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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官でもあります。
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エンリケ
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剣人ルポ―サムライカルチャー再発見(7)
験流手裏剣術・研武塾代表 山下知緒(やました・ともお)
◆カタナは武士の魂(2)
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□はじめに
日本刀に関するエッセイの第2回は、武芸者以上にエキセントリックな刀鍛冶をご紹介しましょう。私の愛刀を鍛えた刀匠はオカルトがかった奇才だったそうですが・・・
そもそも職人とはヒトよりもモノとのつき合いを優先する求道者が多く、ひとクセもふたクセもあるのが当たり前。
「モノに精通すれば神にも通じる」というのが職人道の極意であり、想像を絶するオタクたちが集う業界です。
そんな彼らのあやしい魅力に触れてみましょう。
▼伝説的な刀匠
素人が本格的な作刀をするのは無理だが、小柄(こづか)という和製ナイフの製作であれば、一部の鍛冶工房や博物館などで有料体験ができる。
私が刀鍛冶を体験したのは、都内の住宅密集地にある工房だった。鍛冶場は物置小屋ほどの広さで「こんな狭い場所で刀が造れるのか?」とビックリしたものだ。小柄は反りのない直刀に仕上げるため、焼き入れ前に刀身を逆反りに曲げておく必要がある。つまり、焼き入れによる刃部の膨張分だけ刀身を刃側へ湾曲させておき、焼き入れ後の反り返りでプラスマイナスゼロとするわけだ。焼けた刃を水桶に入れる瞬間の爆発的な反動は鳥肌が立つほど感動的であり、興味ある人には是非オススメしたいが、6万円近い費用がかかるので気軽に参加できないのがネックだ。
鼻の穴の中まで煤(すす)だらけとなるやたら暑い作業場での重労働を一度でも味わうと、鍛冶という仕事の厳しさを思い知らされる。炭にまみれる鍛冶屋は炭鉱夫と同様に肺病が多いらしい。それゆえに世襲の崩れた現代にあっても、あえて鍛冶屋になろうという人には心底頭が下がる。刀匠となるための資格は、徒弟制の厳しい現場で5年の修行を積まねば得られない。それほどの苦労をしても、刀鍛冶の実入りは決していいものではない。人間国宝ともなれば金銭に変えられない栄誉が得られるが、それにしても努力ほどには報われない仕事である。
人間国宝に認定された刀匠には、高橋貞次(たかはしさだつぐ)、宮入行平(みやいりゆきひら)、月山貞一(がっさんさだいち)、隅谷正峯(すみたにまさみね)、天田昭次(あまたあきつぐ)、大隅俊平(おおすみとしひら)らがおり、彼らの作品は数百万円という高額で取り引きされている。国宝となっている百振以上の刀は今のところ古い時代の作ばかりだが、いつの日か現代刀が殿堂入りするやも知れない。そう考えると、今なお続く伝統の鼓動がリアルに実感できるだろう。
さて、ここで参考までに、古(いにしえ)の刀匠をさわりだけ紹介しておこう。
●大原安綱(おおはらやすつな)は、酒呑童子(しゅてんどうじ)を退治したと伝えられる「童子切(どうじぎり)」を鍛えた平安時代の刀匠だ。童子切は天下五剣の1つで、日本刀の最高傑作とも讃えられる。
●三条宗近(さんじょうむねちか)は、稲荷明神が手伝って鍛えたという「小狐丸(こぎつねまる)」の伝説で有名。また「三日月宗近(みかづきむねちか)」は天下五剣の中で最も美しいと評される国宝である。
●青江恒次(あおえつねつぐ)は平安期の刀匠であり、日蓮宗の開祖である日蓮上人の愛刀「数珠丸(じゅずまる)」を鍛えたとされる。数珠丸は備前恒次という別人が造ったという説もあるが、数珠丸も天下五剣の1つだ。
●波平行安(なみのひらゆきやす)は、鹿児島で活躍した刀匠である。彼が鍛えた名刀「笹貫(ささぬき)」は、切っ先を上にして竹やぶへ投げ捨てておいたところ、風で舞い散った笹の葉を無数に貫いていたという伝説がある。
●粟田口吉光(あわたぐちよしみつ)は鎌倉時代の刀匠で、「三作」といわれる名刀工の1人。短刀づくりの名手で太刀は1振しか残さなかったため、唯一残っている太刀は「一期一振(いちごひとふり)」と号する。
●五郎入道正宗(ごろうにゅうどうまさむね)は、相州伝を確立した鎌倉時代の刀匠だ。「正宗を持たぬのは恥」とされるほどの人気で、大名らがこぞって求めた。斬り込みキズが残る「石田正宗」は石田三成が所持したことで知られる。
