡山典弘氏の『三島由紀夫が愛した十人の美女たち』と一対をなすかのように、登場する同時代人はすべてが男性である。
これまで比較論として頻繁に対比されてきた石原慎太郎も、世界的音楽家の黛敏郎も入らない。親友だった村松剛も、著者によれば、或る事情を考慮して入れていない。外国人のドナルドキーン、サイデンスティッカーも撰ばれていないが、逆に松本氏が撰んだ11名のうち、三島の死後も生きた川端、大岡、武田、福田、渋沢、橋川、林とは喧嘩でもしたかのように晩年、疎遠となった。江藤に至っては三島が殆ど相手にしていなかった。その詳しい経緯を残された文献や手紙などから詳細に検証してゆく。
松本氏は、その交遊の来歴と疎遠に至るまでの経緯を辿る。
▼いま、熱烈に見直される蓮田善明
じつは少年時代の三島に、決定的なまでの影響を与えた作家は蓮田善明である。
三島の恩師清水が蓮田らと主催した文芸誌に、三島の処女作が掲載された。蓮田が激賞したからだった。
その蓮田をまっとうに評価した評論が少ないが、さきごろ蓮田宅で『花盛りの森』の草稿が発見され、新聞が大きくつたえた(小誌参照)。
三島は蓮田を尊敬して止まなかった。
蓮田はジョホールバルで上官(連隊長)を射殺し、その拳銃で自裁したが、その行為を、三島は「稲妻のような美しさ」と比喩した。
後日、松本健一らの調査によって、連隊長は立派な日本人であり、可能な限り多くの将兵を無事に日本に帰そうと努力していた。ところが、それを蓮田ら徹底抗戦組は「売国的」と解釈したのだ。
あれは「最大の『内部の敵』に対する怒りだった」と書いた三島は、論理をいきなり一般論へと転化し、知識人の偽善を嘆き、憤り、『戦後における偽善に装飾されたとき、どのような腐臭を放ち、どのように文化の本質を毒したか』を嘆いた。
つまり三島は戦後知識人の偽善と嘘に憤怒していた。それが昂じて親友とも口を利かなくなり、林房雄、川端康成、村松剛らと距離をおき、死への疾走を開始したのである。
松本氏は「偽善とは敗戦以降の我が国のあり方を指弾する三島のキーワードである」と指摘して、つぎのように続ける。
「占領下において強要された民主主義を、真性の民主主義であるかのように言いつくろい、軍政局に迎合、他者の糾弾に奔走したしたのが、当時の言論弾圧の主流であり、占領が終わっても本質的な変化はなく、同じ態度を押し通し続けて、今日に及んでいる。その不真面目さは言語に絶するが、この風景は戦時中のものでもあったのだ」(55p)。
GHQの占領政策にこびへつらい、先頭にたって協力した所謂「学者」、「知識人」の処世は、軽蔑の対象でしかない。
とくにGHQの焚書坑儒といえる発禁図書のリスト策定に多くの日本の知識人が、その選定に加わっていたことは驚きである。
戦後、日本の書店や図書館から消え去ってしまった書籍の多くは「正しい歴史」「正しい日本哲学」「思想」だったのだから。
そして欧米がいかに邪悪であるかを叙した歴史書が多かった。これらの存在はたしかにGHQの占領政策にとって大きな障害であった。
▼蓮田と西郷への挽歌が江藤淳を変えた
数年前、西郷隆盛の戦跡を追って評者(宮崎)が熊本県の田原坂を訪れたとき、ふとそこに蓮田善明の歌碑がひっそりと建っていることを知った。評者はそのときまだ江藤淳の『南州残影』を読んでいなかった。
江藤の西郷再評価の旅は、この田原坂の蓮田善明の歌碑(蓮田善明先生文学碑)から始まるのだ。
いま評者の書棚にも置いてある写真パネルの一つが熊本の郷土史家が撮影し、贈ってくれた蓮田の歌碑である。
ふるさとの 駅に降り立ち
眺めたる かの薄紅葉
忘らえなくに
松本氏はこう書く。
「三島が自決したとき、江藤は」(中略)口を極めて、三島を罵った。「自衛隊内で憲法改正を訴えた上での自決を徹底的に私的な行動だと、あざといとも思われる言い方で、強引に極め付けたのである。そればかりか小林秀雄との対談で、『病気だ』とまで言い放ち、小林に厳しくたしなめられた」(250p)
江藤は左翼だったから、正気と狂気の区別が出来なかった。
ところが、その江藤淳に顕著な変化が現れたのだ。「それも奇怪なことに、見方を百八十度転換させたのである」
松本氏はこれを父親の死と吉田満の『戦艦大和の最後』へ江藤の称賛評価、つまり死者への鎮魂歌を見いだした。
したがって江藤淳の『南州残影』は近代的思考の矛盾を払拭できないまま、西郷隆盛は日本の思想であると言ってのけるほどに変身したのである。
ほかにも大岡昇平との距離感の肥大化、福田とは演劇を巡っての喧嘩がすでに多くが語られたが、三島が一時期、なぜかぐいと接近した橋川文三の見当外れの書評に関して松本氏は辛辣に触れているが紙幅がなくなった。
