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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28年(2016)11月15日(火曜日)
         通算第5089号  <前日発行>
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 次々と過激な政策を「修正」しつつ、共和党主流派と妥協の道を探る
  トランプ政権引き継ぎチームの政策発表から過激さは除去されている
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 トランプはオバマケア(医療保険制度改革法)を廃止すると強固に訴えた。しかし、10日にホワイトハウスでオバマ大統領と会見後、基本姿勢の修正を行って「一部を残す」とした。
 とくに?「保険会社が契約しようとする人の病状を理由に加盟を阻止することを禁止する」、?「子供が成人しても一定年数は親の保険に加入し続けられる」などの条項は残すと修正発言(11月11日付けの「ウォールストリート・ジャーナル」紙とのインタビューに答えて)をしており、公約だった「全面廃止」は遠のき、或るいはオバマ法の大幅改正という方向に変わるかも知れない。
なにしろ既に1800万人が加盟しているオバマケアを一晩で覆ることは不可能である。

このようにトランプは、次々と過激な政策を「修正」しつつ、共和党主流派と妥協の道を探りはじめた。共和党の議会協力なくては、政策は実行に移されないからで、トランプ政権引き継ぎチームの政策発表から過激さはみごとに除去されている。

 トランプがオバマケアに反対してきた最大の理由は保険料の高騰だった。しかし隠れた理由は「アメリカンドリーム」との矛盾なのである。
 すなわち誰もが成功をなし得るチャンスがあるというアメリカ人の夢の実現は、基底の発送が弱肉強食の自由競争にあり、努力と個人の才能であり、それを怠る人でも平等に医療がうけられるという(日本のような)福祉政策は、アメリカの国是にはない「社会主義」的な施策だから反対だったのだ。

 イスラムの不法移民排斥についても、「犯罪歴のある不法移民」(およそ三百万人いると想定されているのだが。。。)に対象を限定し始めた。
イスラムを敵視する姿勢はトランプに最初からなかったが、マスコミが誇大に歪曲してつたえた部分が多く、そもそも1100万人もいる不法移民を追い返せることは事実上不可能であることをトランプは知っている。

 また不法移民はヒスパニック、とりわけチカノ(メキシコ人)に限らず、東欧諸国や中国人の巧妙なパスポート偽装、インチキヴィザや、第三国経由の密入国など手口が巧妙になっていて、対策が急がれている。

 メキシコとの国境高い壁を建設するなどと言っても、条件は「費用はメキシコの負担」として逃げ道は最初から用意されている。
 米国とメキシコの国境線は3200キロ。費用は裁定見積もっても1000億ドルである。げんに国境のフェンスと簡単に言っても、ハンガリーとセルビア国境は144キロ、有刺鉄線を張り巡らせたが、距離が短いからだ。トルクメニスタンはアフガニスタンとの国境450キロに有刺鉄線に加えて電流を通している。これはトルクメニスタンが金持ちだから出来ることである。

 したがって不法移民を追い返し、国境に壁をつくるなどという公約なのだが、本気に取った移民有権者がニューメキシコ州、コロラド州、そしてカリフォルニア州でヒラリーに票を投じた。
 現実にメキシコ国境の不法移民斡旋はマフィアの牛耳るブローカーが手数料を取って仲介しており、またアメリカ側の警備の弱点があって、5000ドルの賄賂で不法移民とわかっていても目を瞑っている。つまり不法移民が根絶することはあり得ない。

 TPPに関してトランプはニュアンスを少し緩めたが、一貫しており、またオバマ政権自体が、成立をあきらめて、11月11日には「断念」を表明した。日本がTPPに前のめりに議会で法案を通過させてことはなんとも皮肉である。
これで米国のTPP署名批准の可能性は消えた。

同時にEU諸国も、TIPP(環太平洋パートナーシップ)は既に欧州側から否決した。米国との自由貿易協定にしても、マルムストローム欧州委員は「FTA交渉は相当長期間にわたって冷蔵庫入りするだろう」と暗い見通しをのべている。

北米自由貿易協定(NAFTA)に関してもトランプは再交渉を主張しているが、これは既に発効しており、カナダ、メキシコが再交渉の応じる気配はない。
 ただしトランプ当選直後、カナダドルが下落したが、メキシコペソに至っては10%もの暴落だった。


 ▼トランプはなぜ「パリ協定」からの離脱に固執するのか?

 問題は「パリ協定」からの離脱である。
 トランプは石炭産業の復活、シェールガス開発の推進を主張し、エネルギーの国内産業の復活を掲げた。石炭産業の強い地盤では、トランプはヒラリーに圧勝しているように、この公約は一歩の後退もないだろうと思われる。
 パリ協定は先進国だけに過重な負担がかかることを離脱の理由として掲げ、シェールガス開発が頓挫している現状を愁い、再活性化を推進するとした。

またカナダからのガス・パイプライン(キーストーンパイプライン)の敷設をオバマ政権は環境保護を理由に反対してきたが、これも復活させる。

なにしろエネルギー産業はオバマ政権の環境優先政策によって145もの厳しい規制条件が付帯されており、一方で風力、太陽光パネル発電などには補助金が支給されるという有様だった。

トランプのブレーンは「風力発電、太陽光パネル発電などナンセンスの極み」と批判してきており、石油鉱区の梃子入りを始め、頓挫してきたシェールガスの開発再開に力点を移すことになるだろう。