●郷義弘(ごうのよしひろ)は、銘のある刀が皆無でありながら、虎徹をはじめとする後世の名刀工を夢中にさせた三作の1人だ。
正宗の高弟を指す「正宗十哲」の1人とされる鎌倉時代の刀匠である。
●長船光忠(おさふねみつただ)は、最大流派となった長船派の始祖である。伊達政宗が家臣を斬った際、そばにあった燭台まで両断したという「燭台切光忠(しょくだいきりみつただ)」が有名。
●千子村正(せんじむらまさ)は、室町時代の刀匠。徳川家が妖刀として嫌ったことで知られている。そのため、幕府転覆を図った由井正雪や、西郷隆盛をはじめとする倒幕派の志士が好んで求めたという。
●孫六兼元(まごろくかねもと)は、斬れ味の冴えと「関の孫六三本杉」という刃文で知られる刀匠だ。朝倉氏の豪傑・真柄直隆(まがら なおたか)を討ち取ったと伝えられる「真柄斬」が有名である。
●胴田貫正国(どうだぬきまさくに)は、質実剛健な刀を鍛えた熊本の刀匠だ。明治の天覧試合で、榊原鍵吉の兜割りを成功させた刀も胴田貫だった。時代劇「子連れ狼」の影響もあって一世を風靡した。
●長曾禰虎徹(ながそねこてつ)は、甲冑師から刀匠に転身した江戸時代の刀匠だ。斬れ味に定評があり、刃こぼれなく石灯篭を斬ったとの伝説もある。新選組の近藤勇が愛用したという逸話でも知られる。
●野田繁慶(のだはんけい)は、鉄砲鍛冶から転じた刀匠であり、彼の刀は鍛えキズによる豪放な肌が特徴だ。自分の作を名刀工・正宗の作と間違えられた際は「正宗ごときと誤られるのは残念」といい放ったという豪胆な人物。
●井上真改(いのうえしんかい)は、「大阪正宗」と絶賛された江戸時代の刀匠。中江藤樹らに陽明学を学び、作刀の芸術性を深めたという。時代小説「鬼平犯科帳」では長谷川平蔵(へいぞう)の愛刀として登場する。
●水心子正秀(すいしんしまさひで)は、華美に流れた日本刀を、実用本位の古刀に戻そうと研究を重ねた刀匠だ。正宗の子孫に弟子入りするなどさまざまな経験を積み、工夫をこらして多くの研究書を残した。
●大月源(おおつきげん)は、女人禁制の鍛冶場に入った唯一の女性刀匠である。優れた短刀を残した。もともと刀工の娘だったが、家業を継ぐ者が絶えたために女刀工となる決意をしたと伝えられる。
●源清麿(みなもときよまろ)は、兄の山浦真雄(やまうらまさお)とともに「江戸三作」の1人に数えられる。腕利きの剣術家でもあったが、四谷正宗と呼ばれる大人気刀匠となった。大酒で健康を損ね、自宅の便所で自害したという。
ちなみに、刀匠を主人公とした時代小説『いっしん虎徹』(山本兼一著 文藝春秋)は、古刀の製法がテーマであり、刀鍛冶の世界を楽しく勉強するには打って付けの快著である。文庫版も出ているので求めやすいだろう。
▼美しすぎる日本刀
日本刀の理想は「折れず、曲がらず、よく斬れる」という言葉で表現されるが、それ以上に尊重されてきたのが「至美である」という要素だ。武人が愛でたのは、研ぎ澄まされた実用性に潜む犯し難い気品だったのである。
古来より刀は熟練の製造技術を要し、また鋼という希少な材料をふんだんに使う高級品だったが、その割りには戦場における重要度の低い武器であった。『合戦手負注文(かっせんておいちゅうもん)』という古戦記録の研究によると、死傷者のほとんどが弓矢や鉄砲といった飛び道具で被害を受けている。刀の役割りといえば、倒れた武将の首を刈るくらいだったという説もあるのだ。
とはいえ、刀の神秘的な美しさは格別であり、わが国の「三種の神器」に数えられるだけのステータスは古今揺るがず、武人の装備における画竜点睛として尊ばれ続けている。
ただし、日本刀の美を支えているのは鍛冶屋の技量のみではない。研ぎ師のテクニックもたいへん重要であり、「研磨技術こそが和刀の精髄だ」と断言する人もいる。
江戸時代初期にマルチアーティストとして活躍した本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)の出自である本阿彌家は、刀の研磨と鑑定で南北朝時代から名を馳せたオーソリティーである。「日本刀の歴史は本阿彌家が作った」とも評されるほどで、刀が廃れ出した明治以降にも新しい研磨法を開発して日本刀鑑賞の枠を広げ続けた芸術家集団だ。刀匠ほどには注目されないが、研ぎ師も大事なキーパーソンであることは知っておくべきだろう。ちなみに、国産…
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