力作評論、三島研究家には必読本であろう。
◇○◇□▽◎ ◇○◇□▽◎ ◇○◇□▽◎
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 しょひょう BOOKREVIEW
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三島由紀夫「国際シンポジウム」の貴重な全記録
今後の三島由紀夫の文学、思想の研究に不可欠の重要研究の集大成
♪
井上隆史ほか『混沌と抗戦 三島由紀夫と日本、そして世界』(水声社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
この分厚い一冊は昨秋に東京大学と青山学院大学で三回にわたって連続的に開催された『国際三島由紀夫シンポジウム』の全記録である。
編者は井上隆史、久保田裕子、田尻秀樹、福田大輔、山中剛史の各氏。
『国内外30名を超える豪華執筆陣による多彩な三島論』が編まれた動機も、「豊饒なる混沌に満ちた三島由紀夫の淵源へと肉迫し、いまだ謎に包まれたその全体像を開明する」ことにある。
そこでまずは目次を一覧することにしよう。
第一章は「没後45年 三島の遺産と展望」
書き手は井上隆史、松本徹、イルメラ・日地谷・キルシュネライト、ドナルドキーン、徳岡孝夫、宮本亜門、平野啓一郎、芥正彦、高橋睦郎である。これだけの三島文学愛好者(もしくは懐疑組)が一同に揃ったことだけでも壮観である。あいにく評者、海外旅行中で出席できなかったが、どういう対話や発表があったのか、ずっと知りたいと思っていた。
第二章は「21世紀文学としての『豊饒の海』」。登壇は井上隆史、スーザン・J.ネイピア、四方田犬彦、デニス・ウォシュバーン。
第三章は『時空を超える三島論』として、竹本忠雄氏らがでてくる。マルロォと三島は強烈に刺激しあい、そして永遠というテーマに挑んだ。
三島研究会でも、竹本氏には何回も出講しただいて、このテーマの話を伺っている。
第四章(正確には第二部の第二節にあたる)は『保守思想』で、このなかで、初めて三島の政治思想への追求がなされる。書き手は浜崎洋介、南相旭、梶尾文武で『天皇概念の革命性』などが語られている。
第五章は「21世紀に三島文学を読む」と題され、久保田裕子、有本伸子、武内佳代と女性論客が三人。
第六章は『三島由紀夫と情動の問題』
田尻芳樹、田中祐介、遠藤不比人が書いている。
第七章(第三部第一節)は「ラカン vs ミシマ」とあって、福田大輔、エリックローラン、佐々木孝次、原和之の各氏がラカンとの比較を展開している。
ここでいうラカンとはジャック・ラカンのことで、「無意識は言語のように構造化されている」としてフロイトへの回帰を主張した。
精神医学の見地から三島
を国際的に論じ、天皇論における三島の言語の矛盾などが論じられている。//
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平成28年(2016)11月28日(月曜日)弐
通算第5112号
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2020 次の大統領選挙。民主党候補ラインアップ
クリントン人脈から女性が四名、リベラル色強い候補者ばかり
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バイデン副大統領は、すでに野心潰え、事務所を畳む。
ヒラリー・クリントンも、二回落選。次の望みは絶たれ、批判の強かった「クリントン財団」を株式会社にでもするか、先行き社会活動でも展開するのだろう。
民主党の若手がはやくも準備に入ったとワシントンポストが伝える六人の「候補」予定とは、誰々か。
コリー・ブッカー上院議員がファースト・ランナーとなるかも知れない。ニューアーク市長。スタンフォード大学にロード奨学金で入学。フットボールの花型選手だった。黒人。47歳。カリスマ性がある。
キルステン・ジリブレッドはヒラリーの愛弟子、ヒラリーが大統領選のため、NY上院銀を止めたときの後釜。49歳。女性。
カマラ・ハリスはカリフォルニア州から上院議員に当選したばかり。カリフォルニア州司法長官からリベラル色を鮮明にして上院議員選挙では1300万ドルの政治資金を集めた辣腕に衆目が集まる。黒人女性。
ジョン・ヒッケンルーパーはコロラド州知事。共和党主流と変わらない穏健派ゆえに、予備選で苦戦が予想される。コロラド州は、民主党がトランプを破った。
アミィ・クロブッチャーはミネソタ州選出の上院議員。女性。