日本との関連では日米原子力協定の見直しが含まれており、原発燃料の確保に支障がでるおそれがあると日本政府は警戒している。

 トランプの唱えた「大型減税」は、法人税を35%から15%にするとし、国民の所得税も引き下げと言ってきたが、これはパフォーマンスであって、本気で実施されるとは考えにくい。

なぜなら議会がすぐさま承認するという展望がなく、共和党主流派がトランプに強調しない限り、実現は難しいし、たとえ実現にむかうにせよ、2017年中には見通しが暗いのではないか。


 ▼金融改革には前向き

 ただ金融改革の目玉にドットフランク法(消費者保護法)の撤廃が盛り込まれているため、銀行は新たな融資先の広がりを展望している。このためウォール街の銀行株がそろって高騰したのだ。

 公共投資を増やすとしていることは市場も前向きに捉えている。実現となると、赤字財政の肥大化との兼ね合いとなり、議会対策を入念にしない限り、やはり目的の達成は容易ではない。
政権引き継ぎチームが表明したインフラ投資は5500ドルの規模。この巨額は国防費に匹敵し、もし予算を成立させるとなるとNATO、日本への防衛費負担増要求は強烈になる。

基本的にはインフラ整備、道路、橋梁、トンエルなどの立て替え、修復工事を大規模に行うプログラムだが、同時に部品、建設機材、材料などはアメリカ製品を優先して使うと明言しており、米国現地工場のない日本企業にとっては期待薄。輸出振興を唱えるアベノミクスとしても、成果はあまり期待できない。

またまた利上げを遠のかせ、その前にイエーレンFRB議長の任期が切れるときに新任のFRB議長の選定があり、いずれにしても掛け声と期待で市場は湧いても、実現への時間がたいそうかかるだろう。レーガン政権のとき、ボルカーFRB議長がレーガノミクスの実現に大きな障害となったように、イエーレンFRB議長はトランプの金融政策に順応する金融通貨政策を執るだろうか?


 ▼中国は短絡的、あまりにも短絡的

 通貨政策では中国に45%の関税を掛け、「ホワイトハウスに入ったら、その日のうちに中国を『為替操作国』と認定する」としてきたが、現行法では、大統領は財務省に対して、為替操作国に認定せよと迫るだけの権限しかなく、財務省は中国よりであるゆえに、すぐに認定はしないだろう。

実際にオバマ政権下で、ルー財務長官は北京に何回も飛んで、赤字国債の中国保有が世界第二位でもあることから、比較的穏健な政策に終始し、共和党の圧力を何度も躱して、『為替操作国』に中国を認定してこなかった。
王洋副首相は米中戦略対話の中国側の責任者であり、早速にも新政権の周辺とコンタクトを取るためか、11月21日から23日まで訪米し、ワシントンで通商関係担当幹部等と会見する。

中国はTPPを断念してことに喜びを隠せず、トランプ大歓迎、かれは中国の味方だと短絡的な反応ばかりが目立つ。
TPPは中国を排除していたから、中国としては敵対的な取り決めとして神経質になっていたため、霧が晴れたという感じなのだ。だからトランプ様々と、ちょっと考えても、単純すぎるはしゃぎぶりだった。あまりに短絡的なのである。

そのうえ、オバマにならって「米国は世界の警察官の座を降りる」としているため、南シナ海の中国軍の進出は不問にされるのではないかと淡い期待を寄せるのだ。

みなみに中国系のメディアはトランプを「特郎普」と書くが、台湾系、香港系は「川普」と表音文字を当てている。中国はトランプ(特朗普=ティロンプと聞こえる)として、特別に明るい一般人という意味を込めているが、台湾系は川のように流動的な人というとらえ方だ。「川普」はチュアンプと聞こえる。
そういえば「トランプはアウトサイダー」も、「特郎普是局外人」と表現している。

そのうえ、民主党政権なら声高に叫ぶ人権、法治に関してトランプは殆ど関心がないかのように沈黙してきた。
この立場も中国としては、人権や言論の自由への圧力がトランプ政権になるとかからないと陽気な読み方に傾いている。

中国に対してトランプは通商面で厳しい上、オバマ訪中のおりに赤絨毯を引かないという挙に出た中国の非礼に「わたしならきびすを返して帰国した」と反撥したように、国家の威厳を傷つけられた場合には容赦しない。

ただし南シナ海や台湾防衛には言及がなく、日本の尖閣防衛にしても、あれは日米安保条約の守備範囲というオバマの解釈を踏襲するかどうかは不明である。

  ▽△◎み□◇▽や□◎○ざ◎□○き○□◇
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)貴誌前号、トルコの記事ですが、エルドアン政権がトランプを歓迎し、シリア問題の鍵は米ロ協調体制の構築にあるとするのは論理としては頷けるのですが、オバマ政権は反アサド政府軍に資金と武器を供与してきたわけで、トランプは、この方針を百八十度代えるということでしょうか
   (JJセブン)


(宮崎正弘のコメント)エルドアンはアサド政権打倒組で、この点ではイランと同じですが、驚くべし仇敵=ロシアと組み、反アサド派に空爆するロシアのことは不問としています。
米国はすくなくとも、新政権発足まで、反アサド武装勢力の支援を継続するでしょう。
 トランプは、中東問題で、具体的にどうするか。おそらく補佐官とペンタゴンの方針に従うのでしょうが、国防長官、国務長官の指名公聴会は二月ですから、本当に新しいアメリカの中東政策がみえてくるのは、それ以後でしょう。

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