◆工藤雪枝『特攻へのレクイエム』を読み解く
※要旨
・平成8年、31歳のとき、不規則な仕事などの影響もあって、体調を崩した。
命に関わりはない病気とはいえ、精神的にも肉体的にもつらい毎日に、日々泣きながら過ごし、
「こんな風に生きているくらいなら、死んだほうがましだ」
とさえ考えた。
そんな状況で手にしたのが、特攻隊員の遺書や日記を集めた本だった。
読みながら、あとからあとから溢れる涙を抑えることができなかった。
・祖国のために殉ずるという決意のもと、若く健康でありながら眼前に迫っている死を見つめて書かれた彼らの日記や遺書は、私がこれまで読んだどんな書物よりも力強く、切なく、つらかった。
一方で、私は涙をこぼしながら、雨が、なかるみの泥を流していくかのごとく、自分の心が澄んでいくのを感じた。
・人間が生きているか、死んでいるかを区別するのは魂であり、精神である。
私が真剣に特攻隊の遺書に対峙したとき、むしろ私は死んでおり、特攻隊員たちは生きているとも思った。
・魂や精神性のなさ、これは戦後の日本社会が抱えてきた状況であると、昨今つくづく思う。
他人を思いやる気持ち、家族や国を思う気持ちが年々なくなってきているのではないだろうか。
・過去、現在、未来と続く歴史軸の中に自分が生かされているのを感じて、礎を築いた人々に感謝すること、そして、今ある現在を価値ある未来へと繋げていくことを我々一人一人が真剣に考えて行動するべきである。
特攻隊の資料にふれ取材するたびに、そう思う。
・特攻隊員達は、生と死との思いを日々感じながらも、明るく朗らかにいつも変わりなく規則正しい毎日を生きていた。
「出撃の時は完全な体調で」
と健康診断を受け食事に気を配った。
書道、茶道、音楽を嗜む人もいた。
・研ぎ澄まされる感受性。
体員達は、残された時間の一瞬一瞬を大切に生き、食事をするときでもどんな時でも「これが最後かもしれない」という気持ちで、厳粛に「時間」に対峙していた。
・彼らは暇があると、日記や手紙を書いた。
何も書くことはなくとも、とにかく軍隊生活の毎日を記録しておくことで、生きているという痕跡を残したいと考えたからである。
「具体的に自己を表現し得るのは、今の生活にあってこの日記だけなのだ」
と、ある隊員は書き残している。
・鹿児島県知覧の知覧特攻平和会館に残されている特攻隊員の遺影。
そこには、まるで晩年の人物だけが待ちうるような穏やかで、満ち足りた充足感、悟りの境地にも似た澄み切った表情が数多く並んでいる。
・とりわけ真剣さと、凛とした気概が感じられるものは、出撃の際の出陣式、そして水盃を交わす光景だ。
敬礼をしてまっすぐ前を見つめる眼差しの先にあるものは何か。
一人一人が並々ならぬ決意を秘めた、引き締まった表情をしている。
しかし、決して力んでなどいない。
端正で清冽な表情だ。
・実際に特攻隊の出撃を見送った人々は皆、いかに彼らが立派で、「まるで神のようにみえた」かということを語る。
出撃の際の白黒の、少々ぼやけた写真を見ていても、私にも何か普通では考えられないような感情を秘めた雰囲気が充分伝わってくる。
・彼らの直筆の書を読むと、はっきり日本が敗戦に向かっていることを自覚した上で、自分達の死が日本にとってどんな意味合いがあるのか、必死に見つけ出そうとしている軌跡が表現されている。
いかに彼らが冷静に、しかしもがき苦しみながら、その葛藤の中にそれぞれの答えを見出そうとしていたのかが良くわかる。
・送別会において、10名を代表して畠山少尉が特攻教官へ、淡々と、悟りきったように、静かに、しかし力強く別れの言葉を述べた。
「先輩を差し置いて、未熟な私達が栄えある特攻先陣を拝命して、責任の重大さを痛感しています。
将校、准士官、下士官、兵と、出身と階級は異なっても、祖国を愛する愛国心に変わりはありません。
戦争が終わったら、世界から尊敬される、平和で豊かな文化国家を建設して、人類の平和と繁栄に貢献する、日本を再建してください。
部下の遺族のことを、よろしくお願いいたします」
・田形准尉は「後のことは頼みます」という言葉にこそ、特攻精神の真髄が秘められていると感じた。
・フィリピン、日本、アメリカと特攻隊員達への尊敬と慰霊をみてくると、真の意味で国のために貢献する、究極的には殉ずるという行為の価値と困難さを知っている人達だけが、特攻隊員の魂を真に癒しているように感じる。
・知覧特攻平和会館の来館者の多くが、特攻隊員達の遺書に接して、その筆跡の素晴らしさ、内容の立派さに感動し、いかに特攻隊員達が、自分達とは違うのだろうかという感嘆の気持ちを表現している。
・数多くの遺書や日記を読めば読むほど、現代を生きる私達が想像もできないくらいのレベルで、自分達の生の意義を自問自答していたと実感するのだ。
・英国の戦史家であるバジル・ハートはいう。
「もし平和を欲するならば、戦争を正しく理解しなければならない」
・日本という国に生まれ、日本という国を信じ、国への忠誠を果たす。
戦争さえ終結すれば、今、ここで自分達が命を懸けてこの国を守れば、平和でかつ尊敬に値する国である日本は再生するという想いを、彼らは抱いていた。
・本当の意味で、特攻隊員達の死を無駄にするか、すなわち特攻隊員達を犠牲者とするかは、現代を生きる私たちにかかっている。
彼らの精神、そして散華していった目的を現代に生かし、特攻隊員たちが望み、希求していたような祖国日本をつくりあげることで、彼らの遺志は達成される。
・特攻要員となった隊員達の宿舎を当時の軍の上層部が、励ましに訪れることもあった。
しかし、実際に隊員達に接してみると、階級でも年齢でもずっと上の参謀達が、何もかける言葉がなくなってしまったという。
むしろ、そんなときは特攻隊員達が、
「私たちに任せてください。しっかりやりますから」
と言い、どちらがどちらを励ましているのか解らなくなってしまったと、田形准尉は私にそう語った。
※コメント
多くの戦史モノ、特攻に関する文献の中でも、分析と文章力に優れた一冊であると思う。
どんな歴史的な出来事も書き手によって、心に沁みるかそうでないか変わるものだ。
改めて、今回そのことに気づかされてもらった。
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