そしてダークホウスで、もっとも強力な候補はファーストレディのミッチャル・オバマ大統領夫人だ。ファーストレディが大統領候補というのも、ヒラリー流儀に倣うことになり、一部に支持者がいる。
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戦前も戦後も偽善的な知識人はやまのようにいたが
晩年に訣別した三島の親友たちを冷静に描ききった傑作
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松本徹『三島由紀夫の時代 芸術家11人との交錯』(水声社)
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三島由紀夫はいうまでもなく現代日本の文豪。
「その卓越した才能、感受性、知識、意思をもって、一人でその営為を遂行したわけではない。昭和という時代のただ中で、さまざまな人々と出会い、学び、競い合い、反撥もすれば惹かれあい、共鳴し、影響を受け、自らを形成しながら、創作活動を展開した」として松本氏は本書執筆の動機を書く。
作家論、文学論、伝記、そして政治思想、哲学論は夥しく書かれたが、同時代人と三島との交遊に的を絞った観点からの三島交友録論はほとんど書かれなかった。
すでに十数冊の三島論をものにされている松本徹氏は、こんどは、そうしてテーマに挑んだ。
「三島が浅からぬ係わりを持った、同時代の優れた人々を採り上げ、相互の係わりを見ようと思いだった」
それが本書となって結実した。
登場する11名は川端康成、六世中村歌右衛門、大岡昇平、武田泰淳、福田恒存、蓮田善明、渋沢龍彦、橋川文三、細江英公、林房雄、そして江藤淳である。岡山典弘氏の『三島由紀夫が愛した十人の美女たち』と一対をなすかのように、登場する同時代人はすべてが男性である。
これまで比較論として頻繁に対比されてきた石原慎太郎も、世界的音楽家の黛敏郎も入らない。親友だった村松剛も、著者によれば、或る事情を考慮して入れていない。外国人のドナルドキーン、サイデンスティッカーも撰ばれていないが、逆に松本氏が撰んだ11名のうち、三島の死後も生きた川端、大岡、武田、福田、渋沢、橋川、林とは喧嘩でもしたかのように晩年、疎遠となった。江藤に至っては三島が殆ど相手にしていなかった。その詳しい経緯を残された文献や手紙などから詳細に検証してゆく。
松本氏は、その交遊の来歴と疎遠に至るまでの経緯を辿る。
▼いま、熱烈に見直される蓮田善明
じつは少年時代の三島に、決定的なまでの影響を与えた作家は蓮田善明である。
三島の恩師清水が蓮田らと主催した文芸誌に、三島の処女作が掲載された。蓮田が激賞したからだった。
その蓮田をまっとうに評価した評論が少ないが、さきごろ蓮田宅で『花盛りの森』の草稿が発見され、新聞が大きくつたえた(小誌参照)。
三島は蓮田を尊敬して止まなかった。
蓮田はジョホールバルで上官(連隊長)を射殺し、その拳銃で自裁したが、その行為を、三島は「稲妻のような美しさ」と比喩した。
後日、松本健一らの調査によって、連隊長は立派な日本人であり、可能な限り多くの将兵を無事に日本に帰そうと努力していた。ところが、それを蓮田ら徹底抗戦組は「売国的」と解釈したのだ。
あれは「最大の『内部の敵』に対する怒りだった」と書いた三島は、論理をいきなり一般論へと転化し、知識人の偽善を嘆き、憤り、『戦後における偽善に装飾されたとき、どのような腐臭を放ち、どのように文化の本質を毒したか』を嘆いた。
つまり三島は戦後知識人の偽善と嘘に憤怒していた。それが昂じて親友とも口を利かなくなり、林房雄、川端康成、村松剛らと距離をおき、死への疾走を開始したのである。
松本氏は「偽善とは敗戦以降の我が国のあり方を指弾する三島のキーワードである」と指摘して、つぎのように続ける。
「占領下において強要された民主主義を、真性の民主主義であるかのように言いつくろい、軍政局に迎合、他者の糾弾に奔走したしたのが、当時の言論弾圧の主流であり、占領が終わっても本質的な変化はなく、同じ態度を押し通し続けて、今日に及んでいる。その不真面目さは言語に絶するが、この風景は戦時中のものでもあったのだ」(55p)。
GHQの占領政策にこびへつらい、先頭にたって協力した所謂「学者」、「知識人」の処世は、軽蔑の対象でしかない。
とくにGHQの焚書坑儒といえる発禁図書のリスト策定に多くの日本の知識人が、その選定に加わっていたことは驚きである。
戦後、日本の書店や図書館から消え去ってしまった書籍の多くは「正しい歴史」「正しい日本哲学」「思想」だったのだから。
そして欧米がいかに邪悪であるかを叙した歴史書が多かった。これらの存在はたしかにGHQの占領政策にとって大きな障害であった。
▼蓮田と西郷への挽歌が江藤淳を変えた
数年前、西郷隆盛の戦跡を追って評者(宮崎)が熊本県の田原坂を訪れたとき、ふとそこに蓮田善明の歌碑がひっそりと建っていることを知った。評者はそのときまだ江藤淳の『南州残影』を読んでいなかった。
江藤の西郷再評価の旅は、この田原坂の蓮田善明の歌碑(蓮田善明先生文学碑)から始まるのだ。
いま評者の書棚にも置いてある写真パネルの一つが熊本の郷土史家が撮影し、贈ってくれた蓮田の歌碑である。
ふるさとの 駅に降り立ち
眺めたる かの薄紅葉
忘らえなくに
松本氏はこう書く。
「三島が自決したとき、江藤は」(中略)口を極めて、三島を罵った。「自衛隊内で憲法改正を訴えた上での自決を徹底的に私的な行動だと、あざといとも思われる言い方で、強引に極め付けたのである。そればかりか小林秀雄との対談で、『病気だ』とまで言い放ち、小林に厳しくたしなめられた」(250p)
江藤は左翼だったから、正気と狂気の区別が出来なかった。
ところが、その江藤淳に顕著な変化が現れたのだ。「それも奇怪なことに、見方を百八十度転換させたのである」
松本氏はこれを父親の死と吉田満の『戦艦大和の最後』へ江藤の称賛評価、つまり死者への鎮魂歌を見いだした。
したがって江藤淳の『南州残影』は近代的思考の矛盾を払拭できないまま、西郷隆盛は日本の思想であると言ってのけるほどに変身したのである。
ほかにも大岡昇平との距離感の肥大化、福田とは演劇を巡っての喧嘩がすでに多くが語られたが、三島が一時期、なぜかぐいと接近した橋川文三の見当外れの書評に関して松本氏は辛辣に触れているが紙幅がなくなった。
力作評論、三島研究家には必読本であろう。
◇○◇□▽◎ ◇○◇□▽◎ ◇○◇□▽◎
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三島由紀夫「国際シンポジウム」の貴重な全記録
今後の三島由紀夫の文学、思想の研究に不可欠の重要研究の集大成
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井上隆史ほか『混沌と抗戦 三島由紀夫と日本、そして世界』(水声社)
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この分厚い一冊は昨秋に東京大学と青山学院大学で三回にわたって連続的に開催された『国際三島由紀夫シンポジウム』の全記録である。
編者は井上隆史、久保田裕子、田尻秀樹、福田大輔、山中剛史の各氏。
『国内外30名を超える豪華執筆陣による多彩な三島論』が編まれた動機も、「豊饒なる混沌に満ちた三島由紀夫の淵源へと肉迫し、いまだ謎に包まれたその全体像を開明する」ことにある。
そこでまずは目次を一覧することにしよう。
第一章は「没後45年 三島の遺産と展望」
書き手は井上隆史、松本徹、イルメラ・日地谷・キルシュネライト、ドナルドキーン、徳岡孝夫、宮本亜門、平野啓一郎、芥正彦、高橋睦郎である。これだけの三島文学愛好者(もしくは懐疑組)が一同に揃ったことだけでも壮観である。あいにく評者、海外旅行中で出席できなかったが、どういう対話や発表があったのか、ずっと知りたいと思っていた。
第二章は「21世紀文学としての『豊饒の海』」。登壇は井上隆史、スーザン・J.ネイピア、四方田犬彦、デニス・ウォシュバーン。
第三章は『時空を超える三島論』として、竹本忠雄氏らがでてくる。マルロォと三島は強烈に刺激しあい、そして永遠というテーマに挑んだ。
三島研究会でも、竹本氏には何回も出講しただいて、このテーマの話を伺っている。
第四章(正確には第二部の第二節にあたる)は『保守思想』で、このなかで、初めて三島の政治思想への追求がなされる。書き手は浜崎洋介、南相旭、梶尾文武で『天皇概念の革命性』などが語られている。
第五章は「21世紀に三島文学を読む」と題され、久保田裕子、有本伸子、武内佳代と女性論客が三人。
第六章は『三島由紀夫と情動の問題』
田尻芳樹、田中祐介、遠藤不比人が書いている。
第七章(第三部第一節)は「ラカン vs ミシマ」とあって、福田大輔、エリックローラン、佐々木孝次、原和之の各氏がラカンとの比較を展開している。
ここでいうラカンとはジャック・ラカンのことで、「無意識は言語のように構造化されている」としてフロイトへの回帰を主張した。
精神医学の見地から三島
を国際的に論じ、天皇論における三島の言語の矛盾などが論じられている。//